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闇の果て、無期の別れ第2話

この話は約1795字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

雪乃は知っていた。怜司が最近、あの秘書の女にうつつを抜かしていることを。

その女は大学を卒業したばかりだったが、怜司が競合他社から引き抜き、特別採用で入社させたのだ。

彼女は若く、活発で、怜司に尽きることのない新鮮さをもたらしていた。

その不穏な兆候に気づいた時、雪乃は必死にあらゆる手を尽くした。優しく諭し、脅し、金で誘い、果ては拉致を企ててまで、その女を強引に追い出そうとした。

しかし、返ってきたのは怜司の報復だった。

最も酷かった時は、怜司が包丁を雪乃の首筋に突きつけ、秘書の居場所を問い詰めた。

鋭い刃先が雪乃の白く細い首筋を走り、そこには生々しい傷跡が刻まれた。

その瞬間、雪乃の脳裏にかつて怜司が誓った言葉が蘇った。

彼は言った。「自分が死んでも、雪乃の指一本傷つけない」と。

その夜、雪乃は泣きながら怜司に問い詰めた。「あなたは、私を絶対に傷つけないと約束したじゃない」

怜司は冷酷に笑った。「嘘をつくな。俺が死んでもお前にそんな言葉を言うはずがない。

必死で俺に嫁いだのは、うちの金が目当てだろう?金ならくれてやる。だが、若葉が無事であるよう祈るんだな」

首筋の傷がかさぶたになるまで、怜司からの謝罪の言葉は一言もなかった。

階下の桜庭若葉(さくらば わかば)は周りを見渡した後、少し恥ずかしそうに怜司の胸に寄り添った。「雪乃、お留守?」

怜司はちらりと視線を送り、玄関にあるハイヒールに目が留まると、そばに立つ使用人に尋ねた。「彼女は何階にいる?」

使用人たちは顔を見合わせ、頷いて答えた。「雪乃様はお部屋に……」

若葉はそれを聞くと、すぐに立ち上がって階段へ向かった。「バーベキューをたくさん買ってきたの。雪乃を呼びに行ってくるね」

ドアを叩く音が響いた時、雪乃は海外行きの航空券を見ていた。

二百億円を手に、どこへ移住するか、まだ決めかねていた。

ノックの音を聞いても無視しようと思ったが、ドアの外の人間はなんと鍵を取り出し、内側からかけたはずのドアを開けた。

暗かった部屋の照明がつけられ、眩しい光に雪乃は思わず手で顔を覆った。

目の前の女は遠慮もなくベッドに腰掛けた。「雪乃、怜司とバーベキューを買ってきたの。一緒に食べない?」

ふわりとミントの香りが漂い、雪乃は思わず鼻を押さえて後ずさった。「いいわ、お腹空いてないから……」

言い終わるか終わらないかのうちに、若葉が甲高い悲鳴を上げ、ベッドサイドテーブルの水差しをなぎ倒し、そのまま床に倒れ込んだ。

割れたガラスが若葉の掌に突き刺さり、瞬く間に、掌から鮮血が滲み出した。

雪乃が何が起こったか理解する前に、階下から慌ただしい足音が聞こえ、次の瞬間、ある人影が飛び込んできて床に倒れた若葉を抱きしめた。

若葉はか弱く怜司に寄りかかり、涙を浮かべた。「雪乃、せっかくバーベキューに誘いに来たのに、どうして私を押すの?手が…」

どれほど愚かで鈍感な雪乃でも、今の状況を理解した。

雪乃は首を振って説明した。「彼女が自分で転んだの……」

だが次の瞬間、乾いた音と共に、怜司の容赦ない平手打ちが雪乃の頬を襲った。

瞬く間に、雪乃の美しい顔に、くっきりと紅い手の跡が浮かび上がった。

怜司は自分の手を見下ろし、一瞬、呆然とした。なぜか胸がざわついた。

若葉のか細い泣き声が耳に入り、怜司は我に返ると、若葉を抱きかかえて立ち上がった。「言ったはずだ。もし彼女をこれ以上傷つけるなら、容赦しないと」

そう言い残し、怜司は若葉を横抱きにして階下へ向かった。

去り際、若葉は雪乃に向かって挑発的に眉を上げてみせた。

使用人がこっそりと雪乃のために氷を持ってきた。雪乃は化粧台の前に座り、赤く腫れた自分の頬を見て、乾いた笑みを浮かべた。

使用人は憤慨していた。「雪乃様、先ほど怜司様が若葉様を連れて雪乃様のクローゼットに入り、雪乃様の一番お気に入りのブルーダイヤのネックレスを……」

あのブルーダイヤのネックレスは怜司が雪乃を口説いていた時、オークションで六十億円を投じて競り落としたものだった。

落札品が手に入った瞬間、怜司は愛情に満ちた目で自ら雪乃の首につけてくれた。「雪乃はこの世界で一番きれいな女性だ。

このネックレスは君だけのものだ。俺の愛も君だけのものだ」

だが今、怜司はその愛を他の女に捧げた。

雪乃は首を振った。「あげなさい。全部あげてしまいなさい」

ネックレスはいらない。怜司の愛ももういらない。

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