遠く届かない待ち合わせ第2話
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彼は私をじっと二度見し、それ以上何も言わなかった。
退勤が近づく頃、冬真からメッセージが届いた。ある高級レストランの予約通知だ。
それが、彼なりの埋め合わせだということは、一目でわかった。
私はプリンターから吐き出された離婚協議書を整え、バッグに入れ、約束の場所へ向かおうとした。
会社を出たところで、正面から雪緒と鉢合わせた。
冬真の愛人だけあり、この人は確かに綺麗だ。
彼女は私の目の前で、当然のように冬真の車に乗り込んだ。
冬真はそのまま車を走らせ、少ししてから私にメッセージを送ってきた。
法律事務所で待っていろ、というだけの内容だ。
私は待たず、自分でレストランへ向かった。
レストランでは、酒も料理もたくさん注文した。
ここのローストピジョンは私の大好物だ。私は二人前、全部食べた。
以前は彼が来るまで、いつも手をつけずに待っていた。
そのうちに、腹を空かせながら待つことも、当たり前になっていった。
結局、冬真は最後まで来なかった。
私は怒らなかった。
五年待っても、彼の心に私はいない。
離婚協議書にサインさえしてもらえれば、もう一晩待つくらい、どうってことない。
彼は知らない。
彼が見たあの離婚協議書は、私と彼のために書いたものなのだ。
……
食事のあと、私はしばらく露店街をぶらついた。
家に戻った頃には、もうかなり遅い時間だ。
リビングの灯りがついている。冬真がなんと、私が家に帰るのを待っている。
結婚して五年、深夜に帰ってくる人は常に彼だったからだ。
そして私は、どんな予定も断って家で彼を待っていた。
酔って帰ってきた彼の世話をするために。
仕事で遅くなった彼に、温かい料理を食べてもらえるために。
したがって、酔い覚ましの薬も、温かいおかずも、いつも準備していた。
冬真はそんな私を鬱陶しがっていた。
「君、ババアか」と言ったこともあった。
私は首を振り、思い出から意識を戻した。
冬真の目は冷たく、声も少しも温かくない。
「また徹夜で帰ってこないところだったな」
私は適当に「うん」と答えた。この家で徹夜で帰らない権利は、ずっと彼だけのものだったからだ。
これからは別れるのだから、それでいい。
冬真は目を細め、私の様子に驚いたようだ。
「今日が何の日か、わかってるか?」
私は一瞬固まり、無意識にバッグの中を探った。
そこには、以前、冬真に渡そうとして準備したプレゼントが入っている。
今日は結婚五周年の記念日だ。
毎年、私はその日のために、何日も前からあれこれ考えていた。
でも今はもう渡すつもりはない。もうすぐ離婚するのだから。
形だけの儀式なんて、必要ない。
冬真は少し不機嫌そうに、私に小さなギフトボックスを差し出した。
「前に準備しておいた。自分で開けてみろ」
私は驚かなかった。ここ数回のドタキャンを思えば、何かしら埋め合わせはあるだろうと思っていた。
これが冬真だ。彼はいつも、間違いをしてから、少しだけ私に優しくしてくれる。
そして私はそれを期待し、少しでも長く一緒にいられると願っていた。
私はそれを受け取り、そのままソファにぽんと置いた。
「どうも」
礼儀正しく言った。
冬真は一瞬目を鋭くし、私の礼儀正しさを理解できていないようだ。
「今夜行けなかったのは、雪緒が急ぎの用事で……」
私はそれを遮った。
「いいよ、説明しなくて。全部わかってるから」
それは本心だったのに、冬真はむしろ苛立ったようだ。
「君、いつも妬いてばっかりじゃない。雪緒の家の訴訟は俺が担当してるんだ。最後まで責任を持つのは当然だろ」
私は離婚協議書を取り出すために、バッグの中を探りながら答えた。
「訴訟のためにコンサートにも行くの?調査にしては随分と熱心ね」
冬真の眉がぴくりと動き、表情が暗く沈んだ。
それは彼には説明できないことだ。したがって、彼はただ不機嫌な顔で私を睨むしかない。
もし以前の私なら、この表情を見ただけで不安になり、泣きながら謝っていたのだろう。
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