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遠く届かない待ち合わせ第3話

この話は約1460字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。

そう、彼がこういう表情を浮かべれば、悪いのはいつだって私になる。

しかし今の私は、ただ俯いて離婚協議書を探している。

結局見つからず、多分レストランに落としてきたのだろう。

「また何を探しているんだ?」

冬真は身をずらし、私に寄ってこようとした。

私は軽く返事をしただけで、それ以上説明しなかった。

彼に近寄られるのが、好きではない。

私はその後、主寝室には行かず、そのまま客用の寝室で眠った。

ぐっすりと眠れた。

……

ここ数日、冬真と顔を合わせる回数が多い気がし、私は離婚協議書を少し手直ししようと思っている。

席に座って考えていたところ、冬真から電話が入り、数枚の資料を彼のオフィスに持ってくるよう言われた。

私は少し考え、離婚の話をするつもりを消した。

何より、冬真は自分のオフィスで私事を話されるのを極端に嫌うのだから。

特に私に関する私事に対しては。

まさか、彼のオフィスで雪緒に会うとは思わなかった。

彼女はある依頼人の娘で、ちょっとした人気配信者でもある。

今は冬真の椅子に座り、鏡に向かって化粧をしている。

「林さん、来たんだね」

雪緒の目には、なんとなく挑発が感じられる。

私は穏やかに微笑み返した。

あばずれ女とくず男の相性は抜群だ。彼女と冬真は確かに似合う。

私は資料を置いて帰ろうとしたとき、冬真に呼び止められた。

「瑠璃。俺の薬、取ってくれ」

私はちらりと雪緒を見て、すぐに理解した。

冬真は名家育ちで身体が弱く、いろいろなものにアレルギーがある。

化粧品もそのアレルゲンの一つだ。

そのせいで、私は結婚後ほとんど薄化粧しかしなかった。たまに新しい化粧品を買ったら、彼は容赦なく叱りつけた。

「俺という夫がいるのを忘れたのか」

そのうち、化粧品を持ち歩かず、代わりに彼のアレルギー薬を常にバッグに入れるのが当たり前になってきた。

顔立ち自体は悪くないし、化粧もしなくなった。

「持ってないけど」

そう言いながら、私は雪緒の化粧品をじっと見ている。

真似するわけではない。

ただ、あれらは冬真にアレルギーを起こす。

離婚したら、私は好きなだけ使える。

冬真の目に焦りが滲んでいる。信じられない、という顔だ。

「どうして持ってないんだ?俺の体のこと、分かってるだろ……」

雪緒も甘えた声で追い打ちをかけた。

「林さん、それはダメじゃない?冬真の体調を気遣わなきゃ」

冬真は黙り込んだ。私を責めきれないと思ったのだろう。

結局、アレルギーを起こすのは私ではないし、私はただ薬を持っていないだけだ。

「じゃあ薬を取りに送っていく」

そう言った後、彼自身も少し気まずそうだ。

薬が必要なのは彼だけなのに、私を送る意味はない。

「じゃあ自分で帰って。私、昼に人と会う約束があるの」

約束は確かだ。

隣の席の律は、会社で冬真の次に離婚案件が得意な弁護士だ。

離婚協議書を直すなら、話を聞くのが一番だ。

何しろ、離婚協議書を……

冬真に添削してもらうわけにもいかないし。

……

律とは会社の隣のレストランで待ち合わせた。

私は食事をしながら、協議書の細かい部分について尋ねた。

「本当に離婚する気?」

律は少し同情するように私を見ている。

彼女は私と冬真の関係を知らない。

というより、この法律事務所の誰も知らない。

何せ冬真が、職場に私事を持ち込むのを心底嫌うからだ。

「うん、夫が浮気したの。でもいいの、私ももう離れたいし」

そう言っていたとき、冬真と雪緒が手をつないで入ってきた。

冬真は私を見るなり、反射的にその手を離した。

私は礼儀正しくあの二人に笑いかけた。

そして店員を呼び、私たちの席を外のサンルームへ移してもらった。

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