
過去を越えて――南城の記憶
| 言語 | 日本語 |
|---|---|
| 試し読み | 第1〜3話(当サイト) |
| 掲載日 | |
| 読み方 | 横書き・縦書きを切り替え可 |
『過去を越えて――南城の記憶』は日本語の小説です。当サイトで第1〜3話を試し読みできます。
冒頭試し読み第1話より・約552字
御影誠一郎(みかげ せいいちろう)の「思い人」が帰ってきたと知った時、そしてその彼女と誠一郎がオフィスで親しげにしているところを見た瞬間、私は離婚を決意した。
代わりに過ぎない存在なら、本物が戻ってきた時点で身を引くべきだ。
その日、真白(ましろ)を幼稚園に迎えに行き、そのまま誠一郎の会社を訪れた。
オフィスの中に入る前に、既に妙な音が聞こえてきた。
扉越しに響く甘く誘惑するような声が囁く。
「誠一郎、帰ってきたわ……」
それが月島麗華(つきしま れいか)の声だとすぐに分かった。
そう、彼にとって永遠の「思い人」。
数日前、友人から彼女がイギリスから戻ったことを知らされたばかりだった。
扉越しに想像してしまう。二人が寄り添い、交わる視線や呼吸。
なのに私はその場で立ち尽くしていた。
つい最近、彼は私を家に連れて帰り、「盛大な結婚式を改めてしよう」と約束してくれたばかりだった。彼は「これからは君を大事にする」と言ってくれたのに。
月島麗華(つきしま れいか)が去ったこの6年間、私は彼と彼の娘を支え、影のように寄り添ってきた。
6年かけて、やっと私に約束をくれたのだ。
でも――今、その6年間はただの冗談に思える。
私は結局、代わりでしかなかったのだ。
代わりに過ぎない私。本物が帰ってきたなら、きっと身を引くべきなんだろう。
※作品紹介ではなく、第1話の書き出しをそのまま掲載しています。第1話の続きを読む
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