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遅咲きの夢と、捨てた約束第3話

この話は約1935字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。

ちょうど身を翻して立ち去ろうとした時、さくらはゴミ出しに来た使用人に呼び止められた。

「奥様、ブレスレットを取りに戻られたんですか?玄関の棚の上にありますよ」

その一声でダイニングにいた三人が揃って窓の外を振り返った。

「水瀬先生?いらしてたんですか?ちょうどよかった。先日は助けていただいてまだお礼も言っていませんでした」

あかりはすぐに立ち上がり、小走りで外に出てきて彼女の手を引いて中へ入れようとした。

さくらが声を出す前に、透也があかりを追って走り、カシミアのストールを被せるように彼女の体に巻きつけ、両手でしっかりと彼女の肩を抱き寄せた。「風邪をひくぞ」という優しい言葉は温かいのに、さくらの全身を氷のように冷たくした。

だが彼が顔を上げてさくらを見た時には、相変わらず冷たい表情だった。

「どうして戻ってきたんだ」

「あら?透也さん、そんなに怖い顔しちゃダメよ。水瀬先生は私の命の恩人なのよ。それに、こういう関係なんだから、いずれ顔を合わせなきゃいけないんだし。ちょうどいい機会だわ」

あかりは甘えるように軽く透也にぶつかり、さくらの腕を抱いて中に引き入れた。

「先に透也さんと付き合うのは先生だし、初対面の贈り物を用意してきたんです」

さくらは固まり、あかりの手から腕を強引に引き抜いた。

「いいわよ、それなら今日はあなたが私に跪いて挨拶しなさい。これから私が正妻で、あなたが妾の立場よ。全てのことは私に伺いを立てて、あなたが産む子供も私を母と認めるのよ」

屋内は一片の静寂に包まれ、あかりの笑顔は一瞬で凍りついた。

「いい加減にしろ!」

透也が一歩前に出て、あかりを自分の背後に庇い、冷たい視線がさくらの心を突き刺すようだった。

さくらは軽蔑の笑みを浮かべたが、一歩も引かなかった。

「どうしたの?彼女が自分で言ったじゃない……」

鋭い平手打ちの音が瞬時にさくらの右頬に響いた。その勢いで彼女は脇のガラステーブルに倒れ込み、ガシャンという音とともに、ガラステーブルが割れ、さくらはガラスの破片の上に倒れ込んだ。

さくらは自分を支えてよろめきながら立ち上がった。ガラスの破片が掌と腕に深く食い込み、既に血まみれだった。

「いい加減?」

彼女は振り返って、まるで驚いた小動物のように透也の腕に飛び込んだあかりを見た。透也は大きな手で既に彼女の目を覆って見せないようにし、丁寧に慰めている。

「あなたもいい加減だって分かってるのね。

あなた自身が言ったのよ、私と離婚しないって。私たちは法律上の夫婦でもある限り、桐谷あかりは、卑しい愛人よ!」

パシッ―!

またしても平手打ちが飛び、透也の目も真っ赤になり、力を込めすぎた右手がかすかに震えていた。

「水瀬さくら、お前は本当に狂ってる!」

次の瞬間。

「きゃあ―!血よ!」あかりは目の前で再びガラスの破片に倒れ込み、全身血まみれのさくらを見て、思わず恐怖の声を上げた。

赤い血で視界が滲む中、さくらは透也があかりを腕に抱き込み、焦って電話をかけている姿を見た。彼の顔には明らかな焦りと恐怖が浮かんでいる。

さくらは全身が痛かった。頬は既に高く腫れ上がっていたが、傷口より痛いのは、このガラスの破片が突き刺さったような心だ。

……

さくらは何度も昏睡と覚醒の間を彷徨った。

細かく密集した痛みが針で刺すように彼女の体を襲い、一度も止むことがなかった。病院の冷房が強く効いていて、彼女は震えが止まらず、少し動けば鋭い痛みを感じた。

彼女は無意識に手で額を触った。焼けるように熱い。

「水……麻酔……」

「水瀬先生、傷口が炎症を起こして今は四十度近い熱があります」

「セミブロック、ブルフェン、抗生物質を投与して」

さくらの喉はカラカラに乾いて、声が嗄れている。

「橘社長の……桐谷様が昏睡されて、今は全医師が会診中です。橘社長が直々に、病状が確定するまでは薬を一錠も使ってはならないと命令されました」

さくらの意識が朦朧としてきて、無意識に両手が簡易ベッドの両側に垂れ下がった。

「水瀬先生、傷口は今すぐ処置した方がいいんですが……

でも鎮痛剤も許可されてないんです……」

彼女は傍らのガーゼを指差し、看護師が渡すと震えながら歯の間に噛み込んだ。

「傷の処置をして」

看護師は深刻な表情で、ため息をついてから傍らのピンセットとメスを手に取った。

少しずつ皮膚を切開し、一粒一粒のガラスの破片をボロボロの血肉から摘み出し、カチンと音を立てて傍らの金属皿に放り込む。

さくらは必死に耐えていた。金属皿のガラスの破片がどんどん積み上がるのを見ている。

さくらは歯を食いしばり、一声の呻き声も喉から漏らさなかった。

彼女は今日受けた侮辱の一つ一つ、痛みの一つ一つをはっきりと覚えておきたい。

――憎い。たまらなく、憎いんだ。

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