遅咲きの向日葵第2話
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ちょうどその時、インターホンが鳴った。
宅配員が大きな荷物をいくつも運び込んでくる。全て優子のものだ。
優子は私を無視するようにして、次々と荷物を開けていった。
「これ全部、翔太が選んでくれたの。妊娠中に少しでも快適に過ごせるようにって、デパートごと買い占めたみたい。
あら、これはたぶんおまけ品ね。私の赤ちゃんには使えないから、佐藤さんにあげるわ」
翔太が渋い顔でたしなめると、優子は逆に彼の腕にしがみついて甘えた。
「翔太、妊婦の精神状態ってすごく大事なのよ。そんなに怒ったら、お腹の赤ちゃんが怖がっちゃうわ」
優子の大げさな芝居に、翔太は完全に乗せられていた。
彼はすぐに表情を和らげ、心配そうに優子のお腹に手を当てた。
まだ形になりたての胎児が、どれだけ「怖がる」というのだろう。
私は何も言わず、静かに部屋に引き返した。
この瞬間、待ち望んでいたはずの我が子の存在が、間違いだったような気がしてならなかった。
翔太がすぐ後を追ってきて、ドアを閉めた。
「美咲、優子の家の事情は知ってるだろ?俺が助けなければ、彼女は生きていけない。
お前は俺の妻だ。理解してくれ。
もし俺と優子に本当に何かあったら、お前と結婚することなんてなかったんだぞ」
あの日、妊娠が判明した優子は翔太のもとに駆けつけ、震えながら彼に抱きついたという。
翔太は心を痛め、すぐに優しく彼女をなだめた。
しかし次の瞬間、優子の両親が怒りに満ちた表情でドアを開け、「家名を汚す不届き者め」と罵倒したのだ。
優子は恐怖で震え上がり、翔太の胸に顔を埋めた。
桜井家は由緒正しい旧家で家訓が厳格だ。優子の妊娠など到底許されることではない。
恐怖のあまり、優子は子供の父親を翔太だと偽った。
そして翔太は彼女を守るため、その嘘を認めてしまったのだ。
「美咲、お前の腹の子が俺の子だとわかっていれば十分だ。他人が何を言おうと関係ない」
私の心は少しずつ死んでいった。それでも聞かずにはいられなかった。
「なぜ彼女は中絶しないの?」
「優子は産みたいと言っている」
「あなたにも子供がいるのに、彼女は自分の子が『私生児』と呼ばれるのが嫌だから……
つまり、彼女の子は正当で、私とあなたの子は『認知されない子』でいいってこと?」
もう涙は出なかった。ただ、冷ややかに眼前の男を見つめた。
翔太は唇を堅く結んだ。
「どんな噂が立とうと、この子は俺の子だ。お前は俺の妻だ。それは変わらない。優子は純粋で傷つきやすい子なんだ。こんな卑劣な中傷を受けるべきじゃない」
私は悟った――
彼女は守られるべき存在。私は犠牲になればいい。
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