遅咲きの向日葵第3話
この話は約1335字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。
その考えが再び頭をよぎった。私は涙で灼けるような目を瞬き、絶望的な表情を浮かべた。
「じゃあ、私のお腹の子供を堕ろさせて」
「ダメだ!」
彼は即座に拒否した。
「わがまま言うな。優子とその子は無実だ。なぜそんなに執拗にこだわる?」
「でも私とこの子だって無実よ!この子が生まれてからどんな目に遭うか、考えたことある?!」
「ちゃんと手配するって何度言えば……美咲、君にはがっかりだ」
彼は振り返り、ドアをバタンと閉めて部屋を出て行った。
翌日、私の周りには十数人の警備員がつき、携帯とパソコンも没収された。外出も外部との連絡も一切できない。
彼は私が中絶するのを恐れている。なのに、もう「公式な子供」がいるというのに。
私は家に閉じ込められ、お腹が膨らんで安定期の三ヶ月を過ぎた頃――
その日、階下で大きな物音がした。優子の家族が引越し業者を連れてやって来たのだ。
優子の母親は私を見るなり、嫌そうに白眼を向けた。
「父親が誰だかわからない子供を孕んで、よくもまあこんな所に居られるわね。厚かましいにも程がある。
うちの娘はお人好しだから、翔太さんのためにこんな我慢をしてる」
優子の父親は私を軽蔑するような目で一瞥しただけだった。
「そんな恥知らずの女と話して何になる。早く娘の荷物の整理を手伝え」
滑稽だった。
桜井家は厳格な家柄だと?それなのに娘が既婚者の子を孕んで、今更恥ずかしくないんだ?
引越し業者が大きな荷物を次々と運び込む中、優子が不気味に私のそばに立ち、嘲笑うような笑みを浮かべた。
「あなたが翔太の妻だとして?ただの肩書きよ。あなたも、そのお腹の子供も、私には及ばないわ、それにね、これからは私と私の子供が翔太の家族よ」
その言葉に私は激しく傷つき、手を振り上げて彼女の頬を強く叩いた。
まだ収まらぬ怒りに、私は彼女の髪をつかんで激しく揺さぶり、何度も何度も平手打ちを浴びせた。
優子が大声で悲鳴を上げた。、駆けつけた翔太に引き離されるまで。
殺してやりたいほどだった。
心が死んだ人間に、できないことなどない。
優子は泣きじゃくりながら両親を呼び寄せた。優子の母親はすぐさま私の頬を打った。
翔太は止めようとした手を中途で止め、代わりに泣く優子を抱きしめた。
「翔太!この女は度が過ぎる!不倫の子供を孕んでいるのにまだ離婚もさせず、今度は優子を殴るなんて!
今すぐこの女を追い出さないなら、優子を連れて帰るわよ!藤原家の長男は諦めなさい!」
優子は涙顔のまま、私へ「やったわ」という笑みを見せた。
しかし翔太は提案を却下した。
代わりに優子から離れ、私の傍に立った。
「美咲は俺の妻だ。追い出したりしない。優子もここに住んでいい。だが二度とそんなことは言うな。
二人の子供はどちらも俺の子だ。同じように大切にする」
彼は私を見捨てなかったが、真実を明かすつもりもない。ただ私が辱めを受けるのを放置したのだ。
翔太は優子が安心して出産できるよう、私に妥協を強いた。
こうして、かつて陽光が降り注いだ寝室は、別邸の地下倉庫に変わった。
「寝る場所が変わるだけだ。食事は今まで通り届けられる」
だが、もうどうでもよかった。
私も、この子も、翔太にとっては重要じゃない。ならこの子もいらない。
こんな苦しい世界に生まれてくるべきじゃない。
縦書き表示中:本文は右から左へスクロールします(← → キーでも移動できます)
第4話は公式アプリで
当サイトでの試し読みはここまでです。アプリをインストールし、下のアプリ用コードを入力すると、この作品の第4話からそのまま読み進められます。
R87840- 下のボタンから公式アプリをインストールします(無料)。
- アプリを開き、「コードを入力」にこのコードを入れると、この作品が本棚に入ります。
作品ページへ戻る 当サイトに掲載しているのは試し読みの章だけです。