遅咲きの向日葵第1話
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藤原翔太(ふじわらしょうた)には、幼なじみの桜井優子(さくらいゆうこ)がいた。
ある日、優子が妊娠した――父親は誰なのか、誰も知らなかった。
優子の評判を守るため、翔太は「この子の父親は自分だ」と名乗り出ることにした。
その結果、私のお腹の子供は「父親不明の子」という汚名を着せられることになった。
「優子は真面目で純粋な子なんだ。未婚の母なんて彼女には耐えられない。世間の目が辛すぎるだろう」
翔太の何気ない一言で、5年間続いた私たちの愛は、まるでバカみたいなものに思えた。
その後、家族は総出で私を病院に連れていき、中絶手術を受けさせた。
その間、翔太は優子のそばに寄り添い、彼女を至れり尽くせりで世話していた。
翔太が家に戻ってきた時、私はすでに子供を堕ろし、彼の元を去っていた。
* * *
私が妊娠を確認して間もない頃、桜井優子(さくらいゆうこ)も妊娠が発覚した。
一人で産婦人科検診を受けて帰宅し、ドアを開けると、優子が藤原翔太(ふじわらしょうた)の膝の上で甘えている姿が目に入った。
「翔太、私たちの赤ちゃんの名前、どうしよう?産ってすごく痛いんでしょ?怖いなあ……」
翔太は優子の肩を優しく抱き、目尻を緩ませながら優しく微笑んだ。その眼差しは、まるで恋人を見つめるように柔らかく、温かかった。
二人が睦まじく話しているところへ、翔太がふと入り口に気づき、私を見た。
私はゆっくりと彼に近づいた。
「翔太、今の『私たちの赤ちゃん』って、どういう意味?」
彼は優子から手を離そうとしない。
「一旦部屋に入ってくれないか?後でちゃんと説明するから」
「今すぐに言ってよ!」
翔太は煩わしそうに眉をひそめた。
「美咲、そんなに興奮しなくてもいいだろう?」
目の前が真っ白になった。手が勝手に動き、翔太の頬を強く打った。
「何するの!?」
優子が慌てて立ち上がり、私を押しのけると、翔太の前に立ちはだかった。そしてお腹を前に突き出して言った。
「私が翔太の子どもを妊娠してるの!何で彼を殴ったの?」
胸の奥で何かが砕ける音がした。頬を伝う涙が止まらない。
翔太は私の涙を見て、ようやく口を開いた。
「美咲、本当は優子の子は俺のじゃない。ただ……」
すると優子が突然「わあっ」と泣き出した。真っ赤になった目で翔太を見上げる。
「うう……翔太、約束したじゃない!誰にも言わないって約束したのに!どうして佐藤さんに話すの?」
「美咲は俺の妻だ。隠すことじゃない」
翔太の言葉を聞いて、優子は泣き止んだ。そして嘲るような笑みを浮かべた。
「それなら、彼女にも全部話しておけば?『私の子を守るために、彼女の子どもは認知しない』って決めたって」
次の瞬間、胸が氷で埋め尽くされるような感覚に襲われた。私は震えながら翔太を見つめた。
彼の沈黙が全てを物語っていた。
優子は勝ち誇ったようにお腹をさすりながら続けた。
「翔太は私のためなら、自分の実の子さえ犠牲にできるんだから。本当に……感動しちゃう。
これからは私の子が『藤原家の長男』よ。佐藤さんの子は……まあ、養子でも考えてあげるわ」
翔太は最後まで何も言わなかった。
私は拳を固く握りしめ、彼の胸を何度も殴りつけた。
最初は耐えていた翔太だったが、やがて私の手首を掴み、寝室へ引きずり込んだ。
「離してよ!!ちゃんと説明してよ!」
理解できなかった。優子はそんなに大事なのか?
大事すぎて、私たちの実の子にさえ父親がいられないほどに?
翔太の目には怒気が浮かんでいた。
「優子は小さい頃からおとなしい子だった。未婚での出産なんて彼女には耐えられない」
「つまり私が身に覚えのない汚名を被れと?」
「違う!」
彼は首を振った。
「一時的なんだ。優子が無事に出産したら、真実を話す」
目の前の男は、もう私が愛した翔太ではなかった。
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