記憶を失くしたプリンチペッサと、返された指輪第3話
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それなのに今、彼はそのお守りを別の女に渡せと、何でもないことのように言っている。
爪が手のひらの肉に食い込み、血が滲みそうになった。
ルカの冷たく傲慢な顔を正面から見据え、私はゆっくりと、静かに頷いた。
「分かった。朝に届けさせる」
ルカの目がかすかに揺れた。もう一度だけ意味ありげに私を見つめてから、扉を押し開けて出ていく。
低く甘やかな宥め声がすぐに廊下に流れ、続いて隣の寝室の鍵が閉まる音がした。
私は呆然とその場に立ち尽くしてから、くるみ材の引き出しを開けて、古いカレンダーを取り出した。
赤いペンを手に取り、今日の日付に、力を込めて大きくバツをつける。
兄が迎えに来るまで、あと二日。
それから蝋で汚れたドレスを脱いで、バスルームに入った。
シャワーヘッドから降り注ぐ熱いシャワーが、疲れ果てた体を洗い流していく。立ち込める湯気の向こう、鏡に映る自分の顔は、ひどく青白かった。
ルカ、あなたは七年前、スラム街の銃撃戦の中から私を拾ってくれた。その命の借りは、返すべきものだった。
この七年で、私はあなたのために銃弾を受け、裏切り者を始末し、ベリーニ家を鉄壁のごとく守り抜いてきた。
今日で、その命の恩はきれいに返し終えた。
翌朝。ルカの命じた通り、私は専属のメイドにあのメダルをミアの部屋へと届けさせた。
ミアは傲慢にも、使用人に扉を開け放っておかせていた。
長い廊下を歩いていると、彼女が化粧台の前に座ってメダルをいじっているのが目に入った。金属製の小さなやすりで、メダルの表面に施された釉薬を削り落としている。
「こんな古くさいもの、とっくに時代遅れじゃない。溶かしてダイヤのネックレスにでも作り替えてもらおうかしら。そっちの方が私には似合うわ」
ミアは傍らの使用人にそう言い放った。使用人は戸口に立つ私に気づき、息を呑んで固まった。
私は歩調を乱すことなく、無表情のままキッチンへと向かった。
雨の日になると、ルカの胸の古い銃傷は酷く疼く。この七年、その痛みをやわらげる特製の煎じ薬を作ってきたのは、いつも私だった。
静かに沸き立つ手鍋の前に立ち、黒褐色の煎じ液が泡立つのを、ただ見つめる。
これが最後だ。
濃い薬湯を陶器のカップに注ぎ、トレーに載せてルカの書斎へと向かった。
重い両開き扉が少し開いていて、中でルカがファミリーのコンシリエーレであるマルコと話しているのが聞こえてきた。
ノックしようと手を上げた瞬間、マルコの声がはっきりと届いた。
「ドン、今回はやりすぎです。ドンナはあなたのために銃弾を受けた女ですよ。心が完全に壊れてしまうとは思わないのですか?あれほどあなたを頼りにしているというのに」
手が、空中で止まった。ルカの声は、氷のように冷たかった。
「他にどこへ行くというんだ。あの女にはこの屋敷しかない。なにしろ七年間、彼女は俺に依存しすぎた。俺がいなければ生きていけないとでも思い込んでいる。しかし今はミアに守りが必要だ。エラーラも、そろそろ大人になるべき時だ。
あの依存心を強制的に断ち切る。誰がここの真の支配者かを分かってもらう。それさえ受け入れれば、ベリーニの家に居場所はある。路頭に迷わせる気はない」
マルコが深く溜め息をついた。
「そんなやり方をして、本当に愛想を尽かされても構わないと?二度とあなたを振り向かなくなりますよ?」
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