記憶を失くしたプリンチペッサと、返された指輪第2話
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ルカの大きな体が、ぴたりと固まった。
彫りの深い目元に一瞬の驚きが走り、眉間の皺がさらに深くなる。
ミアは完全に呆気に取られ、涙を絞り出すことすら忘れていた。
私はシルクのハンカチを取り出し、指先についた蝋を静かに拭うと、その場に膝をついた。
こぼれそうになる涙をまばたきでこらえながら、静かに頭を下げる。
素手のまま、まだ熱い蝋のかけらと鋭利なガラスの破片を拾い上げ、そばにあった真鍮のくずかごへと放り込んでいく。
ガラスの破片が手のひらに刺さっても、私は眉一つ動かさなかった。
全て片付け終えると、立ち上がってルカを一瞥した。
「ドレスが汚れてしまったわ。部屋に戻って着替えてくる」
踵を返し、背筋をまっすぐに伸ばしたまま、階段へと向かって歩き出す。
ルカの視線が、その背中をずっと追っているのを感じた。
寝室のドアを押し開け、鍵をかける。
重い木の扉に背をもたせかけ、暗闇の中へずるずると崩れ落ちた。声を殺して、涙の流れるままに任せた。
七年間の愛と献身が、こんなにもあっけなく終わるなんて、思いもしなかった。
そのとき、ベッドサイドの暗号通信用の端末が光った。長兄であるロレンツォからのメッセージだった。
【ベリーニがお前に負った借りは、利子をつけて返させる】
その言葉を見つめているうちに、じわりと目頭が熱くなる。
不意に、ドアが激しく蹴り開けられた。
ルカが凍てつくような気配をまとって踏み込んでくる。鋭い眼差しが、私の手の中にある端末へと一直線に向けられた。
彼は大股で歩み寄り、端末をひったくった。
幸い、彼が手を伸ばした瞬間、画面は暗転していた。
パスワードを試すことすらせず、ルカは端末を分厚いカーペットの上へと放り投げた。
そして私の顎を掴み、強引に上向かせた。
「さっきのは何のつもりだ?」低く、値踏みするような声だった。「気を引くための新たな駆け引きか?」
私は真っ直ぐ彼の目を見返し、平坦な声で答えた。「いつも言っていたでしょう。依存しすぎだ、もっと自立しろって。だから指輪もブレスレットも渡した。あなたの望み通りにしたわ。これで満足?」
複雑な感情が、ルカの瞳をよぎる。
顎を掴む力がふと緩んだかと思うと、今度は大きな手が私の腰の後ろに回り、壁へと押しやった。
彼のシャツからラム酒の強い香りが漂ってくる。それにミアのローズ香水の甘ったるさが混じって息が詰まりそうで、一刻も早くここから逃げ出したかった。
ルカが顔を下ろし、温かく薄い唇が耳たぶをかすめた。低く、掠れた声で囁いた。
「エラーラ、今夜辛い思いをさせたのは分かっている。だがミアの兄は、俺に情報を横流しして命を落とした。俺は彼女に借りがある。守ってやらなければならない。
お前が大人しくしていれば、依存するのをやめれば、ドンナの座はお前のものだ。お前はこの俺のそばに一番長くいた女だ。誰より特別なんだぞ」
見下すような、恩着せがましい口調だった。
こんなわずかな情けをくれてやれば、私がまたすがりついてくると信じて疑わないのだ。
そのとき、扉の外から切羽詰まったようなノックの音が響いた。
ミアの弱々しい声が、扉の向こうから流れてくる。
「ルカ、また胸が痛いの。来てもらえる?」
腰に回っていた手が、瞬時に離れた。
一瞬の躊躇もなく、彼は背を向ける。
ドアノブを掴んだところで、足を止めて振り返った。
「明日の夜、ハイレートの闇カジノがある。ミアを連れて行って、場慣れさせる。そのサン・クリストファーのメダルを外して、彼女に譲ってやれ。お守りになるだろう」
聞き違えたのかと思った。
サン・クリストファーのメダル。
三年前、ルカをかばって銃弾を受け、手術を乗り越えたあの日、先代のドンナである彼の母が、自ら私の首にかけてくれたものだ。
「エラーラ、今日からあなたはベリーニ家の一員よ」
涙をこらえながら、そう言ってくれた。
このメダルには私の血と、ルカへの忠義が染み込んでいる。命よりも大切なものとして、シャワーのときでさえ外したことがなかった。
一度、新入りの使用人がどこかへしまい込んでしまったとき、なくなったと思って泣き崩れたことがある。
あのとき、ルカは私を膝に引き上げてキスをして、笑いながら言ったのだ。臆病な仔猫め、と。
「お前の持ち物に手を触れることは誰にも許さない」と。
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