親友を慰めた私を、親友と恋人が同時に裏切った第2話
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そう言い捨てると、私は2人に背を向け、そのまま家を飛び出した。
涙で前もろくに見えないのに、過去のことだけは嫌になるほど鮮明に脳裏に浮かんだ。
3か月前まで、京也は夕愛のことを露骨に嫌がっていて、よく私に愚痴をこぼしていた。
「夕愛って、ほんと食べて寝てばっかりだよな。料理ひとつまともにできないし。
ああいう女と結婚したら、すぐ嫌になって離婚するだろ」
そんなふうに言っていたから、私は2人のことを一度も疑わなかった。
出張で家を空ける時も、何の疑いもなく夕愛を泊め、留守の間は京也のことまで任せていた。
今思えば、私が何も疑わなかったことが、かえって2人には都合がよかったのだろう。
私が家を空ける夜ごとに、親友と恋人は私のベッドで何度も体を重ねていた。
けれど、まったく気づいていなかったわけでもない。
前に一度、何気なく枕の下へ手を伸ばした時、見覚えのあるショーツが出てきたことがあった。
夕愛がよく穿いていた、キャラクター柄のものだった。
さすがにおかしいと思って問いただすと、京也は面倒くさそうに答えた。
「洗濯物片づける時に、お前が間違えて混ぜたんだろ。そんなことでいちいち疑うなよ。
あんな働きもしないで人に甘えてばっかの女、俺が相手にするわけないだろ。そもそも女として見てないし」
そのとき、聞き慣れた京也の声がした。
次の瞬間、手首を強く引かれ、そのまま京也の胸元へ引き寄せられた。
はっと顔を上げると、すぐそばをトラックが勢いよく走り抜けていった。
そこでようやく、周りも見ずに走り、そのまま交差点へ飛び出していたことに気づいた。
「危ないだろ。ちゃんと前見ろよ。
轢かれでもしたらどうするんだよ。心配させんな」
そう言って私を見つめる京也の目は、いつもと変わらず優しかった。
ついさっき夕愛とのことを知ったばかりなのに、まるで何もなかったみたいだった。
告白された時も、京也はこんなふうにまっすぐ私を見ていた。
付き合ってからも毎晩欠かさず連絡をくれ、帰りが遅くなる時はきちんと知らせてくれた。朝まで帰ってこなかったことも一度もなかった。
スマホの暗証番号も、メッセージのやり取りも、私に隠そうとしたことはなかった。
周りの友人からも、京也みたいな彼氏がいて羨ましいと何度も言われた。
私もずっと、京也に限って浮気なんてするはずがないと信じていた。
それなのに、その信頼はついさっき、目の前であっけなく崩れ去った。
私は京也を力いっぱい突き放し、震える声で言った。
「ここまでしておいて、まだ私を大事にしてるつもり?
夕愛のところに戻れば?ベッドで好きなだけ慰めてあげればいいじゃない」
京也は露骨に顔をしかめた。
「俺は別れるなんて一言も言ってないだろ。なんでそこまで大げさにするんだよ。
そもそも、夕愛のことを俺に任せたのはお前だろ。あの時、お前が俺に夕愛のことを頼んでこなきゃ、こんなことにはなってない。
それに、夕愛だってお前のこと気にしてる。帰ってきてほしいって言ってたぞ」
あまりにも勝手な言い分に、思わず笑いがこぼれた。
「だからって、浮気していいことにはならないでしょ?
私のこと、何だと思ってるの?どうしてそこまで平気で傷つけられるの!」
私は京也の手を振りほどき、そのまま背を向けた。
ところが、歩き出してすぐ、下腹部に鋭い痛みが走った。
そのまま視界が暗くなり、私は膝から崩れ落ちた。
目を覚ますと、最初に目に入ったのは病室の白い天井だった。
ベッドのそばには夕愛がいて、甲斐甲斐しく世話を焼きながら、持ってきたお粥を器によそっていた。
「清花、やっと目が覚めたんだね。
京也もひどいよね。清花が体弱いって分かってるのに、あんな言い方するなんて」
私を気遣っているような口ぶりなのに、京也の名前を呼ぶ声だけは妙に親しげで、それが胸に引っかかった。
夕愛は何事もなかったような無邪気な顔で、スプーンですくったお粥を私の口元へ差し出した。
「ほら、少しでも食べて。何も食べないと体がもたないよ」
私は顔をそむけ、差し出されたスプーンには口をつけなかった。
ただ、目の前にいる夕愛をじっと見つめた。
心から大切にしてきた親友が、私に隠れて3週間も京也と寝ていた。
それなのに私の前では、何食わぬ顔をしていつも通りに振る舞っていたのだ。
私の冷たい視線に気づいたのか、夕愛はゆっくりと茶碗を置いた。
「清花、ごめん。私が悪いって分かってる。まだ怒ってるよね。
でも、私、本当に京也が好きなの。京也も、もう清花には気持ちがないって言ってた。
今まで清花にしてもらった分は、これからちゃんと返していくから」
弱々しそうな表情とは裏腹に、その目には少しも迷いがなかった。
京也を手放す気など、最初からないのだろう。
私は思わず言葉を失った。
思えば、子どもの頃から、夕愛が相手だといつも私のほうが折れてきた。
わがままを言われても聞き入れ、何かあれば自分のほうが引いた。
幼い頃、溺れた私を助けてくれたあと、夕愛は体が冷えやすくなり、たびたび体調を崩すようになった。
そのことがずっと心に引っかかっていた私は、夕愛に約束したのだ。
私にあるものなら、欲しいものは何でもあげる、と。
ろくでもない男に19回も振られ、夕愛が飛び降りようとした時も、私は必死で引き止め、立ち直れるまでそばで支えた。
彼女を傷つけた男たちのことで何度も動き回り、夕愛が働かなくても何不自由なく暮らせるよう、私は必死に働いてきた。
それなのに、私が仕事の付き合いで酒を飲み、休む間もなく働き回っていた間、夕愛は私の家で京也と何度も寝ていた。
挙げ句の果てには、京也も、私が大切にしてきたものも、欲しいと言えば譲ってもらえるとでも思っているようだった。
そこまで考えた瞬間、ずっと押し込めていた怒りが一気に込み上げた。
私は勢いよく手を伸ばし、枕元のテーブルに置かれていたお粥の入った茶碗を払い落とした。
「いつまでいい子ぶってるの?もう出てって!」
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