親友を慰めた私を、親友と恋人が同時に裏切った第3話
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次の瞬間、頬に鋭い痛みが走った。
耳の奥でキーンと音が鳴り、口の端には血の味が広がった。
そこでようやく、京也に頬を打たれたのだと分かった。
私は呆然と京也を見つめた。
京也は、こぼれたお粥で赤くなった夕愛の手をそっと取り、火傷の具合を確かめていた。
けれど、私を見た途端、その目からさっきまでの優しさが消えた。
「清花、お前、夕愛がこれ作るのにどれだけ頑張ったか分かってるのか?
普段料理なんてしないのに、お前のために指まで切ったんだぞ。
お前、いつからそんな嫌な女になったんだよ」
涙が次々とこぼれた。それなのに、なぜか笑いまで漏れた。
どれだけ大変かは、嫌というほど知っていた。
毎日の3食も家事も、ずっと私がやってきたからだ。
それでも京也は、そんな私を気遣ったことなんて一度もなかった。
それなのに、夕愛がたった一度お粥を作っただけで、京也は私に手を上げた。
私は震える指を2人に突きつけた。
「そりゃ大変だったでしょうね。人の彼氏と寝ておいて、よく私の前でそんな顔していられるよね!」
京也が何か言い返そうと口を開いたが、夕愛がそれを遮るように怒鳴った。
さっきまでの弱々しい様子は、もうどこにもなかった。
「あの時あんたを助けてから、ずっと体調を崩しやすくなって、子どもまで産めなくなったの!
そのせいで、今まで何度男に捨てられたと思ってるの!
全部あんたのせいなんだから、これくらい認めてくれたっていいでしょ!どれだけ恨まれたって、私は京也と別れないから!」
夕愛が泣き崩れると、京也は痛ましそうに抱き寄せ、そのままかばうように肩を抱いて病室を出ていこうとした。
ドアを開ける前に、京也は私に向かって吐き捨てた。
「親友をここまで追い詰めるなんて……清花、お前、ほんと変わったよ。
こんなことになるくらいなら、最初からお前と出会わなきゃよかった」
2人が病室を出ていくと、私はベッドに崩れ落ち、そのまま布団を頭までかぶって、声を押し殺して泣いた。
左手の薬指には、京也にもらった指輪がまだはまっていた。
会社がようやく軌道に乗り始めた頃、京也が何年も貯めたお金で買ってくれた指輪だった。
あの頃は、小さな会社を大きくしようと、2人でがむしゃらに働いていた。
苦しいことばかりだったけれど、それでも2人で何とか乗り越えてきた。
あの頃の京也は、無理ばかりする私をいつも心配して、何かと気遣ってくれていた。
生理が来る時期も、私より京也のほうがよく覚えていた。
生理痛がひどい日は、どんなに大事な会議があっても予定を空け、そばにいてくれた。
夜通し、冷めるたびにタオルを温め直して、お腹に当ててくれたこともあった。
指輪の内側には、今も2人のイニシャルが刻まれていた。
ずっと一緒にいるという、2人の誓いの証だった。
それが今では、ひどく皮肉に思えた。
翌日、まだ体はつらかったが、私は無理をして退院の手続きを済ませた。
ロビーまで来たところで、夕愛と鉢合わせた。
私に気づいた夕愛は、そのままこちらへ歩いてきた。
「清花、昨日は言いすぎた。ごめんね。
でも、京也はもう清花のこと好きじゃないの。だから……もう京也のことは諦めてくれない?
別れてくれるなら、その代わり、欲しいものは何でもあげるから」
私は奥歯を噛みしめたまま、乾いた笑いを漏らした。
「何でもくれるって?人に養ってもらってるだけのあなたに、何ができるっていうの?」
すると夕愛は何も言わず、何枚かの書類を取り出して私に突きつけた。
「会社の株、清花が持ってた分は全部、京也が私の名義に変えてくれたの。
清花名義だった不動産も、今は全部私のもの。
清花、もう何も残ってないよ」
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