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裏切りの果て第2話

この話は約1612字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

酒席に向かう車内。

私は助手席に座り、鳴海と美咲は後部座席にいた。

美咲は道中ずっと甘えた声を出し続けていて、その声は耳にまとわりつくほど、くどく甘かった。

「社長、私お酒飲みたくない……高橋社長って、女性に手を出すって聞いたの」

鳴海は彼女の鼻先を愛おしそうにくすぐった。

「何を恐れてる?知玖がいるじゃないか。

彼女は酒に強いし、ベテランだから、こんな場面も平気さ。

君はただ、美しくして契約にサインするだけでいい」

私は窓の外を流れる街並みを見つめ、胃の中がむかついた。

かつて、私も彼に守られていた女の子だった。

創業初期の五年前、うっかり顧客にきつい酒を一杯飲まされてしまった私を見て、鳴海はテーブルをひっくり返さんばかりに怒り、私を背負って、病院まで三キロも歩いた。

「もう二度と、君に少しの苦労もさせない」

そう言った彼だったのに――今、私を自分の手で地獄に突き落としたのだ、新しい女の笑顔を引き出すためだけに。

車がカーブを曲がるとき、私のバッグが後部座席のフロアマットに落ちた。

振り返って拾おうとした――

動作が止まった。

後部座席の隅に、開封されたコンドームのパッケージが静かに置かれている。

そして、破れた肌色のストッキングが一足。

それは、私の予備のストッキングで、ずっと車の収納に入れてあったものだった。

鳴海は私の視線を追い、顔には少しも慌てた様子がない。

むしろ挑発的な笑みを浮かべた。

「ああ、昨日ちょっと急いで、借りただけだ。

普段、君はこんなセクシーなものは履かないし、美咲に有効活用してもらえばいいじゃん」

美咲は口を押さえて笑い、目は自慢げに輝いている。

「あら、知玖さん、ごめんね、次は新しいの買ってね」

私は怒らずに笑った。

破れたストッキングを拾い、窓を開けて外に投げ捨てる。

「いらない。

汚れたものは、私は絶対に残さない」

鳴海の顔色が変わった。私の言葉に含みがあると気づき、怒りそうになったその瞬間、車はすでにホテルの前に到着していた。

酒席で、高橋はやはり老練な色魔だった。

油ぎった手が私の体の上を這い回る。

「知玖さんは業界の看板ですよ、この肌、三十歳とは思えませんね」

鳴海は上座に座り、全く気にかけない様子。

彼は美咲のために一生懸命料理を取り分けている。

高橋が私のスカートの中に手を伸ばそうとした瞬間でも、彼は笑いながらグラスを掲げた。

「高橋社長、知玖は誠意をもって参りました。

この酒、彼女が一気飲んで、高橋社長に敬意を表します」

満杯の度数の高い酒が私の前に置かれる。

私は鳴海を見つめる。

彼は笑っているが、瞳には冷たさと警告が宿っている。

まるで――「飲め、そうすれば君の母さんの命金が守られる」と言うように。

私はグラスを取り、一気に飲み干した。

辛い液体が喉を焼き通る――まるでナイフを呑み込んだような痛み。

高橋は大声で歓声を上げ、その隙に私の腰に手を回す。

鳴海は満足げに頷き、美咲に向かって言った。

「よく見て、これがプロの素養だ」

私は胃の激痛をこらえ、高橋の手を押しのける。

「ちょっとお手洗いに行ってきます」

鉄人でも、さすがにもう限界だった。

だが、私は吐きに行くわけではない。

トイレの個室に入り、急いでスマホを取り出し、ヘッドハンターにメッセージを送る。

【入社を承諾します。今夜契約書にサインします】

そして、さっき録音した全ての音声を保存した。

鳴海が社員に無理やり接待を強いている証拠だ。

それを終え、冷たい水で顔を洗い、鏡に映る蒼白な自分を見る。

秋山知玖(あきやま ともく)――

こんな日々は、もう終わりだ。

だが、個室に戻った時、私は想像もしなかった光景を目にした。

私のバッグは床に投げ捨てられ、スマホは震えている。

画面には「東川病院救命救急センター」と表示されていた。

美咲は私のスマホを手に取り、指を赤い通話終了ボタンの上にかざしている。

私に気づくと、口元に毒々しい笑みを浮かべた。

そして――私の目の前で、思いっきり、押した。

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