裏切りの婚約者が絶望するまで第1話
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出所してから3年が経った頃、俺、北原永真(きたはら とうま)は地下闘技場で桐生雪菜(きりゅう ゆきな)に力任せに引きずり出された。
彼女は血走った目で俺を睨みつけ、顔面に思い切り拳を叩き込んできた。
「永真、家に帰らないばかりか、自分をこんなボロボロにして……一体何のつもりなの!?」
俺は口元の血を拭い、あっけらかんと笑ってみせた。
「桐生社長、一発200万円だ。まだ気が済まないなら続けてもいい。ちょうど今年の家賃分になるからな」
彼女の拳は怒りで小刻みに震えていたが、その声は少し柔らかくなった。
「一緒に家に帰って……佑樹に謝って。彼は優しいから、あなたが彼を中傷したことなんて、もうとっくに気にしていないわ」
俺の体中に刻まれた無数の傷跡を見つめる雪菜の瞳に、複雑な色がよぎる。
「今の血まみれな姿を見てよ。野良犬と何が違うの?」
俺はビクッと体を震わせ、そのまま背を向けて立ち去ろうとした。
雪菜は知らないのだ。この血に塗れた姿こそが、俺が刑務所で唯一身につけた生きる術だということを。
「忘れないで、私はまだあなたの婚約者なのよ!」
俺の足がピタリと止まった。
忘れられるわけがない。
3年前の婚約の夜、俺は北原佑樹(きたはら ゆうき)に薬を盛られて闇市のオークションに出品され、値札をつけられたのだ。
あの夜、俺は帝都中の人間に指を指される笑い者に成り下がった。
そして、俺を売り飛ばす書類にサインしたのは、他でもない婚約者の雪菜だった。
* * *
出所してから3年が経った頃、俺、北原永真(きたはら とうま)は地下闘技場で桐生雪菜(きりゅう ゆきな)に力任せに引きずり出された。
彼女は血走った目で俺を睨みつけ、顔面に思い切り拳を叩き込んできた。
「永真、家に帰らないばかりか、自分をこんなボロボロにして……一体何のつもりなの!?」
俺は口元の血を拭い、あっけらかんと笑ってみせた。
「桐生社長、一発200万円だ。まだ気が済まないなら続けてもいい。ちょうど今年の家賃分になるからな」
彼女の拳は怒りで小刻みに震えていたが、その声は少し柔らかくなった。
「一緒に家に帰って……佑樹に謝って。彼は優しいから、あなたが彼を中傷したことなんて、もうとっくに気にしていないわ」
俺の体中に刻まれた無数の傷跡を見つめる雪菜の瞳に、複雑な色がよぎる。
「今の血まみれな姿を見てよ。野良犬と何が違うの?」
俺は体が大きく震え、そのまま背を向けて立ち去ろうとした。
雪菜は知らないのだ。この血に塗れた姿こそが、俺が刑務所で唯一身につけた生きる術だということを。
「忘れないで、私はまだあなたの婚約者なのよ!」
俺の足がピタリと止まった。
忘れられるわけがない。
3年前の婚約の夜、俺は北原佑樹(きたはら ゆうき)に薬を盛られて闇市のオークションに出品され、値札をつけられたのだ。
あの夜、俺は帝都中の人間に指を指される笑い者に成り下がった。
そして、俺を売り飛ばす書類にサインしたのは、他でもない婚約者の雪菜だった。
背後から耳障りな嘲笑が聞こえてきた。
雪菜は焦りと怒りを露わにし、俺が彼女の顔に泥を塗ったと嫌悪しているようだった。
彼女は帝都一の富豪でありながら、その婚約者は200万円の賞金のために、闘技場で血みどろの死闘を繰り広げているのだから。
俺は雪菜を無視し、控え室へと戻った。
再びオクタゴンに上がると、会場中の照明が向かいの鉄檻を照らし出した。あろうことか、そこから野獣の咆哮が響き渡ってきた。
「今夜、67番ファイターの前に立ちはだかるのは、なんと異国の猛虎でございます!さあさあ、お賭けください!」
覆いの布が勢いよく引き剥がされ、猛虎が目の前に迫る。
俺は息を呑んだ。
「兄さん」
佑樹だ。
見上げると、全身を最高級のブランド品で身を包んだ彼が手すりに寄りかかり、得意げな笑みを浮かべていた。
「お金に困ってるって聞いたから、もっと稼げるように特大のプレゼントを用意したんだ」
無邪気でありながら残酷な口調だった。
「兄さんが勝つ方に2000万円賭けたよ。がっかりさせないでね」
2000万円。
俺は拳を強く握りしめ、買い叩かれて人手に渡った古い実家の屋敷を思い出し、ためらうことなく一歩前に踏み出した。
その時、雪菜がドアを開けて入ってくると、佑樹は自然な動作で彼女の腰を抱き寄せた。
「雪菜、兄さんは負けず嫌いだから、この2000万円は自分で勝ち取ってもらいましょうよ。
兄さんは何連勝もしてるらしいから、ここの莉子(りこ)さんって人にも随分と可愛がられてるみたいだし……」
雪菜の目に嫌悪の色が浮かんだ。
「今すぐ皆の前で土下座して佑樹に謝るなら、この2000万円はそのままあなたに渡してあげるわ。嫌なら、あの虎を倒して、自力でその金を掴み取ることね」
観客たちの視線が一斉に俺へと注がれる。誰もが俺が屈服すると確信していた。
だが、俺は迷わずグローブをはめた。
雪菜は一瞬で顔を曇らせ、その目は怒りに満ちていた。
虎が前に飛びかかってきた。俺は前転して攻撃をかわし、その喉元に強烈な蹴りを入れた。
しかし、力の差はあまりにも絶望的だった。
その大口が何度も俺の頭を噛み砕こうと迫る。
雪菜の顔色はますます険しくなっていった。
それでも俺は決して降参しようとはせず、数ラウンドの死闘の末、俺の腕は爪でズタズタに引き裂かれ、血みどろに染まっていく。
バンッ!
麻酔銃の銃声が響き、猛虎が倒れ込んだ。
雪菜は銃を放り捨て、激怒しながら俺の腕を強く掴んで怒鳴りつけた。
「死にたいの!?」
オクタゴンに血が滴り落ち、額に細かな汗が滲んでいたが、俺は依然として歯を食いしばっていた。
「俺の勝ちだ。必ず金を振り込めよ」
彼女は冷酷な目で俺を睨みつけた。
「あなたは本当に救いようがないわ。そんなにお金が欲しいなら、あの時のオークションで、もっと高い値段で売ってあげるべきだったわね!」
俺の体がビクッと震え、視界がぐらりと反転し、意識を手放した。
意識を失う直前、かつて盗み聞きした秘密が耳元に蘇った。
「社長、今夜で彼の名声は完全に地に落ちました。これでようやく佑樹様の鬱憤も晴れたことでしょう」
「自業自得よ。これが佑樹を陥れた代償だわ」
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