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裏切りの十年第2話

この話は約1407字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

黒崎悠人の車はどんどん高級になっていったが、彼はもう私に何も買ってきてくれなくなった。忘れているのか、それとも気にしていないのか。

彼の会社から私の会社までは、車でたった10数分しかかからない。

それなのに、私は冷たい風の中、2時間も待ち続けた。

彼が到着した時、入口で待っている私を見て、不機嫌そうに眉をひそめた。

「こんな寒いのに、中で待っていればいいだろう。何で出てきてるんだ」

彼は私のことを心配しているのだろうか?

それとも、迎えを頼んで彼の気分を害したことを責めているのだろうか?

彼の気持ちが分からなかった。

私は冷静に「すぐに来ると思ったから」と答えた。

彼は一瞬固まり、何かを思い出したように視線を逸らし、申し訳なさそうに言った。

「ごめん、道が混んでて遅くなった。今後はこんなことはない」

彼は手を伸ばし、コートを広げて私を抱き寄せようとした。

私は彼の動きを手で制した。彼が来た瞬間から、見慣れないボディソープと甘ったるい香水の混じった匂いがした。

私は静かに口を開いた。

「早く車に乗りましょう。寒いから」

彼の動きが止まったのも気にせず、私は車に乗り込んだ。

黒崎悠人が車に乗り込むと、私に箱を差し出した。先月、彼がオークションで指輪と一緒に落札したルビーのネックレスだった。

「もういいだろ。プレゼントはとっくに用意してあったんだ。最近忙しくて忘れてただけだ」

彼は気のない様子で、まるでプレゼントをねだる子供をあやすように言った。

「悠人、今年の記念日は外食にしましょう」

毎年の記念日には、彼は事前に食材を用意して、テーブルいっぱいの料理を作ってくれた。一番貧しかった頃は、品数は少なかったかもしれないが、それでも必ず準備を大切にしていた。

彼は前を見ながらエンジンをかけ、いい加減に「ああ、どこで食べたいんだ?」と答えた。

二つ返事だった。そうすれば、彼女をあやす時間が増えるからだろう。

「鍋屋の高橋屋はどう?」

車が少しスリップした。私は彼が思わず指を握りしめたのを見て見ぬふりをして、静かに言った。

「雪が降ってるから、路面が滑りやすいわ。ゆっくり運転して」

「ああ」

彼はいつも通りの表情で、少しも動揺している様子は見せず、何気なく尋ねた。

「どうしてそこで食べたいんだ?」

「会社の新しい秘書に勧められたの。美味しい鍋屋さんだって。何か問題でも?」

私は知らないふりをした。

黒崎悠人はそれとなく息を吐いた。

「別に」

車内は佐野黙に包まれた。

彼が何を緊張しているのか、私には分かっていた。若い女の子は鍋やミルクティーのようなものが好きで、その店は彼女がよく行く店なのだ。

彼女のインスタで、その店のチェックインを何度も見たことがある。

写真の中に写る窓ガラスに、いつもぼんやりとした人影が映っていた。あれは私と共に青春時代を過ごし、大人へと成長してきた、よく知っている人だった。

店に着くと、店内は大変賑わっていた。それでも、店主は黒崎悠人に熱心に挨拶をしていた。そして私の顔を見た瞬間、笑顔が一瞬固まった後、さらに愛想のいい笑顔に変わった。

「よく来るの?」私は黒崎悠人に尋ねた。

彼は「取引先の中には、こういう雰囲気で商談するのが好きな人もいるんだ」と説明した。

ビジネスの世界の浮き佐野みは、彼をますます成熟させて、感情を表に出さない人間にしたのだと思った。私が彼をよく知っていなければ、平静な表情の裏に隠された動揺に気付かなかっただろう。

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