裁かれた罪と、真実の愛の夜明け第3話
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だが凛音ははっきりと見ていた。柊夜の瞳の奥に、僅かな動揺と迷いが過ぎるのを。
凛音はこみ上げる涙を堪え、拳をきつく握り締めた。
「あくまでも瑠奈を庇い立てする気なら、法廷で決着をつけましょう!」
凛音は帝都の弁護士界隈をくまなく探し回った。
だが、純子の案件を引き受けようとする者は一人たりともいなかった。
稀にその場で引き受けてくれる弁護士がいても、彼らは一本の電話を受けた直後、決まって丁重に辞退してきた。
すべては柊夜が裏で手を回しているのだと、凛音には痛いほど分かっていた。
帝都最大の法律事務所の創設者である柊夜を、この業界で敵に回せる者などいるはずがなかった。
だが、公判まで残された時間は、わずか三日しかなかった。
凛音に告訴を取り下げさせるべく、柊夜は瑠奈を彼女の面前に引きずり出してきた。
「凛音、お前の腹の虫が治まらないのは分かっている。詫びを入れさせるために、この子を連れてきた」
柊夜の背後に立つ瑠奈はあからさまに不満げで、驕慢でありながらも、どこか不貞腐れたような被害者ぶった顔をしていた。
「あなたの腹いせのために、柊夜にここまで連れ戻されてお仕置きを受けるんだわ。これで満足かしら?」
柊夜は部下に鞭を持ってこさせると、瑠奈の体に向かって力任せに打ち据えた。
瑠奈は痛みに涙をボロボロとこぼしながらも、歯を食いしばり、顔を上げて強がってみせた。
「柊夜、やれるもんなら私を打ち殺してみなさいよ!」
「いい加減にしろ!自分がまだお嬢様だとでも思っているのか!」
柊夜はありありと嫌悪の表情を浮かべていたが、凛音へと振り返った瞬間、その眼差しは嘘のように柔らかく甘いものへと変わった。
「凛音、これで気が済んだか?まだ足りないと言うなら続けるぞ。
この二日間、お前に口も利いてもらえなくて、俺は狂いそうだったんだ」
凛音は柊夜の瞳を真っ直ぐに覗き込んだ。
彼の目尻は赤く血走り、そこに偽物とは思えないほどの焦燥と愛情が浮かんでいた。
だが、背後に隠された柊夜の指先は小刻みに震えていた。
口では疎んじながら、その心は痛切に瑠奈を案じているのだ。
人の心というものは、二つに割ることなどできるのだろうか。
一人を愛していると言いながら、どうして同時に、別の一人をこれほどまでに想い続けられるのか。
凛音の眼差しは一切の揺らぎを見せなかった。
「柊夜、たとえあなたが私の目の前で瑠奈を打ち殺そうと、私は絶対に告訴を取り下げない!」
その後、柊夜は瑠奈を物置部屋に放り込み、彼女の生死など歯牙にも掛けないかのように振る舞った。
そしてその夜のベッドで、彼は凛音を悦ばせようと甲斐甲斐しく尽くし、機嫌を取ることに終始した。
凛音には痛いほど分かっていた。すべては瑠奈のためなのだと。
自分に告訴を取り下げさせる、ただそれだけのために。
柊夜は表面上瑠奈を嫌悪して疎んじ、自分の目の前で鞭打ってさえみせた。
だが彼の心の底には、彼自身すら自覚していない優しさと執着が深く根を下ろしている。
そう思うと、凛音の心はさらに切り裂かれるように痛んだ。
果たして夜更け、隣にいたはずの柊夜の姿が消えた。
凛音は息を殺し、足音を忍ばせて物置部屋の入り口へと向かった。
少し隙間の開いたドア越しに、柊夜が軟膏を投げ出し、瑠奈に向かって冷ややかに言い放つのが見えた。
「凛音に告訴を取り下げさせ、帝都の法曹界全体に圧力をかけたのは、あくまで両家の親族の縁を重んじてのことだ。もしこれ以上凛音に危害を加えようものなら、ただじゃおかないからな!」
瑠奈はツンと顎を上げ、柊夜の前で強気な態度を崩さなかった。
「あのババアが当たり屋みたいな真似をしたって言ってるじゃない!凛音が狂ったように私に食い下がってくるから、仕方なく蒼真に濡れ衣を着せたのよ!そんなに凛音を庇い立てするなら、いっそ私を打ち殺せばいいじゃない!」
言い捨てるなり、瑠奈はたちまち目元を赤く染めた。
柊夜の瞳の奥に複雑な感情が渦巻き、やがて彼はわざとらしく凄んでみせた。
「今回の件は俺がもみ消してやる。だが、次は絶対にないと思え!」
だがその声には、彼自身すら気づいていない甘やかな溺愛が滲んでいた。
そう言い終えるなり、彼は片膝をついて屈み込み、軟膏を手に取ると、瑠奈の腕を掴んで優しく薬を塗り始めた。
瑠奈はあくまで高慢に顔を上げつつも、泣きじゃくるような甘えた声を出した。
「誰がいい人ぶってって頼んだわよ!あなたはいつも私には無愛想なポーカーフェイスで、凛音のためにばっかり私をいじめて……」
ドアの外でそれを聞いていた凛音の心臓は、見えざる手にギリギリと締め上げられたかのように、息もできないほど痛んだ。
翌朝、凛音はめげることなく、再び弁護士を求めて家を出た。
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