花に抱かれる彼、記憶に沈む私第2話
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打ち上げパーティーで、日和はグラスを片手に、ごく自然に勳の隣に立った。二人は業界の動向とか、資金調達のこととかを話してたけど、私にはちっともわからない言葉ばかりだった。
彼女は話しながら、さりげなく勳の腕に指でそっと触れていた。
一度、二度。
三度目に、勳は少し身を引いて、その手を避けた。
その時、日和はふと顔を上げて、勳の肩越しに、隅にいた私を見た。
そして、ほんのわずかに、微笑んだ。
ライトの光を浴びて、彼女の指にあるダイヤの指輪が、きらりと強く輝いた。
その光が、私の目に突き刺さるようだった。
あんなにきれいなダイヤモンドは持ったことがない。でも、少しもうらやましくなかった。だって、私の隣にいる恋人は、ダイヤモンドよりもっと輝いていたから。
あの頃の私は、未来を手にしたんだって信じてた。
でもあとから気づいたんだ。私が握りしめていたのは、破滅へと向かう片道切符だったってことに。
日和が副社長として突然やってきた日、総務の人が私のオフィスにきた。
「副社長は、社長の近くのオフィスが良いそうでして、すみません、このお部屋……空けていただけませんか」
その人は付け加えた。「社長のご指示です」
私が段ボール箱を抱えて廊下に立っていると、ちょうど会議室から出てくる勳と日和にばったり会った。
二人ともきっちりしたスーツを着ていて、とても楽しそうに話していた。
午後の会議で、私はいつものように勳の右隣の席へ向かった。
でも、その席にはもう日和が座っていた。
会議の議題は、私が運営しているSNSアカウントのことだった。
会社を立ち上げたばかりの頃に宣伝のため私が始めたアカウントで、今ではそれなりにうまくいっている。
日和が言った。「前田さんはきちんとした経験もなさそうだし、彼女のアカウントはもっと専門知識のある人に任せるべきだわ」
その場にいた全員が、勳に視線を向けた。
彼は少し黙ったあと、「奈津美、アカウントは運営部に引き継いでくれ」と言った。
私は思わず立ち上がった。「あのアカウントは、私が寝る間も惜しんで必死に育ててきたんだ!私のものだよ!」
日和は笑った。「その理屈は通らないよ。会社がお金を出して宣伝までしてきたんだから」
誰かが小声で相づちを打った。「会社のバックアップがなければ、個人でできることなんて限られていますね」
勳は眉間をもみながら言った。「奈津美、わがままを言うな。お前は、これからは家庭に専念したいんだろう?」
私は、言葉を失った。
そんなこと、一度も言った覚えはないのに。
でも、周りの私を見る目が変わった。「なんだ、玉の輿を狙ってたのか」
「やっぱり社長には高木さんみたいな本物のお嬢様のほうが似合ってるよな」って、みんなの視線がそう語っていた。
いろんな視線にさらされながら、私は爪が食い込むほど、ぎゅっと手を握りしめた。
「このアカウントは渡しない。以前にうまくやれたんだから、今でも必ずやり遂げられる」私は勳をまっすぐ見て言った。
「奈津美!」勳は机を強く叩き、冷たく笑った。「お前に何ができるって言うんだ?俺がいなかったら、今頃まだ路上でみすぼらしい店をやってるだけだろうが!」
その言葉は、鋭い棘のように、私のプライドを傷つけた。
会議室は一瞬で静まりかえり、空気が凍りついた。すると日和が、すっと書類を差し出した。「勳さん、彼女は裏で買い手と接触していたみたい。提示額は1000万円だって」
彼女は私を見て言った。「前田さん、会社を利用してアカウントを高く売りつけようとしたんでしょ?」
その瞬間、会議室はざわめきに包まれた。
勳は書類をひったくって机に叩きつけた。「これがアカウントを渡したくない本当の理由か?奈津美、お前はそんなに金が欲しいのか!
私が説明しようとした瞬間、日和が割って入った。「落ち着いて。たかが1000万円じゃないの。前田さんも目先のお金に目がくらんで、つい魔が差しただけかもしれないわ」
彼女は私の方を向き、やさしい声で言った。「どのみち会社の名義なんだから、誰が管理したって同じでしょ?
前田さん、お金が好きなのはわかるけど、勳さんの立場も考えてあげないと。会社はまだ始まったばかりで、彼もすごく大変なんだから」
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