色褪せた愛よ、さようなら第2話
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園子のもとから戻った後、名月はすぐに地方の病院へ行き、中絶手術の予約を取った。
笹原家の人間は誰もが手段を選ばない大物ばかりで、この市内で手術しようものなら、手術に入る前に嘉行へ情報が漏れてしまうだろう。
手術室に入る直前、青からまた動画が送られてきた。
全編2時間半。画面の中では、青がセクシーなランジェリー姿で、嘉行はピシッとしたスーツ姿。
テーブルにはいくつもの大人のおもちゃが並べられ、キッチン、書斎、玄関……部屋のあらゆる場所でふたりは愛を交わしていた。
動画の中の嘉行は、名月がこれまで一度も見たことのないほど狂ったような姿だった。
そのすべての場面が彼女の心を引き裂くほどに痛めつけたが、それでも彼女は自分を責めるように最後まで見届けた。
「千早さん、もうすぐ手術の時間ですが……今の状態で大丈夫ですか?」
医師が不安げに声をかけてきた。
名月はようやく、自分がすでに涙を流し、全身震えていることに気づいた。
ただ悲しみのせいではなく、彼女は気づいてしまったのだ――嘉行が浮気したと分かっていても、自分の心はまだ彼を愛しているのだと。
人は服のように簡単に捨てられるものではない。
嘉行を人生から切り離すことは、彼女にとって胸を裂き、自らの心臓を血まみれのまま引きずり出して粉々にするに等しかった。
涙をぬぐい、名月は最後にもう一度、嘉行にチャンスを与えようと決めた。
彼に電話をかけた。「今どこ?会いたくなった……戻ってきてくれる?」
嘉行の声はどこか押し殺されたような緊張を帯びていた。
「名月か?今、会社でどうしても外せない用事があって……うっ……!」
彼は低く唸り、急に早口になった。
「今日は帰れそうにない!」
そのまま電話を切られた。
名月は呆然と立ち尽くし、止まらない涙が溢れてきた。
彼が自分から電話を切ったのは、これが初めてだった。
数分後、彼女は目を閉じ、深呼吸した。
「大丈夫です。お願いします、手術を」
……
深夜、疲れ切った体で家に戻ると、園子からメッセージが届いていた。
【名月ちゃん、準備はすべて整った。あと二日で実行するわよ】
名月はベッドに倒れ込み、一晩中、眠っては泣いて目を覚まし、後半の夜は膝を抱えて闇の中に座り込み、夜明けを迎えた。
翌朝、嘉行が帰ってきた。
彼はコートを脱ぎ、体が温まるのを待ってから、名月のそばに来てそっと抱きしめた。
そしてタブレットを取り出し、ある島の画像を指さした。
「名月、見て。さっきこの島を買ったんだ。俺らの子どもに贈るよ。
それに全国の都市で遊園地の建設を始めた。
将来は全部、子どもの名前をつけるつもりだ。
生まれたら、百日祝いには盛大な宴を開いて、みんなに祝ってもらおう!」
彼は目を輝かせながら夢中で語っていたが、名月が何も言葉を発していないことに気づいたのは、ずっと後のことだった。
そのとき彼は、彼女のすすり泣く声を聞いた。
回り込んで顔を見ようとすると、名月の頬には涙がつたっていた。
「どうしたんだ……!」
嘉行は名月がここまで泣き崩れるのを見たことがなく、動揺で声も震えていた。
名月のわずかな不安は、嘉行にとって計り知れない痛みだった。
彼女の心の揺れは、彼自身の中で何倍にも膨れ上がるのだ。
「なんでもないわ。妊婦って、時々突然泣きたくなるものよ」
「本当に?」
ようやく安心した彼は、優しく言った。
「じゃあ、今日は一日中そばにいるよ。何か食べたいものがあったら、俺が作る」
「いいわ。お昼は同窓会があるし、夜は先生に挨拶に行く予定があるの。あなたは仕事をしてて」
名月は立ち上がった。
彼女は、今回国外に出たら、もう二度と戻ってこないつもりだった。
だから、去る前に彼らに会っておきたかった。別れの挨拶として。
嘉行は彼女を一人で出かけさせるのが不安で、結局付き添ってきた。
ふたりが同窓会の個室に入ると、すぐに笑い声が上がった。
「だから言ったじゃない? 名月が来るなら、嘉行も絶対ついてくるって。あの人、名月を手放すのが怖いんだもん」
嘉行は穏やかに微笑みながらからかいを受け入れ、用意していたプレゼントを一人一人に手渡していった。
「うそ、これシャンリ・シュエナの最新ジュエリーセットじゃない?結構高い値段だよ?
毎回こんな高価な物くれるなんて、ほんと名月のおかげだね!」
名月は大学時代、人望が厚く、今ここにいるのも全員彼女の親しい友人だった。
嘉行も彼女たちを喜ばせることに努力を惜しまなかった。
彼女たちが嬉しければ、名月もきっと嬉しいはずだから。
誰もが内心、愛の力のすごさを感じていた。
あの「高嶺の花」だった嘉行が、今や誰にでも微笑む「ひまわり」になっているのだから。
「名月、羨ましいよ。本当に愛されてるね!」
そんな声に、名月はいつものように幸せそうに笑うことなく、ただ礼儀正しく微笑んだだけだった。
賑やかな空気の中、突然、個室のドアが開いた。
青が、全身ジュエリーをまとって現れた。
「同窓会なのに、なんで私に知らせてくれなかったの?同じクラスだったでしょ?」
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