義妹のために売られた妊婦第2話
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「えっと……医者が、お腹の子の具合がよくないって。だからお守りにって、お兄ちゃんがこのバングルをつけてくれたの。春奈さんが嫌なら、返すよ!」
彩乃はそう言うと、すぐにバングルを外そうとした。
「やめろ!」
翔太はすぐに彼女の動きを止め、痛ましげな顔をした。
「たかが安物のバングルだろ。春奈、お前いつからそんなにセコくなった?」
安物のバングル?
三年たった今でも、もう過去は忘れたつもりでいたのに、胸の奥にどうしようもない苦さが広がった。
このエメラルドのバングルは、両親が遺してくれた唯一の物で、井上家の家宝だった。
かつてお坊さんに祈祷してもらったものだ。
あの年、私は原因不明の病に倒れ、国内外の名医がどれだけ調べても原因は見つからなかった。
両親は焦り、何日も泣き、最後にこのバングルを持って寺へ向かった。
山の麓から山頂の寺まで、一歩ごとに跪いて進んだ。
三千歩、祈り続けて。
ついにお坊さんに祈祷してもらった。
しかし、帰りの高速道路で、大型トラックが真正面から突っ込んできて、両親はその場で命を落とした。
目を覚ましたとき、残されていたのは二つの位牌だけ……
私は斎場で泣き崩れ、気を失い、最後には絶望のまま机の角に頭を打ちつけた。
その瞬間、私を強く抱きとめたのは翔太だった。
「春奈!お前の両親はお前のために死んだんだ。今日ここでお前まで逝ったら、その死は無意味になる!安心しろ、この一生、俺はお前を離さない!春奈、お前には俺がいる!」
そこまで思い出した私は、彩乃の手をぎゅっとつかんだ。
「返して!」
「痛い……」
彩乃の顔が白くて、唇を噛みしめ、悔しげに言った。
「春奈さん、返すって言ってるでしょ。井上家の物なんて、私が触れるわけないじゃない」
果てしなく被害者ぶるような口ぶりだった。
私はただ、自分のバングルを取り戻したいだけ。
だが私がつかむ前に、彩乃は手を放した。
バングルは指先から滑り落ち、鈍い音を立てて床に叩きつけられた。
その瞬間、粉々に砕け散った。
彩乃は怯えて翔太の腕に身を縮め、震える声で言った。
「わ、わざとじゃないよ。春奈に驚かされただけ……」
私は一瞬で野獣のように逆上し、涙をこぼしながら彩乃へ突進した。
「私のバングルを返して!」
だが近づいた途端、翔太に突き飛ばされ床に倒れた。
「値段を言え、払ってやる。どうでもいいガラクタで彩乃を泣かせるな。みっともない真似はやめろ、な?」
手首と脚が硬い床で擦れて焼けるように痛んでいる。
私は唇を結び、言葉を飲み込み、砕け散った破片を一つずつ拾い集めた。
「春奈さん、私が手伝うよ!」
彩乃が身をかがめ、私の耳もとでささやく。
「本当に、両親の死がこのバングルのせいだと思ってるの?甘すぎるよ!」
私は一気に血走り、頭の中が真っ白になった。
彩乃の襟をつかみ、血走った目で問い詰める。
「どういう意味だ。言え!」
次の瞬間、翔太の蹴りがみぞおちに入った。
鉄の味がせり上がり、血が床に花のように散った。
「お兄ちゃん、春奈さんを傷つけないで。私があなたの子を身ごもってるから、嫉妬して意地悪してるだけなの。もともと二人はお似合いだもの。悪いのは私よ!今すぐ中絶して、あなたの前から消える。そうすれば全部元どおり!」
彩乃は怯えた兎みたいに、全身を震わせていた。
だが私の胸は冷え切っていた。
これまで疑いもしなかったことが、一気に怪しく見え始めた。
「翔太、あの頃……」
言い終える前に遮られた。
「お兄ちゃん、お腹がすごく痛い……」
翔太はたちまち青ざめ、彩乃を抱き上げ、家庭医師のところへ急いだ。
去り際、彼は私に冷ややかな一瞥を投げた。
「彼女を閉じ込めろ!」
私は数人の警備員に取り囲まれた。あまりの無礼さに血が逆流する。
もう我慢の限界で、怒りをぶつけた。
「無礼ね!私を敵に回した報い、あなたたちには耐えられないわ!」
言い終えるや否や、周囲の野次馬は一斉に嘲り笑った。
「井上家はとっくに破産だろ。よくそんな大口が叩けるな!」
「ただの捨てられ女が、昔のお嬢さま気取りか。空気読めよ!」
「そうそう。今や翔太は頭角を現した金持ちだ!さっさと頭下げりゃいいんだよ!」
私は鼻で笑った。
あの年、井上家の資源をすべて翔太に渡さなければ、今の地位なんてあるはずがないのに。
だが誰もが私の虚勢だと決めつけ、翔太に媚びるために、私は警備員用のトイレにまで押し込められた。
中は煙がこもり、吐血した身にはめまいと痛みが重なり、すぐに意識が途切れた。
どれだけ時間が経ったのか、扉の開く音がした。
「来たのね!」
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