義妹のために売られた妊婦第3話
この話は約1460字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。
期待を込めて声をかけたが、入ってきた相手を見て、すぐに目が冷えた。
翔太が見下ろしてくる。
「誰だと思った?」
何度も難癖をつけてくるのにうんざりして、私は疲れた手をひらりと振った。
「行かせて。もう二度と、あなたと彩乃の前には現れない」
生き直した当初、胸の中は天を覆うほどの憎しみでいっぱいで、翔太と心中することしか考えていなかった。
けれど三年が過ぎ、今は自分の生活がある。
ただ、この男から遠く離れたいだけ。
それでも翔太は食い下がり、私の手を固くつかみ、読みきれない色の目を向けてきた。
「春奈、心はないのか。俺が三年探し続けたのを知ってるか」
私は無表情のまま、目の前の男を見た。
三年前、私は結婚式の最中に生まれ直した。
翔太はまた彩乃を救うために、私を宿敵の連中へ突き飛ばした。
でも私は知っていた。あの「宿敵」はすべて偽物で、狙いは私の財産だと。
前世では、財産をあの連中へ渡した途端、私は解放された。
だが高橋家へ戻ると、無理やり堕胎薬を飲まされた。
「高橋家に、名誉を汚した子どもは置けない!」
何を言っても無駄だった。
すべてが仕組まれたものだと悟った時、私は抵抗をやめた。
連中の船に乗り、そのまま深海へ身を投げた。
まさか、あの人に救い上げられるなんて思いもしなかった……
「最初に私を連中へ差し出したのは、あなたでしょう!でも、あいつらは本当に宿敵だった?それとも……」
私はまっすぐ翔太を見据え、その視線で心臓を貫くつもりで。
「やめろ!」
翔太の視線が一度泳ぎ、すぐ平静を装った。
その奥に、私への憎しみがちらりと見えた。
可笑しい。
恨むべきは、私のほうじゃないの?
翔太が虚を突かれた隙に、私は彼を突き放した。
あの人はまだ来ない。ここから離れないと。
宴会場に戻るなり、彩乃に見つかった。
「春奈さん!今夜は大事な客が来るって知らないの?そんなふうにうろついて、お兄ちゃんの商談が潰れたらどう責任取るの?」
その口ぶりは侮蔑だらけで、翔太の前で見せる弱々しさは欠片もない。
「もう猫かぶるのをやめたの?」
私が見世物でも眺めるみたいな目を向けると、その視線が彼女の神経を逆なでした。
彩乃がぐっと距離を詰め、低く笑った。
「春奈、戻ってきたところで何になるの?お兄ちゃんは私のもの!愛人になりたくないなら、さっさと私とお兄ちゃんの世界から消えなよ!もちろん、お金は払ってあげる。今、困ってるでしょ?井上家の財産はもう全部ないんだから」
三年前、私が姿を消したあと、婚約者だった翔太が全財産を相続した。
口喧嘩をする気はなく、私は彼女の腕をつかんで詰め寄った。
「さっきの言葉はどういう意味?私の両親の死について、何を知ってるの」
彩乃は笑って黙り、口元の弧がぞっとするほど冷たかった。
血が一気に熱くなり、同時に足元から氷のような寒さが這い上がる。過去のすべてが偽りで、仕組まれた罠に思えてくる。
「お兄ちゃん!怖い!春奈さんが私を壊そうとしてる……」
彩乃は私の背後を見やり、たちまち目を赤くして、昔の仮面に戻った。
振り向くと、案の定、翔太が追ってきていた。
「春奈!やっぱり反省してないな!手加減が過ぎたか!自分の立場も分からせてやれ!」
翔太の平手が飛び、全力で頬を打たれた。
耳が鳴り、世界がぐらりと傾いた。
「彼女を高橋家の地下室へ連れて行け。閉じ込めろ!」
翔太は駆けつけたアシスタントに命じ、声は氷のように冷たかった。
私は必死にもがいた。
アシスタントに押さえつけられ、今まさに宴会場から引きずり出される時、低くよく響く声が場を断ち切った。
「俺の妻に手を出すな!」
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