和紙文緊急事態の機内、彼は遺書を私の親友に託した · 第2話設定≡

緊急事態の機内、彼は遺書を私の親友に託した第2話

この話は約1467字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

眠れない夜だ。修司が戻ってきて、背後から私を抱きしめた瞬間、耳元に伝わる彼の息遣いに、ただ吐き気を覚えた。

手を伸ばして彼を突き放し、私はゲストルームへ向かった。

私は翌朝早く家を出た。

これ以上、同じ屋根の下で彼と過ごしていたら、きっと我慢できずに吐いてしまうと思ったからだ。

修司から電話がかかってきた時、私は法律事務所にいる。離婚協議書に目を通してから、通話に出た。

「朝からどこに行ってるんだ?」

「結婚休暇が終わったから、仕事の整理をしに来ただけよ」

こんな状況でも平然と嘘をつける自分に、我ながら感心した。そして修司は、その言葉を疑いもしなかった。

「そっか。今日は俺も用事があるから、昼は帰らない。プレゼントを買ってあるから、受け取っておいて」

電話を切ると、向かいに座っている弁護士が私を見て言った。「大丈夫ですか?」

あまりにも顔色が悪かったのだろう。彼は温かい水を差し出してきた。私は笑って礼を言い、そして一言付け加えた。「これらはすべて私のものにしてください。彼は有責配偶者です。九割、私が取ります!

彼は長期の不貞行為をしてきました。所詮は金ですし、彼は拒まないはずです。私の言った通りに進めてください」

葉月修司。この先の人生、私は彼と不倶戴天だ。

私の機嫌が悪いことに気づいたのか、修司から届いたプレゼントは、なんと四十万円相当のバッグだ。

その直後、若菜から電話がかかってきた。「ほんと、誰かさんが羨ましいわ。昨日は私に遺書を書いただけなのに、今日はもう四十万円以上もするバッグを買って送るなんて。もういい加減彼を許してあげなさいよ」

電話越しに若菜が彼を庇い、言葉の端々には、私が大げさだという非難すら滲んでいる。それが、なんだか可笑しくなった。

まるで、私の方が細かくて面倒な人間みたいだ。

彼女が一方的に話し続けているのに、こちらが何も返さないことに気づいたのだろう。若菜の声が変わった。

「どうしたの?なんで黙ってるの?」

「ちょっと話す気になれなくて。時差ボケかな、少し疲れてるだけ」

「じゃあ、ゆっくり休んで。また今度会おうね」

電話を切ると、私はすぐに動き出し、若菜のすべてのSNSアカウントを検索した。

長年の友人ではあったが、本当の意味で親友になったのは、ここ五年ほどだ。修司がいたから、私たちはより親密になったのだ。

彼女のSNSをすべて目を通したが、どこにも不審な点は見当たらなかった。

しばらく考えてから、フォロー一覧の中にある一つのアイコンに目が留まった。ふくよかな浴衣姿の女の子の挿絵だ。いかにも彼女の好みだ。

開いてみて、ようやく気づいた。これこそ彼女のサブアカウントだ。そこには、若菜と修司の軌跡が、びっしりと記録されている。

男性の顔は映っていない。それでも、修司と八年付き合ってきた私には、一目で分かった。ぼやけた背中も、一瞬映る横顔も、間違いなく修司だ。

二人は、私に隠れ、ずっと付き合っているのだ。

私は彼女の動画をすべて見た。彼女のプロフィール欄には、こう書かれている。【知り合って八年三か月の、狐さんと兎くん】

【2017年7月13日、兎くんと初めて会った日。一目惚れ。自分からラインを聞いたら、同じ大学だと分かって、厚かましく同じサークルに入った】

【2017年10月1日、ルームメイトも兎くんと友達になった。ほんとに計算高い。会った瞬間から甘え声。男ってああいうのが好きなの?】

【結局、彼女に先を越された。悔しい!】

【2017年12月25日、転機が来た。彼、迷ってるって。やっぱり私のほうが話が合うって言ってくれた】

縦書き表示中:本文は右から左へスクロールします(← → キーでも移動できます)