結婚許可券は永遠に白紙第2話
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「翔太、この許可券をもらう条件って何かあるの?私がどうすればいいの?」
翔太は首を横に振り、眩しい笑顔で私の腕に抱きついた。
「決まったルールなんてないよ。全部俺の気分次第さ」
当時の私は気にも留めなかった。恋人同士のちょっとしたお遊びだとしか思っていなかったからだ。
だが今にして思えば、おそらくあの頃から翔太はもう私を裏切り、莉乃と関係を持っていたのだろう。
「亜里沙、いつ帰ってくるの?」
私が黙り込んでいると、母が急かすように尋ねてきた。
「1週間後かな。こっちの用事を片付ける時間が少し必要なの」
私は出張から戻ったばかりだった。
本来なら先に会社へ行って仕事の引き継ぎをする予定だったが、翔太を驚かせたくて早めに帰宅したのだ。
その結果が、あの浮気現場との遭遇だ。
私は深呼吸をして翔太と莉乃の件を一旦頭から追い出し、会社へと向かった。
業務の整理を終えた後、私は社長の藤原にメールを送り、個室での面談を取り付けた。
「藤原社長、お時間をいただきありがとうございます。突然ですが、部長職を辞任する決意をいたしました」
藤原は穏やかに微笑んだ。
「恋人の結城くんと上手くいっているんだね。結婚すると聞いていたが、退職して家庭に入るつもりかな?」
夫の収入が自分より高いため、仕事を辞めて専業主婦になるという選択をする女性は確かに多い。
しかし、私の場合は違う。
私はあえて訂正せず、藤原の言葉に合わせることにした。
「ええ、そういうことになります。
1週間で、すべての引き継ぎを終わらせるつもりです」
退職手続きに追われていると、翔太からLINEのメッセージが届いた。
【出張から帰ってきた?】
【ええ、今は会社にいるわ】
【後ろを見てごらん】
振り返ると、花束を抱えた翔太がオフィスの入り口に立っていた。彼の笑顔は相変わらず爽やかで、つい先ほど莉乃と浮気していた男とは到底思えなかった。
「おかえり、亜里沙」
同僚たちが羨ましそうにヒソヒソと噂している。
「いいなぁ、森田部長と結城さんは相変わらずラブラブね。あんな彼氏がいたら最高なのに」
引き継ぎ業務を終えた私は半休を取り、何も言わずに会社のドアを出た。
翔太はピンクのユーストマの花束を私に差し出した。
私の好きな花はバラなのに、ある時から彼はユーストマばかり贈ってくるようになった。理由を尋ねたことがある。
彼は、ユーストマの花言葉が「優美」であり、相手の魅力を称えるものだからだと言った。
私に魅力を感じているから贈るのだと。
かつての私はその言葉を疑いもしなかった。だが今ならわかる。莉乃の好きな花がユーストマなのだ。
私は花束を受け取らなかった。
翔太は特に何も言わず、私の後をついて駐車場まで歩いてきた。
助手席に乗り込もうとした瞬間、シートの上に一本の口紅が落ちているのに気がついた。
翔太はバツが悪そうに言い訳をした。
「ああ、それは莉乃が体調を崩した時に病院まで送ってやってさ。その時にうっかり落としていったんだ。君の親友だし、助手席に乗せたこと、気にしてないよな?」
私は独占欲が強い人間だ。
翔太の車の助手席には、誰一人として乗せることを許さなかった。
誰かが乗った形跡を見つけるたびに、私は翔太と激しい口論になっていた。
しかし今は、彼と言い争う気すら起きなかった。私は淡々と首を横に振った。
「気にしてないわ」
私が初めて文句を言わなかったことに、翔太は安堵するどころか、むしろ気味悪く感じたようだ。
「亜里沙、本当に怒ってないのか?」
翔太は納得がいかない様子で再度尋ねてきた。
私は口紅をどけて助手席に座り、再び冷めた声で答えた。
「ええ、気にしてない。
正当な理由があるから、怒る必要ないわ」
以前、翔太と喧嘩をした時のことだ。
彼は不機嫌になり、私が細かいことを気にしすぎるせいで、息が詰まると不満を漏らしていた。
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