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結婚許可券は永遠に白紙第2話

この話は約1555字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

「翔太、この許可券をもらう条件って何かあるの?私がどうすればいいの?」

翔太は首を横に振り、眩しい笑顔で私の腕に抱きついた。

「決まったルールなんてないよ。全部俺の気分次第さ」

当時の私は気にも留めなかった。恋人同士のちょっとしたお遊びだとしか思っていなかったからだ。

だが今にして思えば、おそらくあの頃から翔太はもう私を裏切り、莉乃と関係を持っていたのだろう。

「亜里沙、いつ帰ってくるの?」

私が黙り込んでいると、母が急かすように尋ねてきた。

「1週間後かな。こっちの用事を片付ける時間が少し必要なの」

私は出張から戻ったばかりだった。

本来なら先に会社へ行って仕事の引き継ぎをする予定だったが、翔太を驚かせたくて早めに帰宅したのだ。

その結果が、あの浮気現場との遭遇だ。

私は深呼吸をして翔太と莉乃の件を一旦頭から追い出し、会社へと向かった。

業務の整理を終えた後、私は社長の藤原にメールを送り、個室での面談を取り付けた。

「藤原社長、お時間をいただきありがとうございます。突然ですが、部長職を辞任する決意をいたしました」

藤原は穏やかに微笑んだ。

「恋人の結城くんと上手くいっているんだね。結婚すると聞いていたが、退職して家庭に入るつもりかな?」

夫の収入が自分より高いため、仕事を辞めて専業主婦になるという選択をする女性は確かに多い。

しかし、私の場合は違う。

私はあえて訂正せず、藤原の言葉に合わせることにした。

「ええ、そういうことになります。

1週間で、すべての引き継ぎを終わらせるつもりです」

退職手続きに追われていると、翔太からLINEのメッセージが届いた。

【出張から帰ってきた?】

【ええ、今は会社にいるわ】

【後ろを見てごらん】

振り返ると、花束を抱えた翔太がオフィスの入り口に立っていた。彼の笑顔は相変わらず爽やかで、つい先ほど莉乃と浮気していた男とは到底思えなかった。

「おかえり、亜里沙」

同僚たちが羨ましそうにヒソヒソと噂している。

「いいなぁ、森田部長と結城さんは相変わらずラブラブね。あんな彼氏がいたら最高なのに」

引き継ぎ業務を終えた私は半休を取り、何も言わずに会社のドアを出た。

翔太はピンクのユーストマの花束を私に差し出した。

私の好きな花はバラなのに、ある時から彼はユーストマばかり贈ってくるようになった。理由を尋ねたことがある。

彼は、ユーストマの花言葉が「優美」であり、相手の魅力を称えるものだからだと言った。

私に魅力を感じているから贈るのだと。

かつての私はその言葉を疑いもしなかった。だが今ならわかる。莉乃の好きな花がユーストマなのだ。

私は花束を受け取らなかった。

翔太は特に何も言わず、私の後をついて駐車場まで歩いてきた。

助手席に乗り込もうとした瞬間、シートの上に一本の口紅が落ちているのに気がついた。

翔太はバツが悪そうに言い訳をした。

「ああ、それは莉乃が体調を崩した時に病院まで送ってやってさ。その時にうっかり落としていったんだ。君の親友だし、助手席に乗せたこと、気にしてないよな?」

私は独占欲が強い人間だ。

翔太の車の助手席には、誰一人として乗せることを許さなかった。

誰かが乗った形跡を見つけるたびに、私は翔太と激しい口論になっていた。

しかし今は、彼と言い争う気すら起きなかった。私は淡々と首を横に振った。

「気にしてないわ」

私が初めて文句を言わなかったことに、翔太は安堵するどころか、むしろ気味悪く感じたようだ。

「亜里沙、本当に怒ってないのか?」

翔太は納得がいかない様子で再度尋ねてきた。

私は口紅をどけて助手席に座り、再び冷めた声で答えた。

「ええ、気にしてない。

正当な理由があるから、怒る必要ないわ」

以前、翔太と喧嘩をした時のことだ。

彼は不機嫌になり、私が細かいことを気にしすぎるせいで、息が詰まると不満を漏らしていた。

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