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結婚記念日に、夫の秘書のために毒味をしろと?第1話

この話は約1899字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

結婚記念日、今まで一度も台所に立ったことのない夫の宮崎浩(みやざき ひろし)が、テーブルいっぱいの料理を作ってくれた。

私が一口食べるごとに、浩は細かく味を尋ねて、真剣にメモをとる。

途中、浩は寝室へ行き電話に出た。杉本瞳(すぎもと ひとみ)からの着信だ。

浩が席を外した隙に、何気なくノートを手に取った。そこには、私とは全く無関係なことがびっしりと書かれていた。

【いんげんは少し硬い。瞳はきっと好みじゃないな】

【きのこは少し塩辛い。瞳のために作る時は気をつけないと】

【羊肉はクセが強すぎる。瞳のために作る時は牛肉に変えよう】

戻ってきた浩がノートを取ろうとした時、私の動きを見て激昂した。「美希(みき)、お前は本当に教養のかけらもないな。勝手に触るなと言っただろう?」

反論しようと口を開くより先に、激しい頭痛に襲われた。目の前の浩の姿が揺らぐ。

「浩、なんだか気持ち悪いの……インゲンが生だったのかも……」

「だったら急いで書き留めないとな。瞳のために作る時は長めに火を通そう」

浩は私を一瞥もせず、メモをとりながら足早に玄関へ向かう。

「出かけてくる。お前は丈夫なんだから、つらいなら薬でも飲んでろ」

意識が遠のく中、もう一度電話をかけると、苛立った声が聞こえた。「そんな大ごとなのか?死ぬのか?死んだらまた連絡してこい!」

浩、もう二度と連絡はしない。

* * *

結婚記念日、今まで一度も台所に立ったことのない夫の宮崎浩(みやざき ひろし)が、テーブルいっぱいの料理を作ってくれた。

私が一口食べるごとに、浩は細かく味を尋ねて、真剣にメモをとる。

途中、浩は寝室へ行き電話に出た。杉本瞳(すぎもと ひとみ)からの着信だ。

浩が席を外した隙に、何気なくノートを手に取った。そこには、私とは全く無関係なことがびっしりと書かれていた。

【いんげんは少し硬い。瞳はきっと好みじゃないな】

【きのこは少し塩辛い。瞳のために作る時は気をつけないと】

【羊肉はクセが強すぎる。瞳のために作る時は牛肉に変えよう】

戻ってきた浩がノートを取ろうとした時、私の動きを見て激昂した。「美希(みき)、お前は本当に教養のかけらもないな。勝手に触るなと言っただろう?」

反論しようと口を開くより先に、激しい頭痛に襲われた。目の前の浩の姿が揺らぐ。

「浩、なんだか気持ち悪いの……インゲンが生だったのかも……」

「だったら急いで書き留めないとな。瞳のために作る時は長めに火を通そう」

浩は私を一瞥もせず、メモをとりながら足早に玄関へ向かう。

「出かけてくる。お前は丈夫なんだから、つらいなら薬でも飲んでろ」

意識が遠のく中、もう一度電話をかけると、苛立った声が聞こえた。「そんな大ごとなのか?死ぬのか?死んだらまた連絡してこい!」

通話が切れたスマホを手に、今さっき浩に言われた言葉が頭から離れない。

あふれ出しそうな感情を押し殺し、身体を奮い立たせて、最後の力で救急に連絡した。

皮肉にも、救急隊の方が浩よりもずっと頼りになった。

診断の結果、インゲンとキノコの同時食中毒だった。処置が早かったため、数分遅れていたらと考えるだけでぞっとする。

病室のベッドで点滴を受けていると、傍らのスマホが鳴り始めた。

見ると、浩からの着信だった。

「美希、カレーにはりんごを入れたほうが美味いと思うか?」

あまりの問いかけに絶句しながらも、声を絞り出す。「今、病院なの」

向こう側は不機嫌そうだ。「あー、そうか。適当に薬でも貰って帰れ」

浩はすぐさま話を戻した。「さっさと言えよ、どっちがいいんだ?」

口を開きかけた時、電話から別の女性の声が響いた。「浩、あなたの手料理なら、なんでも大好き」

その瞬間、プツリと通話が切れた。

呆然とスマホを見つめていると、立て続けにメッセージが届く。

【会社で急なプロジェクトが入ったから、明日まで戻れない】

【病院に行って、薬を余分にもらっておけ。足りないなら金を送る】

画面の文字を読み、胸が強く締め付けられた。

急な仕事?薬でも飲んでおけって?

人は、ここまで適当にあしらえるものなのだろうか?

今回は返信をせず、スマホをそのまま置いた。

ベッドに横たわり、ぼんやりと天井を見上げる。

隣のベッドの小さな女の子が、黙りこくる私を見て屈託のない笑みを向けてきた。「お姉ちゃん、一人なの?

お母さんが入院した時は、ずっとお父さんが側にいたよ。お姉ちゃんの旦那さんはどこ?」

純粋な問いに、私は小さく呟く。「旦那さん……か。

私には、そんな人なんていないのよ」

私の答えに女の子はカッと目を剥き、両手を腰に当てて頬を膨らませた。「お姉ちゃん、嘘つき!さっきスマホのケースに結婚写真が入ってるの見たもん!」

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