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終わりを告げる恋歌第2話

この話は約1671字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

竜也はこれで安心できる。

菖蒲と一緒に、海外で出産までのんびり過ごせるから。

何ヶ月も、こっちに戻ってこなくてもいいんだもの。

でも、ずっと海外で穏やかに暮らしていたはずの彼の両親が、どうして急に帰ってくるのか、竜也は知らないでしょうね。

ましてや、彼が私にした人でなしの仕打ちを、彼の両親がもう全部知っていることなんて、知る由もない。

私は冷たく笑うだけで、反対はしなかった。

だって、義母に帰国をお願いしたのは、この私なんだから。

今の私ひとりじゃ、どうにもならないって。

どうあがいても、竜也の手からは逃げられないって、わかっていたから。

私が何の反応もしないでいると、彼はそばにしゃがみこんで、優しい表情で私を見つめた。

「結衣、愛してるんだ。

菖蒲が子供を産んだら、必ず君のところへ戻ってくるから」

そんな言葉、もう聞き流すだけだ。

たとえ今、本心からそう思っていたとしても、菖蒲の一言で、彼は私との約束なんて、平気で反故にするに違いない。

だから、彼の言葉はもう二度と信じない。

あと三日。

彼は私から完全に解放される。

そして、心おきなく菖蒲の子供の父親になれるんだ。

夜、竜也は家に帰ってこなかった。

菖蒲の体調が悪いと聞くと、竜也はすぐに言い訳を見つけて彼女のもとへ向かった。

付き合って四年、結婚して三年。菖蒲が帰ってくるまでは……彼女が、他の男の子供を身ごもって現れるまでは、私はずっと、竜也が私を愛してくれていると信じてた。

しかし、突然、なにもかもが変わってしまった。

私を愛してくれていたはずの夫は、別の女の世話に夢中になった。

私は光の届かない暗い檻の中に閉じ込められ、彼への愛情を少しずつ失っていく。

彼への愛情は、少しずつ、少しずつ、削られていった。

失望ばかりが積み重なって、愛はとうとう消え失せた。

だから、もう潮時なんだ。ここを去るべき時なんだ。

翌日の誕生日パーティ。竜也は、「迎えに行く」と言って、何度も電話で急かしてきた。

でも、時間になって玄関を出ても、そこにいたのはボディーガードが運転する車だけだった。

「結衣、ごめん。こっちで急用ができた。

先に行ってて。俺もすぐ行くから」

最初から期待なんてしてない。失望するはずもない。

真冬の冷たい風が、刃物みたいに頬を切り裂いていく。

なのに、痛みは少しも感じなかった。

まるで、竜也への今の私の気持ちみたいに。

失望が絶望に変わって、もうどんな痛みも私を傷つけられない。

車が停まったのは、ある会員制のお店の前だった。

私は眉をひそめながらも、車を降りた。

ボディーガードに先導されて、とある個室へと足を踏み入れた。

でも、そこにいたのは知らない人たちばかりだった。

彼らの眼差しは、まるで値踏みするように、私を嘲笑し、見下しているようだった。

まるで汚いものでも見るかのように、みんな遠巻きに私を避けていた。

「竜也さんに浮気しといて、よくも誕生日を祝ってもらおうなんて言えるわね」

「竜也さん、かわいそう。あんな浮気相手の子供まで産ませてあげるなんて」

「あんな女のどこが良かったのかね。菖蒲さんの足元にも及ばないのに」

ひそひそ話すでもなく、わざと私に聞こえるように言っている。

ほらね、これが竜也の仕組んだこと。

竜也は、菖蒲が彼女の両親から責められるのを、ただ黙って見てはいられなかったんだ。

なのに、私が彼らのせいでどれだけ傷ついたかなんて、考えもしない。

菖蒲の苦しみの、何千倍もひどい目に遭っているというのに。

私がどう言われようと構わない。でも、お腹の子までこんな風に言われるのは、どうしても我慢できなかった。

私は立ち上がって、この場を去ろうとした。

どうせ、誰も私なんて歓迎してないみたいだから。

でも、ドアを開けた先に立っていたのは、まさか竜也と菖蒲だった。

竜也はバツが悪そうに目をそらし、菖蒲は「してやったり」とでも言いたげな笑みを浮かべていた。

二人はドアの外で、部屋の中から聞こえる、私を罵る声を全部聞いていたんだ。

でも竜也は、何も言わなかった。菖蒲が私の腕を掴んで、部屋の中に引き戻すのを、竜也はただ見ているだけだった。

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