箱入り娘が去ったあと、御曹司たちは後悔に狂った第2話
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個室の照明は薄暗く、どこか退廃的な色を帯びていたのに、そこにいる全員の表情だけは妙にはっきりと浮かび上がっていた。
嘲り、軽蔑、嫌悪。
そこに、罪悪感だけはひとかけらもなかった。
私は景吾を見つめた。
七年間、心の底から愛してきた男を。
十六歳から二十三歳まで、私の青春は全部この人で埋め尽くされていた。
彼は言った。
「詩織ちゃん、お前は壊れやすい人形みたいなものだ。だから俺が手のひらで大事に守ってやる」
彼は言った。
「詩織ちゃん、誰かがお前に嫌な思いをさせたら、俺がそいつを絶対に許さない」
でも今、私にいちばん大きな傷を与えているのは、ほかでもない彼自身だった。
私は泣かなかった。取り乱しもしなかった。
ただ静かに腰をかがめて、床に落ちたプレゼントの箱を拾い上げた。
景吾は、私がそれを自分に渡すのだと思ったのだろう。
顔に得意げな色が浮かんだ。まるで、「ほら見ろ、こいつは俺から離れられない」とでも言いたげに。
「詩織、今ここで鈴に謝って、自分が悪かったって認めるなら、この件はそれで終わりにしてやる」
景吾は尊大に顎を上げた。
賢治も横から口を挟んだ。
「そうだよ、詩織ちゃん。景吾さんはまだお前に情があるんだ。謝って、もう意地張るなって」
謝る?
私は手の中の箱を見つめ、ふいに笑ってしまった。
「景吾、この七年間、私に優しくしてくれたのも……全部嘘だったの?」
景吾は私の視線を避け、冷たく言い放った。
「お前が面倒くさすぎるんだ。そんな女を一生我慢できるわけないだろ。俺は男だ。必要なのは隣で一緒に戦える相手だ、泣いてばかりの飾りじゃない」
「そう」
私はうなずいた。声は羽のように軽かった。
「景吾、あなたの望みどおりにするわ」
私はゴミ箱のそばまで歩いていき、その場にいた全員の前で、その途方もない価値のあるプレゼントの箱を、ためらいなく中へ投げ捨てた。
景吾の顔色が一瞬で変わった。
「詩織!何してるんだ、おかしくなったのか!?」
「あなたのためにおかしくなるのは、これで最後よ」
私は振り返り、その場にいた一人ひとりを見渡した。
賢治、航平……幼いころからずっと一緒に育ってきた幼なじみたち。
「それから、あなたたちも。そんなに日向鈴が好きなら、この先一生この人のそばにいればいい。私はもう付き合わない」
そう言い残して、私は背を向けた。
背後から、鈴の淡い嘲りを含んだ声が追ってきた。
「上原さん、もう耐えられなくなったの?やっぱり陸山社長の言うとおりね。ずいぶんとか弱いこと」
扉の隙間越しに、景吾の苛立ちを隠せない声が響いてきた。
「行かせろ!どうせどこにも行けやしない!俺がいなきゃあいつには何もできない。明日になれば泣きついて戻ってくるかどうか、見てればわかる!」
クラブを出ると、外の冷たい風が刃物のように頬を切りつけた。
私は運転手を呼ばず、ひとりで人気のない通りを歩いた。
街灯に引き伸ばされた私の影は、どこまでも長かった。
このところのことを思い返した。
幼なじみたちは鈴を持ち上げるために、私が経営していた小さな画廊から資金を引き揚げた。
あんなものは「子どものおままごと」だと言って。
景吾は忙しいことを言い訳にしていたくせに、鈴の案件には付きっきりだった。
それどころか、鈴から一本電話がかかってきただけで、私を高速道路の途中に置き去りにしたことさえあった。
つまり、あの人たちが私と距離を取ったのは、ずっと前から不満が溜まっていたからだったのだ。
私はとっくに、あの人たちの目には重荷でしかなかったのだ。
気がつくと、私は川辺まで来ていた。
左手の薬指にはまった婚約指輪を、指先でそっとなぞる。
これは景吾がプロポーズのときにくれたものだった。五カラットのピンクダイヤ。唯一無二の愛の証だと、あのとき彼は言った。
今となっては、笑ってしまうほど皮肉だった。
私は何のためらいもなく手を振り上げた。
指輪は道路脇の排水溝の隙間へ吸い込まれるように落ちていった。
上原家の屋敷に戻ったころには、もう夜も更けていた。
私はまっすぐ祖父の万夜の書斎へ向かい、あの決断を口にした。
「おじいさま、A国のあの建設支援プロジェクト、私が行くわ。あの縁談も受ける。条件は一つだけ。明日の朝一番で出発すること。それまで誰にも知らせないで」
私はきれいさっぱり去るつもりだった。何もかも断ち切って、完全に。
今日このときから先、京城に上原詩織はいない。
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