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秋風に消えた想い第2話

この話は約2177字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

「夏美は公にできない関係で我慢してもらっているから、もう十分辛い思いをさせているんだ。だから、こんなささやかなプレゼントでは、とても埋め合わせにならないよ。

できることなら、彼女とだって式を挙げたいんだから」

オフィスの外で、霞は必死に正気を保とうと自分の腕をつねっていた。

かつて自分と結婚するためなら、家族全員を敵に回すことも厭わなかった要が、まさか他の女を愛しているなんて、信じられなかった。

ありえない。

10年前、霞が病で倒れ、病院から要に何度もかなり危ない状況であるという連絡が来た時、海外にいた要はすぐにチケットを取り帰ってきてくれた。そして、山奥にある神社に毎日通っては祈りを捧げてくれたのだった。

二人で交通事故に遭った時も、要は迷わず霞を庇い、意識不明の時でさえ、霞の名前を呼び続けていたし、家族に結婚を反対された時は、すべてを捨てて霞と心中しようとまでした。

そして、やっとのことで霞と結ばれた日、要は誓った。

「何度生まれ変わっても、俺はお前だけを愛し続ける。もしこの誓いを破るようなことがあれば、望んで天罰を受けるよ」

……

あれから長い月日は経っていないというのに、要は心変わりしている。それどころか、夏美を愛してしまったのは仕方なかったなんて言っているのだ。

なんて愚かなのだろう。二人の女を同時に手に入れようとするなんて。

しかし、霞は最初からはっきりと要に伝えていた。二股なんて絶対に許さない、と。

中途半端な愛情なんていらない。もし心変わりしたら、きっぱりと別れると決めている。

その時、オフィスの中から要の苛立った声が聞こえてきた。

「霞が来てること、なんで前もって報告しなかったんだよ!それに、どうして彼女をここまで上らせたんだ?」

中の様子に気づいた霞は、素早く涙を拭うと、平静を装ってドアを開けた。

霞の姿を見るなり、要の目に明らかな動揺が走る。

「霞、いつ来たんだ?」

全部聞こえていたよ、と本当は言いたかった。

でも、それを言って何になるというのだろう?たとえ言ったとしても、自分の立場が不利になるだけだ。

下手すれば逆ギレされて、あれこれとこちらの非を責められるかもしれない。

そう考え、霞は問い詰めたくなる気持ちをぐっとこらえた。

「今来たとこ。どうしたの?何か私に何か隠しごとでもあるの?」

霞は明るく笑ってみせる。

要の友人たちはそんな霞の様子を見て不憫に思ったが、それでも要に協力して取り繕った。

「そんなわけないだろ?要は君に一筋なんだから」

「ああ、そうだよ!君を喜ばせたくて、サプライズを準備してるんだって。俺たちにもずっと相談してきてさ」

霞は彼らの言っていることが全て嘘だと知っていたが、何も言わずに持ってきたお弁当を広げ、みんなに勧める。

要の友人たちは笑顔で手を伸ばしたが、その手が弁当に届く前に要は彼らを追い出した。

要はぐっと手を伸ばして霞を抱き寄せると、霞が少しでも疲れてしまうことを心配し、肩を揉んだり足をさすったりした。

「こんなことは他の人に任せればいいんだ。お前はもっと休んで。お前が疲れている姿を見ると、俺が辛くなるからさ。

体調は良くなった?この前電話をくれた時、すごく焦ってるみたいだったけど」

霞の手がぴたりと止まる。「なんでもないよ。たいしたことじゃないから」

霞はうつむくと、すぐに話題を変えた。

「そういえば、橋本さんは今どうしてるの?」

要は一瞬、虚を突かれたような顔をしたが、すぐに嫌悪感を露わにして言った。

「なんであんな女の話を?あいつは恥知らずな女だ。海外に追い出すだけで止めてやったのも、俺の慈悲ってもんだよ」

霞はそれ以上追求せずに、ただ早く食べるように促す。

しかし霞の顔色が悪いのに気づいた要は、すぐに彼女を抱き上げ、病院へ連れて行こうとした。

道中、要はずっと霞を強く抱きしめ、甘い言葉を囁き続ける。

霞が寒くないようにと服をかけ、暑くないかと団扇で扇ぎ、喉が渇いていないかと水を飲ませようとする。

霞は黙ってそれを受け入れていたが、特に返事をすることはなかった。

次第に、要も違和感に気づきはじめる。

「霞、どうかしたか?なんでそんな急に冷たくなったんだ?」

霞は深く息を吸い込み、口を開こうとした。

しかしその瞬間、間の悪いことに要のスマホが鳴った。霞は横目でスクリーンに表示された名前を見た。

【夏美】

体を強張らせた要だったが、メッセージの内容を見た瞬間、みるみるうちに耳の先まで赤くした。

要は困ったように霞を見つめる。

「霞。ごめん、急に思い出したんだけど……今から大事な海外との会議があったんだ……

だから、その……」

霞は強く拳を握りしめた。爪が手のひらに食い込む。

しかし、表情は平静を保ったまま言った。「行ってきて。私は一人で大丈夫だから」

要が車を降りた後、霞は車内のパーティションを上げる。

スマホであるアプリを起動すると、二人のやり取りがはっきりと表示された。

【生理終わったよ。だから、会いに来ても大丈夫だよ!】

【この小悪魔め、待ってろよ】

霞の胸は締め付けられた。要が自分の潔白を証明するために用意したものが、まさか彼の不貞の証拠になるなんて、思いもしなかっただろう。

目にゴミが入ったわけでもないのに、霞の目からは大粒の涙がこぼれ落ちた。

しばらくして、霞はかけ慣れている番号に電話をかけた。

「お兄ちゃん、家に帰りたい」

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