和紙文私の葬式で愛してると言って · 第2話設定≡

私の葬式で愛してると言って第2話

この話は約2314字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

彼女の態度に、晨也の顔はますます冷え切り、歯の隙間から絞り出すように言った。

「そう言うなら、さっさと薬を飲め!」

梨花は目を伏せ、その瞳に宿っていた悲しみをすべて隠した。

彼女は静かに薬の瓶をひねって開け、倍量の薬を口いっぱいに押し込むと、そのまま早足で自分の部屋に戻り、鍵をかけた。

口の中の苦味が消えたころ、内臓を刃でえぐられるような激痛が襲ってきた。

彼女はベッドのシーツをぎゅっと握りしめ、顔面は青ざめ、この地獄のような痛みは1時間くらい続いた。

震える手で引き出しを開け、タバコを取り出した。

この死にそうなほどの痛みを紛らわすため、タバコに頼るしかない。吐き出した煙が部屋に漂う頃、隣の部屋からまたもや熱を帯びた声が響いてきた。

女性の甘い吐息とともに、晨也の声は信じられないほど優しく響いた。

「念希、君の病気が治ったら、結婚しよう。俺が自分の手で、世界で一番美しいウェディングドレスを着せてあげるよ」

このような言葉を、晨也もかつて梨花と二人で愛し合っていた頃、彼女の耳元で囁いたことがあった。

「梨花、愛してるよ。この人生で愛せるのは梨花だけ。世界で一番幸せな女性にしてあげる」と。

痛みが少しずつ和らぎはじめた頃、隣の部屋の音も静かになった。

しばらくして、外から女性の声が聞こえた。

「晨也、なんだかタバコの臭いがしない?私、タバコの臭いが一番嫌いなの」

その言葉の直後、梨花の部屋のドアが勢いよく開かれた。晨也が冷たい顔で立っており、眉をひそめていた。

「安里、お前……タバコまでも覚えたのか?」

彼女は煙を吐き出しながら、手にしていたタバコの火を押し潰した。

「江川さん、被験者がタバコを吸ってはダメって、そんなルールないでしょ?」

「晨也、これがあなたが選んでくれた被験者なの?」

念希が晨也の腕に甘えて寄り添いながら歩いてきた。

しかし梨花の顔を見た瞬間、彼女の表情は一変した。

「どうして、彼女なの?」

晨也は念希の変化に気づき、眉をひそめた。「どうした?知り合いなのか?」

念希の視線は、どこか含みを持って梨花に注がれていた。「まあ……そうね。父の数多く愛人の一人ってところかしら。

私は、父に媚びた女が大嫌いなの。タバコを吸う女も」

晨也の目にかすかな動揺が走ったが、すぐに消え、代わりに彼は念希の腰を優しく抱き寄せた。

「じゃあ、君はどうしたい?」

可愛らしい顔に、冷酷な笑みが浮かんだ。念希は一歩一歩、梨花に近づいていった。

スリムな指がタバコの箱から一本を取り出して火をつけたかと思うと、次の瞬間、火のついたままのタバコを梨花の腕に押しつけた。

焦げた肉の匂いが空気に広がった。梨花は歯を食いしばり、怒りに満ちた目で念希を睨みつけた。

晨也の背を向けた念希は、口元に冷ややかな孤独の笑みを浮かべた。そして腰をかがめ、梨花の耳元で、二人にしか聞こえない声で囁いた。

「泥にまみれたあんたみたいな女は、一生そこに沈んでいればいいのよ」

5年前、梨花は母親と七割似た顔立ちを武器に、念希の父親の愛人となった。

父の仇が彼女の身体を奪おうとしたその夜、彼女は酒に幻覚作用のある媚薬を混ぜて飲ませ、彼が屋上から身を投げるのを見届けた。

彼女は、家族を滅ぼした望月念希の父を憎んでいた。念希もまた、彼女を憎んでいた。

タバコの火が消えると、ようやく念希はその手を離した。

梨花の背中には痛みと冷や汗がにじんでいた。視線の先、晨也は、念希の手に残った灰を丁寧に吹き払っていた。

そしてその白く滑らかな手の甲に、唇をそっと当てながら言った。「こんなこと、君が自分でやる必要はない。汚れるだけだ」

念希は感激のあまり、晨也の首に腕を回し、熱く長いキスを交わした。

その光景は、梨花の心を鋭く貫いた。鋭利な刃で胸を切り裂かれるような痛みだった。

キスが終わると、晨也は念希を抱きかかえて部屋を出ていった。長く我慢していた涙が、ついにこらえきれずにあふれ出した。

梨花は必死に体を起こし、一人で腕の傷の手当てを始めた。

そのとき、再び晨也が戻ってきた。冷たい声で問い詰めた。

「お前と念希の父親の関係……一体どういうことなんだ?

教えろ。あの時、俺のもとを去ったのは、仕方がなかったからなんだろ?」

手が止まり、彼女は顔を上げた。晨也の硬い表情の裏に、わずかな期待が見えた。

もしかしたら、真実を話せば、彼はもう彼女を恨まないかもしれない。

だが、傷ついたこの体は、彼女に残酷な現実を告げていた。余命は、もうわずかだと。

彼女は目を伏せ、できるだけ穏やかな声で言った。

「何って……私の体が欲しい彼と、彼のお金が欲しい私。お互い様ってだけ」

その無関心な態度が、晨也の胸に怒りを呼び起こした。テーブルの薬瓶が、彼の手で床に叩き落とされた。

「お前、いつからそんなに卑しくなったのか?金のために、自分の父親ほどの年の男に身を任せるのか!?」

床に散らばった薬を見つめながら、梨花の目には痛みがにじんだ。だが、顔を上げたとき、その痛みもすべて消していた。

いつものように、無表情な笑みを浮かべて言った。

「そうよ、私は卑しい女。お金さえもらえれば、なんだってするわ。もし当時あなたにお金があったら、きっとあなたの望みも全部叶えてあげたのに。

鞭でも、ロウソクでも、犬になっても。何でもね」

「やめろっ!」

晨也は拳を握りしめ、歯ぎしりをしながら、今にも飛びかかりそうな勢いだった。

だが、結局彼は一言も言わず、勢いよくドアを閉めて出て行った。

扉が閉じられた瞬間、梨花の目から再び涙がこぼれ落ちた。胸の痛みが、息をすることすら許さなかった。

――この痛みは、彼女が一人で背負えばいい。

あの穢れた過去を、晨也が知る必要はないのだから。

縦書き表示中:本文は右から左へスクロールします(← → キーでも移動できます)