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私の人生にあなたはいらない第2話

この話は約2220字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

深夜、私は蒼大からメッセージを受け取った。

【今日の食事会で言った言葉は、ただあの場を取り繕うためのものだから。

柚乃が俺の本当の彼女だよ。後で帰ったらちゃんと説明する】

そして私はリビングで一晩中彼の帰りを待っていたが、彼が姿を現わすことはなかった。

翌日の明け方、3回送られてきて、返事をはっきり送っていなかったメールに私は返信した。

【3年の常駐プロジェクト、受けようと思います】

私はただ、一晩だけ優花に彼氏を貸し出した。

そして蒼大は「本物の彼女」という役まで優花に貸し出した。

優花の元婚約者はあれから頻繁に彼女につきまとうようになった。

そして蒼大はある日、私と一度も相談することなく、優花を私たちが同棲していた家に引っ越しさせた。

私が仕事を終えて帰宅した時、スマートドアロックには優花の指紋も登録済みだった。

優花のスリッパは玄関に並べられ、洗面道具は洗面所に、そして私のパジャマやスキンケア、歯磨きなどは全てゲストルームに追いやられていた。

優花は主寝室のドアの前に立ち、小声で言った。

「私がゲストルームで暮らすよ。

ここはあなたと柚乃の部屋でしょう」

しかし、蒼大は首を横に振った。

「主寝室には内鍵もあるし、部屋の中に独立して浴室もあるから、もっと安全なんだ」

そう言い終わると、彼は私のほうを向いた。

「柚乃はさ、いろんな環境にすぐ慣れるじゃん。

数日ゲストルームで過ごしたって問題ないよな」

私の物が全てスーツケースに押し込まれているのを見て、ふいに、ここへ引っ越してきた初日のことを思い出した。

蒼大は私を抱きかかえて、主寝室に入ると笑って言った。

「これから、ここが俺たちの家だ」

今、彼は「環境にすぐ慣れる」という言葉一つで、この私を私たち二人の家から追い出そうとしている。

優花は床に置かれた主寝室から追い出された物を見つめた。

「たった数日のことだから」

その後、優花は自分のスーツケースを引いて中に入っていった。

彼女は着替えを持ってきていないらしく、蒼大が私のクローゼットからまだ開封していないパジャマを取り出した。

「まずはこれを着ておいて」

それは彼が付き合って5周年となる記念に事前に用意していたパジャマだった。

私はただ彼のスマホで購入記録を見ただけで、まだ開けていなかった。

優花はそのことを知っているかのようだった。

彼女はそのパジャマを受け取ると、私を長い間見つめていた。

「柚乃、後から新しい物を買って返すからね」

彼女はその服を手放す選択などしなかった。

この日の夜、ちょうど私と蒼大が付き合って五年目になる。

彼は一カ月前に、レストランを予約していた。テーブルには、私が一番好きなイチゴのケーキが並んだ。彼は今夜は優花のことは忘れて、私と一緒にいると約束していた。

キャンドルに火を灯した瞬間、彼のスマホが鳴り出した。

すると優花の泣き声がスマホ越しに聞こえてきた。

「蒼大、あの人がまた脅迫するメッセージを送ってきたの。

今、柚乃と一緒にいるのは分かってる。

だけど、私、一人でいるのは本当に怖くて……

帰ってきてくれない?」

優花はこの日が一体どんな日なのかよく分かっているはずだ。それなのに、私たちがキャンドルに火を灯した瞬間、私の彼氏を呼び出そうとしている。

すると蒼大はすぐに立ち上がった。

彼はケーキを一切れ私に切り分けると、私の目の前に置いた。

「30分待ってて。

彼女が無事なのを確認してから戻ってくる」

そして私は夕方からレストランの営業終了時間までここにいた。

キャンドルは全て燃え尽き、ケーキの生クリームもすっかり柔らかく溶けてしまった。そのケーキを私は一口も食べていない。

結局、蒼大も戻ってこなかった。

夜中過ぎ、私は一人で家に帰った。

主寝室の扉はかすかに開いていた。

優花は蒼大が5周年記念の贈り物に買ってくれたパジャマを着て、私が蒼大と一緒に3年間寝たベッドに座っている。

蒼大は彼女の後ろに立ち、タオルで彼女の髪の毛を拭いてあげていた。その一つ一つの動作が、まるで壊れ物でも扱うかのように丁寧だった。

優花は小声で言った。

「今日は二人の記念日だって分かっていたのに、あなたを呼び戻しちゃって……

戻って柚乃に付き添ってあげて」

そのような言葉を口にしたというのに、すぐに後悔したようにまた蒼大の手を掴んだ。

「でも……やっぱり今夜はここにいてくれない?

あなたが彼女のところに戻るのを想像しただけで、あの婚約パーティーでの悪夢が蘇ってくるの」

蒼大は暫くの間黙っていてから、彼女の手を握り返した。

「あの日の夜は演技なんかじゃなかったんだ。

君を選んだあの瞬間から、俺は貸し出された彼氏ではなかったんだよ」

優花の目から涙がこぼれた。

「じゃあ、柚乃はどうするの?」

蒼大は暫くの間答えなかった。

そして最後に、彼はため息をついた。

「柚乃は優花よりも強いから。

彼女ならきっと理解してくれる」

私が優花よりも強いから、だから主寝室を優花に譲っていいと?

私は強い人間だから、付き合って5周年目の大切な日を柚乃に譲っても、5年間も愛していた彼氏を彼女にあげてもいいというのか?

優花はもう蒼大に私のもとに戻れと言うことはなく、私も主寝室のドアを開けることはなかった。

私はリビングに戻ると、その夜3年の常駐プロジェクトの契約書にサインをした。

それから資料を開き、蒼大と柚乃を緊急連絡先の欄から削除した。

あの二人が私を主寝室から追い出した時、私も自分の気持ちに区切りをつけることに決めた。

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