私の人生にあなたはいらない第3話
この話は約1579字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。
優花の両親は娘が蒼大と肉体関係を持ったことを知ると、強制的に彼女を家に連れ戻した。
優花はそれに同意し、泣きながら言った。
「もうこれ以上柚乃を傷つけるなんてできない」
蒼大は彼女を引き留めた。
その日の夜、ウエディングプランナーから電話を受けた。
彼女の口調はかなり焦っていた。
「緑川様、佐伯様が突然、以前お客様が予約された式場を使われるとおっしゃってきました。
それにお二人の名前も、佐伯蒼大様と吉永優花様に変わっています。
お二人はご相談されたのでしょうか?」
三か月前、蒼大は人気のある式場は予約が難しいと言ってきた。プロポーズはされていなかったが、私たちが気に入ったウエディングプランをすでに決めてしまった。
白のチューリップに、入場曲、クリスタルを飾った綺麗な花のアーチ。そのどれもが、全て私自ら選んだものだった。
彼はその時、私を抱きしめて言った。
「来年の5月、君をこの世で一番幸せな花嫁にしてあげるからね」
電話を受けて、私がホテルに急いだ時には会場の明りはすでについていた。
会場の入り口に書いてある名前は、本当に緑川柚乃から吉永優花に変わっている。
蒼大と優花も私に気付いた。
蒼大はプロポーズをするのは取り消さずに、私の前まで来ると、小声で説明した。
「会場を先にちょっと優花に一晩貸したくてさ。
ご両親が俺が責任をとらないんじゃないかって疑ってて、彼女を実家に連れ戻そうとするんだ。
君との式は必ず挙げるから。
来年、君と計画通りにするよ」
私はあの自分で選んだ花のアーチを見つめ、突然滑稽に思えてきた。
私が5年も楽しみに待っていた未来は、彼にとって、もう一度コピーして来年またペーストすればいいような簡単なものだったのか。
優花の両親が会場に駆けつけた時、蒼大は彼らの目の前で片膝をついた。
そして指輪を取り出した。
私はそれが、また私が選んだ指輪を借りたものだと思っていた。
ライトに照らされてよく見てみると、それは優花のためにオーダーメイドされたものだと分かった。
内側には彼女の名前が刻印され、サイズも彼女のものだ。
蒼大は私たちの結婚プランを借りただけでなく、さっさと事前に優花にこの世でたった一つしかない指輪を用意していた。
優花はすぐに手をさし出すことはなく、涙を流して尋ねた。
「これって、ただお父さんたちの前で見せる演技?それとも、本当に私と結婚してくれるの?」
蒼大は顔をあげて彼女を見つめた。
「本気だよ。
君と結婚する」
優花は私のほうへ顔を向けた。
優花は自分が今立っている場所は、私のものであることも、これから行われる式も本来私のものだと知っている。そして目の前にいるのは私が5年間も愛した男だということも。
しかし、暫くの沈黙の後、優花は左手を前にさし出した。
「柚乃、ごめん。
私、もう二度と誰かに捨てられたくないの」
そして蒼大は指輪を優花の薬指にはめた。
優花はその手を握り、指輪を返そうとはしなかった。
蒼大が立ち上がり、彼女にキスをした瞬間、優花は少し体をこわばらせていたが、最後には彼の襟元を掴み、目を閉じてキスに応えた。
彼女は本当に罪悪感を抱いていた。
でも、蒼大が欲しいというのも本当だった。
私はあの二人の邪魔をすることはなく、ただウエディングプランナーを探しに行った。
彼女の前で、私が計画した結婚式の全ての流れとプランを取り消した。
「さあ、これでこの後の式に誰の名前を書いたとしても、私には関係ないことですから」
その日の夜、私は必要書類とパソコン、そしてほとんどの荷物を持って出ていった。
そして、仕事の責任者に連絡し、常駐プロジェクト開始を早めてもらえないか尋ねた。
蒼大は、まずは私との式を借りて、いつでも離れるであろう優花を慰めて落ち着かせようと考えていた。
しかし彼は知らない。
私はすでに優花とすり替えられてしまった自分の未来を、あの場に残してきたということを。
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