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私が去ったあと、クズ社長は狂うほど後悔した第2話

この話は約1635字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

「謝るだけでは、誠意が足りないな」

彼はそこで言葉を切り、一語一語、はっきりと言った。

「美咲の靴を、きれいに拭け」

私は蓮を見つめた。

その顔に、ほんの少しでも冗談の気配がないか探した。

なかった。

そこにあるのは、冷たさと嫌悪だけだった。

私は笑った。

蓮、本当に容赦がないのね。

私は手を伸ばし、水滴と芝の切れ端がついた美咲のハイヒールを拾い上げた。

美咲が勝ち誇ったように見つめる中、私は無表情のまま、ティッシュで靴の表面を少しずつ拭いていった。

「蓮、もういいよ。綾香さんも、わざとじゃなかったんだから……」

美咲がいかにも善人ぶった口調で言った。

けれど蓮は彼女を横抱きにすると、振り返りもせずに立ち去った。

冷たい命令だけを残して。

「夜が明けるまで、ここで跪かせておけ。自分のしたことをよく反省させろ」

どれほど跪いていたのか分からない。

私はついに耐えきれなくなり、その場に倒れ込んだ。

再び目を開けた時、そこにいたのは佐藤だった。

「篠原社長、よい知らせです。妊娠されています。すぐ高梨社長にお伝えしてきます」

佐藤は一枚の検査結果を差し出した。

私は妊娠していた。

かつてそれは、私が何よりも望んでいたものだった。

私と蓮の愛の証になるはずだった。

けれど今は、お腹の中に冷たい氷の塊があるようにしか感じられない。

私は思わず、彼に会いに行きたくなった。これを知った時、彼はどんな顔をするのだろう。

喜ぶのか。それとも……疎ましく思うのか。

脳裏に浮かんだのは、美咲にステーキを食べさせていた時の、あの優しい眼差しだった。

そして、冷たい床の上で私を跪かせた、あの非情な姿だった。

私は検査結果を握りしめた。

爪が深く手のひらに食い込んだ。

駄目。言ってはいけない。

この子は、私に残された唯一の逃げ道だ。

彼に握られる新しい弱みになど、絶対にしてはいけない。

「篠原社長」

蓮の秘書である藤堂が、私のオフィスの入口に立っていた。

その表情は複雑だった。

「高梨社長からのお言葉です。本日より、あなたは高梨グループの社長夫人としての立場を失う、と。

これまで社長夫人名義で動いていたすべての権限、プロジェクト、対外的な肩書きは、白石美咲さんへ移されます」

私の手が、かすかに震えた。

彼は盛大な結婚式で、私を正式な妻として迎え入れた。

そして今、用が済んだと言わんばかりに、その立場をあっさり取り上げようとしている。

まるで、古くなった服を片づけるみたいに。

藤堂は言いにくそうに咳払いをして、さらに続けた。

「高梨社長は、これはただ……白石さんをなだめるためだともおっしゃっていました。大人しくしていてほしい、余計なことはするなと。遊びが終われば、すべて元どおりにする。必ず埋め合わせる、と」

埋め合わせ?

私は笑った。

引き出しを開け、中から一通の書類を取り出した。

ずっと前から用意しておいた離婚協議書だった。

私はペンを取り、自分の名前を書いた。

篠原綾香。

筆跡は迷いなく、決然としていた。

「これを彼に渡して」

私は離婚協議書を藤堂の前へ押しやり、自嘲めいた笑みを浮かべた。

「高梨社長に伝えて。芝居を始めた以上、最後まで演じきるのが筋でしょう、って」

三十分後、オフィスの扉が蹴破るような勢いで開いた。

蓮が怒りに満ちた顔で飛び込んできて、その離婚協議書を私のデスクに叩きつけた。

「篠原綾香、ずいぶん勝手なことをしてくれるじゃないか。お前を妻にしたのは俺だ。手放すかどうかを決めるのも俺だ。お前が勝手に降りられる立場だと思うな」

彼の問い詰め方は、まるで出来の悪い冗談だった。

私は何も言わず、彼の手首へ視線を落とした。

そこには、女性が髪を結ぶためのヘアゴムがつけられていた。

そして、私が三日三晩祈り続けてようやく手に入れたお守りのブレスレットは、もうどこにも見当たらなかった。

見て。彼はとっくに、選んでいたのだ。

「高梨社長が白石さんに正式な立場を与えたいのなら、私が署名しておいたほうが都合がいいでしょう?」

私は顔を上げ、静かに彼の怒りを見返した。

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