私が不在の間、60歳の家政婦が息子と寝た第3話
この話は約2128字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。
出発の日、私は何度も念を押した。
遅くならないようにして、みんな早く帰れるようにしてね。
「分かってるって、母さん!」
志信は笑顔でそう言い、私を空港まで見送った。
飛行機の中で、私は着陸後の仕事の予定をもう一度確認し、少しの間だけ目を閉じた。
そして翌朝、まだ空が薄暗い時間に、飛行機は異国の地へと着陸した。
私は荷物受け取り所でスーツケースを待ちながら、スマホの機内モードを解除した。
すると、十数件の着信履歴と、数十件ものメッセージが一気に表示された。
すべて志信からだった。
私は心臓が一気に跳ね上がった。
嫌な予感が頭をよぎった。
荷物を放って、近くの人気のない場所に移動し、急いで志信に電話をかけた。
コール音が一度鳴っただけで、すぐに電話はつながった。
しかし、向こうからは何も聞こえなく、ただ一面の静寂が広がっていた。
もし息子の急ぎ気味な呼吸音が聞こえなければ、電話の向こう側には誰もいないのではないかと思ったほどだった。
しばらくして、彼は震える声で言った。「お母さん……どうしよう……!」
不安でたまらず、私はスマホを握りしめる。
「志信?どうしたの、何があったの?なんでこんなに電話してきたの!?」
まさか、私と一緒に来なかったことを後悔してるんじゃないだろうね?
もしそうなら、帰ったらこの調子に乗ったガキをしっかりと叱ってやる!
「お母さん……僕……その……」
言い淀んだまま、彼はなかなか口を開かない。
私は怒りで胸が煮えくり返り、スマホ越しに電話の向こうに飛び込んで、彼の襟をつかんででも話をさせたくてたまらなかった。
「何だって言うの!?早く言え!私はこれから会議があるんだから!」
このガキ、ほんとに人に迷惑ばっかりかけて!
私はスマホを手に取って時間を確認したが、向こうはまだくぐもった声で話していた。
イライラが募り、叱りつけようとしたその瞬間、突然電話の向こうから聞き覚えのある声が響いた。
「若様!若様、どうしてそんなことをしたんですか!私の顔が……私の顔が立たないじゃないですか!私は……私はもう生きていけません!」
村上さんの絶え間ない泣き声に混じって、息子の声がか細く、後悔の色を帯びて言った。「母さん……僕、村上さんと……一緒のベッドで寝ちゃったんだ…!」
ドン!
私はその場に凍りつき、スマホがまるで熱した鉄の塊のように手のひらに焼き付く。
一瞬、何を考えていたのか全く分からなかった。
ただ、頭が真っ白になった。
「何ですって!?桐島志信(きりしま しのぶ)!もう一度言ってみなさい!」私は信じられず、怒鳴りつけるように叫んだ。
志信は普段から冗談好きだ。
私をからかうこともしょっちゅうだった。
以前は無視していたのに、今になってさらにひどくなって、こんな冗談を言ってくるなんて!
震える手で帰りの航空券を探しながら、スマホ越しに彼の必死な声が続く。
「母さん!本当にどうしてこんなことになったのか分からないんだ!
昨日は友達とちょっと飲みすぎて、その後、自分の部屋に戻って寝ちゃったんだ……
だけど朝起きたら……」
彼は歯を食いしばった。
まだ言いかけたところで、向こうの方からスマホが奪われた。
「奥様!私の立場になってくださいよ!こんな年寄りが……こんなことを……ああ、もう生きていけません!」
「嘘をつくな!僕は何もしてない!」
「何言ってるんですか、若様!あなたが――」
向こうの電話が誤って切れてしまったようだ。
私は考える間もなく、荷物を掴み直し、すぐに搭乗口へと引き返した。
今、心から後悔していた。なぜあの時、思いつきで村上を辞めさせなかったのか。
なぜ息子に家でパーティを開かせることを許可したのか。
こんなことになるなら、あの時強引にでも一緒に連れてくるべきだったのだ。
疲れた目を閉じ、一度深呼吸をしてから、会議の予定をキャンセルした。
すべての仕事は一旦保留にした。
今、最優先すべきはこの問題の解決だ。
その後、志信からは一切連絡がなかった。
私が電話をしても電源が切られている。
最初は焦りと不安で落ち着かなかった。
しかし、知らせを受けた後のショックが少しずつ収まると、私は徐々にいつもの冷静さと落ち着きを取り戻していった。
ふと、手にしたスマホを見つめ、あることを思い出した。
すぐに家の監視カメラを開き、録画を確認する。
映像を見終わると、私は口元をわずかに緩め、深く息を吐いた。
そして、録画を保存し、目に鋭い光が宿る。
私、桐島香織(きりしま かおり)が一番嫌うのは、こういうごまかしの手口だ!
私にこんなことをさせるなら、思いっきり付き合ってやるわ!
帰宅すると、家の前には見覚えのあるボロボロのワゴン車が停まっていた。
それに……
私は目を細め、そのナンバープレートを確認する。
別荘のドアは半開きで、きちんと閉まっていなかった。
中からは怒鳴り声と物音が聞こえてくる。
近所の奥様たちが数人、好奇心に駆られて集まっていた。
いつも一緒にお茶をしている彼女たちは、今は小さなグループに分かれて集まり、口元を押さえて何かを話していた。
皆、顔なじみの人たちだった。
私に気づくと気まずそうに笑い、挨拶をしてきた。
突然、別荘の中からかすかな泣き声が聞こえてきた。
私は顔色を変え、急いで中へと駆け込んだ。
縦書き表示中:本文は右から左へスクロールします(← → キーでも移動できます)
第4話は公式アプリで
当サイトでの試し読みはここまでです。アプリをインストールし、下のアプリ用コードを入力すると、この作品の第4話からそのまま読み進められます。
R97085- 下のボタンから公式アプリをインストールします(無料)。
- アプリを開き、「コードを入力」にこのコードを入れると、この作品が本棚に入ります。
作品ページへ戻る 当サイトに掲載しているのは試し読みの章だけです。