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盲目的な恋は二度としない第2話

この話は約1847字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

すぐにスマホが鳴り、通話ボタンを押すと、陽斗の怒鳴り声が響いた。

「綾香!また何を勝手にしてるんだ!

結婚式を中止?別れるって?お前、自分が何言ってるかわかってるのか!」

電話の向こうで、彼の仲間たちの声も混じった。

「篠原さん、さすがにやりすぎだろ?陽斗はあんなに優しくしてくれてんのに!」

「お前みたいにまともに歩けない女、誰がもらってくれると思ってんだ?陽斗だからこそだろ!他の人ならもう放り出してるよ!」

「結婚式取りやめ?ふざけんなよ、陽斗の面子どうしてくれんだ。今すぐ戻って謝れ!」

私はくしゃくしゃに折れた視力回復の診断書を見つめ、感情のない声で言った。

「――本当に、勝手なのはどっち?」

そして通話を切り、そのまま陽斗の番号をブロックした。

私は陽斗との新居には戻らず、昔暮らしていたアパートへ向かった。

ウェディングドレスを脱ごうとしたそのとき、母からメッセージが届いた。

【綾香、そんなに陽斗くんを愛してたのに……本当にいいの?】

角膜を提供するために、私は家族と決裂した。父は激怒し、結婚式への出席も拒んだ。

母はひそかに私を気遣うしかなかった。母が一番よく知っている、私がどれほど陽斗を愛しているかを。

鏡に映る自分を見つめながら、息を吐いた。

――どうして、人はこんなにも変わってしまうのだろう。

子供のころ、両親は仕事で海外に暮らし、私はいつもひとりだった。

学校で、よくいじめられていた。

教科書を破かれ、水筒に唾を吐かれ、最悪のときは路地裏に追い込まれ、服を引き裂かれ、犬の真似をさせられた。

涙を流したのに、彼らは私のみっともない姿を撮影していた。

そのとき、陽斗が現れた。

彼は少し背が高いだけの、細い少年だった。

目は見えなかったが、まっすぐ立って私の前に腕を広げた。

「彼女をいじめるな!」

同級生たちは笑い飛ばした。「盲目のくせにヒーロー気取りかよ!」

彼らは陽斗を地面に押し倒し、何度も殴った。三本の肋骨が折れた。

それでも彼は泣かずに言い続けた。「綾香、怖くない。僕がいる」

それ以来、彼は毎日遠回りして私と一緒に登校した。

私は暗闇が怖いと知ったら、家からナイトライトを盗み出して鞄に入れ、帰り道で点けてくれた。

――その頃、私は心の中でそう決めていた。陽斗は唯一信じられる「光」だった。

彼が一生暗闇で生きるのを見たくなかった。

だから、自分の角膜を差し出した。

手術後、陽斗は泣きながら私の手を握った。

「綾香、これからは俺が、お前の目になる。

一生大事にする。もう絶対にお前を傷つけない」

八歳の陽斗は、ポケットの中の最後の飴をくれた。

十八歳の陽斗は、目が見えなくても必死に私を守った。

けれど二十七歳の陽斗は、私を「足手まとい」と呼んだ。

――あの約束を覚えていたのは、私だけだった。

彼は私に十年以上も寄り添ってくれ、私は自分の角膜を彼に捧げた。

もう、互いに借りはないよね。

【考えは変わらない】

メッセージを送ってから十分も経たないうちに、母は明日の航空券を手配してくれた。

荷物をまとめようとした瞬間、玄関のチャイムが鳴った。

扉を開けると、息を切らした陽斗が立っていた。

タキシードの胸ポケットにはまだブートニア。目の縁は赤く腫れ、肩で大きく息をしている。

私を見た瞬間、彼の瞳にふと期待の光が宿った。

「綾香、もう怒るなよ。今日は俺たちの結婚式だぞ。

まさか、もう俺と結婚したくないのか?みんな待ってる。話はあとでゆっくりすればいいだろ?」

そう言いながら、彼は私の手に触れようとした。

私は目を伏せたが、彼の薬指にある結婚指輪が、私のものとは違うデザインだと目に入った。

私は嘲るように笑い、一歩下がった。陽斗の手が宙に止まったまま固まる。

「何なんだよ、今日一日でどうした?

ドレスを替えたときには、涙で目が潤んでいたじゃない?急に態度変えるなよ。

俺が甘やかしすぎたか?結婚式まで茶番にする気か?」

そんな言葉に、胸が苦しくなった。

――私は夢を見ていた。幼いころから共に歩いた十数年。彼を信じて、愛して、何もかも捧げた。彼もまた、私の一生の支えとなるだろう。

今になってやっとわかった。そのすべてが、私の幻想だった。

彼にとって私は、ただの「足手まとい」だった。真実の愛に辿りつくための、邪魔な存在。

私は息を整え、淡々と言った。「私は本気よ。結婚式は中止。終わりにしたいの」

陽斗の瞳が暗く染まり、怒りが閃いた。

「綾香、いい加減に――」

ちょうどその時、彼のスマホが鳴った。

「陽斗!早く戻ってきてください!依衣さんが――自殺未遂です!」

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