燃える心第2話
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この家では、私の部屋に鍵をかけることは許されていない。
なぜなら、私には一切のプライバシーが認められていないからだ。
彼女はベッドの横に立ち、冷たく怨念めいた視線で私をじっと見下ろした。
そして、突然笑みを浮かべた。
「お姉ちゃん、今度はあなたが彼にいじめられて、彼と悲劇の恋をする番よ」
事前に誰かに話を通していたのかもしれない。
翌日、私が鞄を提げて十三組の教室に入った瞬間、本が一冊飛んできた。
私は頭を少し傾け、ひらりと避けた。
その直後、前方から気だるげな声が響いた。
「誰が避けていいって言った?」
秋津は椅子にだらしなくもたれ、脚を机に組み上げながら、傲慢な目で私を見ていた。
「まあいい、チャンスをやろう。
その本を拾って、恭しく俺に差し出せ。俺がもう一度投げつけてやる。それで今日の午前中は許してやる」
それを聞くと、私のまつげが小さく震えた。
そして、しゃがんで本を拾い、ゆっくりと彼の前まで歩いていく。
彼の周囲に立つ取り巻きたちは、蔑みと悪意を隠そうともせず、私を見下ろしていた。
私は笑った。
「こうやって投げつけるのかしら?」
言うが早いか、本のもっとも硬い背表紙を、思い切り彼の鼻筋に叩きつけた。
「ぐあっ!」
秋津は椅子から跳ね上がった。
鼻血を流した彼は、私を睨みつけ、陰険な笑みを浮かべた。
「このアマ!俺に手を出すなんて、ただじゃ済まねえぞ」
取り巻きたちが険しい顔をして、今にも私を囲もうとした。
ちょうどその時、教師が教室へ入ってきた。
「こちらは今日から、うちのクラスに転入してきた陸川安美(りくかわ あみ)さん。入学試験では二位を収めた。
みんな、これから仲良くして、陸川さんを見習うように」
「ほう、優等生か」
秋津は冷笑した。
「先生、ご安心を。俺たち、必ず陸川さんと、仲良く、やっていきますから」
彼が私をいじめる手口は、ありふれた小説に書かれているようなものばかりだった。
椅子に画鋲を仕掛けたり、机の引き出しに死んだ動物を放り込んだりした。
私は画鋲を抜き取り、無表情で死骸を掴んでそのまま秋津の懐へ放り投げた。
逆に彼の顔色が青ざめる始末だった。
そんな小細工が通用しないとわかると、彼はストレートな暴力に切り替えた。
その日の放課後、私は数学の問題集を開くと、中に紙片が挟まっていた。
「放課後、彼らはあなたを器具室に連れて行くつもりよ」
数秒間、私はその紙片を見つめた後、やがて丸めてゴミ箱に投げ捨てた。
一体誰が書いたのか。
前世で聞いた話では、十三組は全員が成績の悪い劣等生だとされていた。
だが今世で実際に観察してみると、それは違っていた。
十三組の生徒は二つの派閥に分かれていた。
一つは、秋津とその取り巻きによる、好き放題に暴れる派閥だ。
そして残りは、貧しい家の出身や、様々な事情を抱えるごく普通の生徒たちだ。
彼らの生存と学習の余地は、秋津とその取り巻きに搾り取られ、ほとんど残されていなかった。
私は視線を教室に走らせ、まばらに残っている数人を眺めた。
やがて、秋津の斜め後ろに座っていた浅草響(あさくさ ひびき)という女生徒が、慌てたように目を逸らした。
私はすべてを悟りながら、知らぬふりをして鞄を持ち上げ、席を立った。
「ねえ……陸川さん」
彼女は長く迷った末に、ようやく私を呼び止めた。
「私たち、一緒に帰ろうか」
彼女の隣にいた数人の女生徒も、勇気を振り絞ったように私を見つめていた。
私は沈黙のまま、その怯えながらも勇敢な瞳としばし視線を交わした。
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