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燃える心第3話

この話は約1447字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。

私はふっと唇を引き裂くように笑った。

「大丈夫、あなたたちを巻き込みたくない」

教室を出た途端、私は秋津とその取り巻きに無理やり、校庭の隅にある器具室へ押し込まれた。

そこに、あまりにも見慣れた顔があった。

綺星だ。

秋津は彼女の横に立ち、顎で私を指した。

「お前の家に恩があるから、威張り散らしてる姉ってのは、こいつだろ?」

「うん」

綺星は淡々と答えた。

「でも、あんまり彼女をいじめすぎないで。私、彼女みたいにはなりたくないから」

その姿勢は、ひどく強情で気高く見えた。前世で泣きながら秋津に別れないでと縋った彼女とは、まるで別人のようだった。

生まれ変わって、彼女にも分かった。秋津のような下衆は、相手にされないほど逆に執着するのだ。

案の定、彼女の冷淡な態度に、秋津はますます心をくすぐられたようだった。

綺星は深呼吸し、あたかも諌めるふりをして言った。

「それに、お姉ちゃんは何年もバイオリンを習ってきたの。手は一番大事なものだから」

「大事なもんほど、壊したときに面白えだろ?」

秋津は鼻で笑い、私を押さえつけている二人に手を振った。

「今日ここで、こいつの指を一本ずつへし折れ。二度とバイオリンなんか弾けないようにな」

その言葉に、綺星の目には抑えきれない喜色が溢れ出ていた。

彼らは強引に私を段違い平行棒のそばに押しつけ、床に転がっていた重たいダンベルを持ち上げた。

今まさに振り下ろされようとした瞬間、私は口を開いた。

「馬鹿ね」

「何だと?!」

私は微笑みを浮かべて、秋津を見据えた。

「もし私があなただったら、周防家の株式配分が決まる大事な時期に、学校でこんな愚かな騒ぎは起こさないけどね」

彼の瞳孔が一瞬にして収縮した。

私は心の中で静かにカウントした。

3、2、1……

器具室のドアが乱暴に蹴破られた。

だが、現れたのは私が手配した人ではなかった。

私は目を向け、愕然としてドア口に立っている数人の女子を見つめた。

先ほど教室で、勇気を振り絞って投げかけた一言が、もう彼女たちにできる精一杯のことだと思っていた。

しかし、そうではなかった。

響が深呼吸すると、隣の子の腕を掴み、震える手で古びたガラケーを掲げた。

その声は震えていたが、目は固い決意に満ちていた。

「警察に通報しました」

沈黙が数秒間流れた。

そして、秋津が堪えきれず笑い声を漏らした。

「お前……浅草響って言う名だろ?どうやら前のお仕置きが足りなかったみたいだな。正義の味方気取りか?

警察?お前、俺の身分知らねえのか?警察なんかが俺に手を出せると思うのか?」

その冷たい嘲笑に晒され、響の顔は血の気を失って真っ青になった。

だがその時、外からさらに威厳ある女の声が響いた。

「警察が無理でも、私ならどうかしら?」

深い藍色のシルクのワンピースをまとった女が、ハイヒールを鳴らしながら中へ入ってきた。

「秋津。家の大事な時期に余計な問題を起こすなって、私、言わなかった?」

彼女を見た瞬間、秋津の傲慢な態度は一気に消え失せた。

「……姉さん」

周防彩錦(すおう あかね)は腕を組み、冷たい表情で弟を見下ろした。

「彼女を放しなさい。家に帰るわよ」

秋津は歯を食いしばり、不満を押し殺すように言った。

「姉さん、だってこれはアイツが先に……」

「理由なんてどうでもいいの。物事を行うには、手段をわきまえるべきよ。そしてタイミングを見極めること。

今ここであなたを止めたけれど、将来は必ずしもそうとは限らないわ」

そうだ。彩錦は私が匿名の手紙で呼び寄せたのだ。

先月、周防家の大旦那様が亡くなったばかりだった。

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