潮汐の瞳第2話
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翌朝、美羽が起きた時、ソファにはもう悠斗の姿はなかった。
「もう起きたの?それなら、髪を結んであげようか」
浴室から湯気をまとって出てきた悠斗は、二日酔いの疲れを残しながらも、昨夜の出来事は覚えていないようだった。
鏡に映る、自分の髪を丁寧に梳かす男を見つめながら、美羽は探るように口を開いた。
「悠斗、私、また髪を短くしようかなって思ってるんだけど、どう思う?」
「うっ、痛い」
「ごめん、つい力が入っちゃった。痛かった?どうして急に短くしたいんだい?長い髪の方が似合ってると思うけど」
悠斗は手に取った長い髪を優しく見下ろしながら、穏やかに諭した。
「今切ると、結婚式の時のヘアスタイルが制限されちゃうよ。最近、僕のケアが足りなかったのかな?それとも……もう僕は必要ないってこと?」
「いいえ、ただ聞いてみただけ。切ってほしくないなら、このままでいいわ」
美羽は鏡に映る腰まで届く長髪を見つめながら、心が冷めていくような感覚を覚えた。
出勤前の悠斗は、まるで手品のように耳元に花を添え、満足げに眺めてから、
「今日の花、よく似合ってる」
「そうだ、今日は両親を呼んで結婚式の話をするんだ。急げば、あなたのお姉さんの結婚式と同時に挙げられるかもね」
ドアが閉まった後、無理に笑顔を作っていた美羽は、すぐに耳元の花と髪飾りを引き抜き、ゴミ箱に投げ捨てた
同時に結婚式?それなら、悠斗は心の中で姉を花嫁だと思い込んでいるんだろう。
なぜ悠斗の目には、いつも自分が花音という影に覆われているのか。
悠斗のプロポーズは派手だったため、美羽が大学に行くと、学生たちから祝福の声が次々と飛び交った。
「清水先生、いつ結婚祝いのお菓子を配ってくれるんですか?」
「先生!僕はプリンがいいです」
「結婚式に参加してもいいですか?ご祝儀出すから」
二十歳の学生たちの目は、純粋で無邪気だった。悠斗が愛しているのは自分ではなく、結婚したいのも自分ではない――そんな事実をどう伝えればいいのか。
昼食時、悠斗が両家の両親を招いて結婚式の話をしようとレストランに向かう。会食の席で、美羽は衝撃的な光景を目にした。個室の中央に設置されたディスプレイには、南アフリカにいる姉が恋人レーメンと共にビデオ通話で参加していたのだ。
美羽はドアの前で立ち尽くし、悠斗の視線は一度も花音から離れることがない。
レーメンに抱かれる花音は、悠斗の視線を感じて眉をひそめ、レーメンは不快そうに睨み返した。
悠斗はようやく視線をそらし、ドアのそばに立っている彼女の存在に気づいた。
「美羽!こっちに座って」
両親に挨拶をした後、美羽は悠斗の隣に座った、結婚式の打ち合わせを聞き流していた。
「それなら、二つの結婚式を同時に挙げるのはどうだろう?会場費も抑えられるし、より意味のある式になると思う」
悠斗の提案は、すぐに全員から賛同を得た。
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