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渡り鳥に、遅すぎた愛は届かない第2話

この話は約1992字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

翌日の午後、愛莉は休暇を取り、その人物とカフェで会った。

相手の目的は明確で、彼女を引き抜くためだった。いや、引き抜くというより、もともと彼女自身が辞めるつもりだったのだが。

愛莉は相手が提示した条件に納得し、双方が合意に至ると、相手はからかうように言った。

「木崎さん、もし坂井社長が、『彼女』が俺の会社に来たと知ったら、お二人の関係も危うくなるんじゃないですか?」

愛莉は一瞬固まった。彼女、ね……もうすぐ、そうではなくなる。

愛莉が答える前に、スマートフォンがピコンと鳴り、陽平からのメッセージが目に飛び込んできた。

【カフェで会ってる男は、誰だ?】

愛莉は瞳孔が収縮し、無意識に周りを見回した。

すぐにまた陽平からメッセージが届いた。

【わざわざ午後休を取ったのは、俺の知らない男とカフェで会うためか?】

愛莉は怒りに任せて文字を打ち込んだ。

【私のこと、つけてるの?】

【いや、友達がカフェにいる君を見かけたから、聞いたまでだ】

愛莉はほっと息をつき、適当な理由で彼をごまかした。

【ただの高校の同級生よ。こっちに出張で来てるから、会ってただけ】

陽平からの返信は早かった。

【そうか。なら、今夜は俺も一緒に、そいつにご馳走してやろう】

もし以前の陽平がこんな風にヤキモチを焼いてくれたなら、愛莉はどんなに喜んだことだろう。しかし今は、ただただ意味が分からないと感じるだけだ。

【いいわ。彼は今夜もう帰るから。ただ昔話をしてただけよ】

【そうか。君には彼氏がいるんだ。同級生だとしても、距離は保つべきだろう。周りの人間は、君たちがただの高校の同級生だなんて知らないんだからな】

その言葉に、愛莉は呆れて白目を剥いた。

自分こそが浮気しているくせに、よくもまあ、彼女の正常な付き合いに口を出せるものだ!

その夜、愛莉は新しいオファーを得たお祝いに、親友と食事の約束をした。

すき焼きを食べた後、二人はバーでもう一杯飲むことにした。

久しぶりの再会だったので、ゆっくり話せるように静かなバーを選んだ。

店に入るなり、愛莉は陽平の背中を見つけた。

彼は入り口に背を向け、角のボックス席に座っていた。周りには数人の同年代の男たちと、二、三人の女性がいた。

愛莉は一瞬立ち止まり、親友に店を変えようと言いかけた時、感嘆の声が聞こえてきた。

「陽平、ますます羽振りが良くなったな。俺たちの中じゃ、一番の成功者だよ!」

周りの男たちも、羨望の混じった笑みを浮かべて頷いた。

「成功した男の陰には、必ず支えてくれる女がいるって言うけど、愛莉さんは本当に幸運の女神だな!」

陽平は彼女に背を向けているため表情は見えないが、その声はどこか得意げだった。

「『内助の功』って言うだろ?女房のおかげで出世したからには、大金で報いてやらねえとな」

一同がまたどっと笑った。

愛莉は少し離れた場所でそれを聞きながら、胸がひどく詰まるのを感じた。

九年。陽平と共に過ごした九年間、彼が苦労して坂井グループを今の地位にまで築き上げるのを、ずっと支えてきた。その結果が、「内助の功」の一言で片付けられた。

まるで、それまでの努力や犠牲が金銭で清算できるかのように、陽平は恩着せがましく「大金で報いる」と言い放った。だが実際には、彼女に金を与えるどころか、裏では数えきれないほどの愛人を作っていた。

まさに「『内助の功』には、愛人二人で報いる」ということだ。

愛莉は胸に苦いものが込み上げ、親友の手を引いてその場を去った。

その夜も、陽平は帰ってこなかった。

翌日、九時少し前になって、陽平は慌てて会社に駆け込んできた。手には、小さなイチゴのショートケーキを提げていた。

彼は愛莉をオフィスに呼び、手にしたケーキを差し出した。

「君のために、わざわざ買ってきたんだ。ここのケーキ、好きだろ?」

彼は服を着替えていたが、その全身からは、甘ったるい香水の香りが微かに漂っていた。

愛莉は嫌悪に眉をひそめ、何か仕事の用かと尋ねた。

彼女がケーキを受け取らないのを見て、陽平は愛莉の両肩に手を置いた。

「愛莉、昨夜俺が帰らなかったのは、君の昨日の態度に腹が立ったからだ。それで友達と飲みに行って、飲みすぎて、ホテルでどうにか一晩やり過ごした。だから、君は……」

愛莉は、平然と彼の言葉を遮った。

「分かったわ。説明は要らない。何も気にしてないから」

陽平の顔から真剣な表情が消えぬまま、不意に遮られた言葉が、宙ぶらりんになった。

愛莉は陽平の手を振り払った。

「もし坂井社長に他に御用がないのでしたら、仕事に戻ります」

陽平は彼女のその冷静でよそよそしい様子を見て、苛立ち紛れに眉をひそめて口を開いた。

「毎回毎回、そういう態度を取るのはやめてくれないか。俺が説明してるんだから、ちゃんと聞けないのか。聞く耳も持たずに、気にしてないと言いながら、不機嫌な顔ばかりして。本当にヤキモチを焼いてるなら、直接そう言えばいいだろ?」

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