流産したら元夫がライブ配信で追ってきたけど、今さら遅い第2話
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同じプレゼントを買ったことへの罪悪感でもあったのか、亮介は「一緒に会社へ行こう」と提案してきた。
ちょうど体調も優れず、車を運転する気になれなかった私は、それを断らなかった。
駐車場に降りると、亮介は自分の車の前で腕を組み、難しい顔をしている。
――そういえば、いつからだろう。
彼が、私が彼の車に乗るのを嫌がるようになったのは。
助手席に座ることすら許されず、「自分の車を買え」と半ば強制されたのは。
思えば、昔はよく彼の「助手席の所有権」を巡って言い争いになったものだ。まるで神経をすり減らすように。
――彼は、きっとそんな私にうんざりしていたのだろう。
でも今。
亮介の車の助手席には、びっしりと猫グッズが並べられていた。
猫耳クッション、猫のぬいぐるみ、猫のステッカー……至るところに、かわいらしい装飾が施されている。
そして、シートそのものが改造され、小柄な女の子が座りやすい仕様に変わっていた。
……小野寺美優のために。
亮介は、私の視線を感じ取ったのか、一瞬だけ戸惑った顔をした後、何も言わずに車のドアを開け、ぬいぐるみを後部座席へ押し込む。
私はその様子を見ながら、静かに口を開いた。
「……やっぱり、自分で行くわ」
最後の猫のぬいぐるみを後ろに投げ入れながら、亮介は言う。
「いいから乗れよ。一緒に行こう。美優はこういうのが好きで、つい集めちまったんだ。気にするな」
私は再び助手席を見た。
車のデザインにまったく馴染んでいない、違和感しかないピンクのシート。
どうしても、座る気にはなれなかった。
「……やっぱり無理」
そう呟き、私は自分の車のドアに手をかけた。
しかし、亮介がすかさず動いた。
私の腕よりも速く、運転席に滑り込むと、ハンドルを握りながら言う。
「俺が運転するから、一緒に行こう」
私は彼の顔をじっと見た。
彼の目が一瞬、動揺したように見えた。
やっぱり分かってたんだな。あんな助手席にしておくのが、どれだけおかしいかって。
亮介は何か言いたげだったが、私はそれを遮るように促した。
「……遅刻する。早く出して」
彼は口を閉じ、唇を噛みしめながらエンジンをかける。
信号待ちの間、車内に特定の着信音が響いた。
――美優の専用コール。
通話が繋がると、甘ったるい声が聞こえてきた。
「りょうすけおにぃ……お腹痛いの……昨日のごはんが当たったのかなぁ……病院連れてってほしいな……ねぇ?おにぃがいちばん優しいんだもん……」
――耳にまとわりつくような、作り込まれた甘え声。
亮介は、一言も返さずに通話を切った。
だが、次の瞬間。
ハンドルを切ると、そのまま車を路肩に停め、助手席のシートベルトを外した。
「社員の具合が悪い。俺が行ってくる」
それだけ言い残し、私を車から降ろすよう促す。
「もうすぐ会社だろ?あとは歩いて行け」
私はまだドアすら閉めていないうちに、亮介はすでにアクセルを踏み込んでいた。
――そのまま、一度も振り返ることなく、走り去っていった。
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