流産したら元夫がライブ配信で追ってきたけど、今さら遅い第1話
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結婚して四年、一度もSNSを更新したことのない亮介が、珍しく投稿をした。
「本当に食いしん坊な子猫ちゃんだ」
添えられた写真には、ピンクの猫耳カチューシャをつけた女の子が、料理を食べている姿。辛さに顔を真っ赤にし、舌を出している。
――彼の会社の新人配信者、美優だった。
投稿からものの数十秒後、共通の知人がコメントをつけた。
「亮介、アカウント切り替え忘れてるぞ!」
その直後、亮介の投稿は消えた。だが、すぐに美優のSNSに同じ内容がアップされた。
......そして、スマホが鳴った。亮介からの電話だ。
以前の私なら、すぐにスクショを撮って証拠を押さえ、先手を打って問い詰めただろう。どうせ大喧嘩になるのは目に見えている。
でも今回は、スマホをじっと眺めるだけで、一度も取らずにいた。
呼び出し音が切れ、部屋には静寂だけが残る。
* * *
結婚して四年、一度もSNSを更新したことのない桐島亮介(きりしまりょうすけ)が、珍しく投稿をした。
「本当に食いしん坊な子猫ちゃんだ」
添えられた写真には、ピンクの猫耳カチューシャをつけた女の子が、料理を食べている姿。辛さに顔を真っ赤にし、舌を出している。
――彼の会社の新人配信者、小野寺美優(おのでらみゆ)だった。
投稿からものの数十秒後、共通の知人がコメントをつけた。
「亮介、アカウント切り替え忘れてるぞ!」
その直後、亮介の投稿は消えた。だが、すぐに美優のSNSに同じ内容がアップされた。
......そして、スマホが鳴った。亮介からの電話だ。
以前の私なら、すぐにスクショを撮って証拠を押さえ、先手を打って問い詰めただろう。どうせ大喧嘩になるのは目に見えている。
でも今回は、スマホをじっと眺めるだけで、一度も取らずにいた。
呼び出し音が切れ、部屋には静寂だけが残る。
亮介が帰宅した頃には、私はソファに体を沈め、半分眠りかけていた。
彼は無言でコートを脱ぎ、靴を履き替える。
「……なんで電話に出なかった?」
めったに探りを入れるようなことはしない彼が、こういう聞き方をする時は、少しは後ろめたさを感じている証拠だった。
「うっかり寝ちゃって、気づかなかった」
顔も上げず、適当に流す。
「残業が入って、帰るのが遅くなった。無理して待たなくていいんだぞ。そんなに自分を卑屈にする必要はない」
以前なら、「亮介を愛してるから!」と全力で訴えただろう。
でも、もうそんなエネルギーすら残っていない。
彼が差し出したのは、手のひらほどのベルベットの箱だった。
「開けてみろ」
今日は彼の会社の上場記念日だった。
そのお祝いに、私はいつも通り定時で仕事を切り上げ、買い物をして、彼のために料理を作って待っていた。
――なのに。
待てど暮らせど、約束の時間に帰ってこない。
彼の体に染み付いた料理の匂いを、私は気づかないふりをして、箱を受け取ると、適当にテーブルへと置いた。
これと同じ箱は、前にも見たことがある。
彼が私の誕生日を忘れた時、埋め合わせのつもりで差し出したものと、まったく同じ。
亮介はじっとその箱を見つめ、少しだけ眉を寄せると、低い声で言った。
「遥、お前、またワガママ言うつもりか?」
贈り物で不機嫌をなだめるのが、彼のいつものやり方だった。
プレゼントを受け取れば、ケンカはなかったことになる。何もかも、なかったことにするための道具。
でも、もう私はその手に乗るつもりはない。
当然、彼は気に入らないだろう。
「つけてやるよ」
有無を言わせず、箱を開け、手首にブレスレットを巻こうとしたその時。
――彼の動きが止まった。
私の手首には、まったく同じものがすでにあった。
「……もういい、置いとくよ。早く寝ろ。明日も仕事だろ」
私は手を引っ込め、ソファから立ち上がる。
「改めて選び直させようか?」
亮介の申し出に、私は冷たく答えた。
「いらない」
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