汚れた愛の断捨離第3話
この話は約1421字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。
凌雅が美玲と出会ったのは、確かに私がきっかけだった。
5年前、私は音楽大学で最も才能があると評されていた学生だった。そして、美玲は私と同じ教授のもとで学ぶ後輩だった。
美玲は幼い頃から自閉症を抱えており、外の世界と交流することはほとんどなかった。いつも自分の殻に閉じこもっていた彼女。
でも、その孤独さが逆に彼女の音楽の才能を開花させたのだ。
教授や仲間たちは冗談交じりに私たちを「音大の天才姉妹」と呼んでいた。
美玲は私より1年後輩で、その華奢で儚げな容姿と、いつもおどおどしている様子が「小さな白い花」みたいだった。
彼女が初めて私に向かって「琴音お姉さん」と呼んだとき、その一言で彼女が愛おしくて仕方なくなり、まるで本当の妹のように大切に思うようになった。
それ以来、私は彼女をコンクールや演奏会に連れて行き、衣食住の面倒まで見た。
彼女に似合いそうな服を見つければ迷わずプレゼントし、凌雅とレストランで新しい美味しい料理を見つけたときも、必ず彼女の分を持ち帰ることが当たり前になっていた。
その様子を見た凌雅は、冗談めかして言ったものだ。
「琴音、俺嫉妬しそうだよ。お前、あの後輩に俺以上に尽くしてない?」
あの頃、私たちはまだ結婚していなかった。私は笑いながらこう返した。
「だって、美玲は本当に可愛くて世間知らずなんだもん。まるで小さな子供みたいで、放っておけないのよ」
私は彼女を凌雅に紹介した。彼女が怯えたような小鹿みたいな目をして私を見たとき、その純粋さが胸を打った。
だから私は彼女の頭を優しく撫でながらこう言った。
「これからは、私だけじゃなくて、お兄さんもできるよ」
......けれど私は、自分で悪魔を家に招き入れたことに全く気づいていなかった。
結局、一番愚かだったのは私自身だった。
その夜、私は久しぶりに心が晴れ、ぐっすり眠ることができた。
翌日、凌雅に起こされたとき、もう昼近くだった。
申し訳なさからなのか、リビングはすっかり片付いており、空気を清浄にするために香水まで振りかけられていた。
昨夜の辛い料理の刺激的な匂いはほとんど消え、代わりに甘くフルーティーな香りが漂っていた。
この香り、よく知っている。
それは私が以前、美玲にプレゼントした香水の匂いだ。
彼女が一番好きだと言っていた、少女らしい甘い香り――
その瞬間、私の中の良い気分は一気に消えた。
私はクローゼットからお気に入りのピンクのワンピースを取り出した。
2年前に買ったもので、一度も袖を通していなかった。それは凌雅が私がスカートを履くのを嫌がっていたからだ。
でも今、私はそれを着て鏡の前に立ち、自分の義足をじっと見つめた。胸の奥がチクリと痛む。
凌雅がそっと肩を抱き、優しい声で私を慰めた。
でも私はその手をやんわりかわし、体をそらして避けた。
宙に浮いたままの彼の手を無視して、私は淡々と言った。
「行きましょう」
車を運転する凌雅の隣で、私は助手席に座っていた。
彼の車に乗るのは、もう半年ぶりくらいだった。
かつては清潔で洗練されていた車内が、今ではすっかり私の知らないものに変わっていた。
バックミラーにはふわふわした毛のボールがぶら下がり、首元のクッションには可愛らしいウサギのデザイン。
そういえば、ウサギは美玲の干支だった。
私は思わず自嘲気味に小さく笑った。
美玲は確かにウサギのように愛される存在だ。それに比べて私は、断ち切られた足と壊れた結婚生活に疲れ果て、人間らしさをすっかり失っている。
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