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来世は家に帰らない第1話

この話は約2468字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

十五歳のあの年、両親は、ようやく山奥の人里離れた村から私を見つけ出した。

傷だらけで、ろくに育ってもいない私を見て、二人は誓った。

私が奪われてきたものを、全部埋め合わせると。

母は言った。私は白川家の宝物だと。そして、雑草みたいに踏まれ、名前すら与えられなかった私に、白川珠希(しらかわ たまき)という名をくれた。

父は言った。どんなに忙しくても毎日帰ってきて、一緒に飯を食おう。家の温かさを、取り戻そうと。

これで私は、やっと幸せになれるのだと信じた。

けれど十年後。

私は、偽の令嬢である妹・白川瑠華(しらかわ るか)が、施しのつもりで与えた、ボロアパートの一室で息絶えた。

その年、息子の達也(たつや)は三歳だった。

犯人は面白がって、助けを呼べる猶予を三度だけくれた。

誰かが私のもとへ来てくれたら、子どもだけは見逃す――そう言って。

一度目、十五年もの間、私を探すのをやめなかった父に電話した。

父は使用人に指示して、瑠華の誕生日パーティーを整えていた。呼び出しに気づくと、眉をひそめて言った。

「珠希、今日は瑠華の誕生日だろ。縁起でもないこと持ち込むな」

二度目、私を宝物扱いすると約束した母に電話した。

母は、甘やかすような目で、瑠華がスマホを奪うのを見ていた。発信者が私だと分かると、嫌悪を隠しもせず、「珠希、嘘をつくなら、もう少し上手にしなさい。そんなに騒ぐなら、来月の仕送りも止めるわよ」

三度目、達也の父親――両親が選び抜いた私の夫に電話した。

彼は会議中だと言い、あとで瑠華へのプレゼントも選ばなきゃならないから、私の遊びに付き合う暇はないと告げた。

それでも、おとなしくしていれば来週は子どもを連れて実家に来ていい、みんなで食事をしよう――そう言った。

腕の中で震える息子に口づけして、私は犯人に懇願した。せめて最後の言葉だけ、残させてくれと。

スマホを受け取り、私は家族のグループに、二つのメッセージを送った。

血にまみれた自分の写真を、一枚。

そして、胸の奥から絞り出した、嘘のない短い言葉。

【私は、もう死ぬ。もし来世があるなら――二度と、私をあの家に連れて帰らないで】

* * *

十五歳のあの年、両親は、ようやく山奥の人里離れた村から私を見つけ出した。

傷だらけで、ろくに育ってもいない私を見て、二人は誓った。

私が奪われてきたものを、全部埋め合わせると。

母は言った。私は白川家の宝物だと。そして、雑草みたいに踏まれ、名前すら与えられなかった私に、白川珠希(しらかわ たまき)という名をくれた。

父は言った。どんなに忙しくても毎日帰ってきて、一緒に飯を食おう。家の温かさを、取り戻そうと。

これで私は、やっと幸せになれるのだと信じた。

けれど十年後。

私は、偽の令嬢である妹・白川瑠華(しらかわ るか)が、施しのつもりで与えた、ボロアパートの一室で息絶えた。

その年、息子の達也(たつや)は三歳だった。

犯人は面白がって、助けを呼べる猶予を三度だけくれた。

誰かが私のもとへ来てくれたら、子どもだけは見逃す――そう言って。

一度目、十五年もの間、私を探すのをやめなかった父に電話した。

父は使用人に指示して、瑠華の誕生日パーティーを整えていた。呼び出しに気づくと、眉をひそめて言った。

「珠希、今日は瑠華の誕生日だろ。縁起でもないこと持ち込むな」

二度目、私を宝物扱いすると約束した母に電話した。

母は、甘やかすような目で、瑠華がスマホを奪うのを見ていた。発信者が私だと分かると、嫌悪を隠しもせず、「珠希、嘘をつくなら、もう少し上手にしなさい。そんなに騒ぐなら、来月の仕送りも止めるわよ」

三度目、達也の父親――両親が選び抜いた私の夫に電話した。

彼は会議中だと言い、あとで瑠華へのプレゼントも選ばなきゃならないから、私の遊びに付き合う暇はないと告げた。

それでも、おとなしくしていれば来週は子どもを連れて実家に来ていい、みんなで食事をしよう――そう言った。

腕の中で震える息子に口づけして、私は犯人に懇願した。せめて最後の言葉だけ、残させてくれと。

スマホを受け取り、私は家族のグループに、二つのメッセージを送った。

血にまみれた自分の写真を、一枚。

そして、胸の奥から絞り出した、嘘のない短い言葉。

【私は、もう死ぬ。もし来世があるなら――二度と、私をあの家に連れて帰らないで】

……

電話がつながったとき、父は瑠華の誕生日パーティーの飾りつけを、取り仕切っていた。

画面の表示を見た瞬間、すぐに眉が寄る。

「今度は何だ」

血の滴るナイフを握った犯人の手を見て、私は恐怖で震えた。

「父さん、さらわれたの。殺される……お願い、来て。達也を連れて、逃げて」

達也は私の子で、まだ三歳。

犯人が押し入ってきたとき、私は寝かしつけていた。

いま達也は私の足元に倒れ、裸足のまま、たくさん血を流している。

「珠希、いい加減にしろ。しょっちゅう騒ぎを起こさないと気が済まないのか?

今日は瑠華の誕生日で手が離せない。縁起でもないことを言うな!」

父は受話器に向かって、苛立ったように言い捨てると、すぐさま使用人へ声を飛ばした。

「田中、瑠華のケーキはもう届いたか?二十段だと、念を押したはずだ。一段でも欠けていたら、ただじゃおかんぞ」

通話は、ばつんと切れた。

ツーツーという音が耳に残り、胸が締めつけられるように痛んだ。

今日も、私の誕生日だ。

二十五年前、私と瑠華は同じ産院で生まれた。

瑠華の母親は金に目がくらみ、私たちの名札をすり替えた。

それ以来、瑠華は京原市でも名の知れたお嬢さまとして、大切に箱入りで育てられた。

私は、田舎の足の不自由な男に、ゴミ箱から拾われた金食い虫だった。誰にも顧みられない、雑草のような命だった。

小さいころから、働くのは当たり前で、飯なんて食べられなくても我慢しろと言われていた。

腹が限界のときは、豚と残飯を奪い合い、豚小屋で気を失った。

目が覚めたとき、耳は一生、欠けたままになっていた。

あの男は言った。これは「ツキが削られた印」だと。

この欠けた分だけ、私は一生、まともな幸せに届かない――そう言って、笑った。

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