和紙文昨日の花は燃えるように · 第3話設定≡

昨日の花は燃えるように第3話

この話は約1511字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。

道中ずっと、時生の心はどこか上の空だった。

家に入るや否や、堪えきれなくなったのか、彼は雲里子を壁際へ押し付け、唇を奪いながら衣服を荒々しく引き裂いた。

雲里子は思わず手を上げ、時生を押し退けようとした。

荒い愛し方そのものが受け入れられないわけではない。

でも、今この男の欲望は、忘年会で依蘭に挑発されたものにすぎない。

彼が雲里子の体を貪りながら、心の奥で別の誰かを思っているかもしれない。

胸の奥に吐き気が込み上げ、雲里子は息を詰めた。

もみ合ううち、背中がスイッチに触れ、「パチン」と音を立てて部屋の灯りがともった。

そこには一人の老婦人が立ち尽くし、じっと二人を見つめていた。

「きゃっ!」雲里子は思わず声を上げた。

時生も慌てて彼女を放し、しどろもどろに言った。「母さん……どうしてここに?」

富士崎美月(ふじさき みつき)は時生の母であり、普段はここには住んでいない。

突然訪れた理由は、一つしか考えられなかった。

案の定、彼女は手にした黒ずんだ液体を雲里子に差し出した。「名のある占い師に吉日を選んでもらったのよ。今日これを飲んで夫婦の営みをすれば、きっと男の子を授かれるわ」

姑の迷信など、雲里子にとってはもう日常のことだった。

三年前、彼女は子を宿して時生と結婚した。当時の美月はそれなりに優しかった。

だが婚礼間もなく、雲里子は誘拐され、腹の子を失った。

その件のあと、時生は富士崎家のあらゆる違法事業をすべて手放した。

そして幾度も涙ながらに懺悔し、「子どもを持てなくてもいい。雲里子さえ無事でいてくれればそれでいい」と誓ったのだ。

けれど、姑の美月は決して許さなかった。

孫の顔が見られない不満から、雲里子への態度は一変した。

この三年間、彼女は無数の怪しげな液体を雲里子に無理やり飲ませ続けた。

時生が板挟みにならぬよう、雲里子は黙って従ってきた。

だが、もはや去ると決めた今、彼女の命令に従う必要はなかった。

雲里子はその黒い液体を押し退けた。「飲まない」

「な……何だって?」雲里子が従うことに慣れた美月は、信じられないという顔をした。

雲里子は疲れたように浴室へ向かい、振り返りもせず言った。「飲みたいなら、ご自分でどうぞ」

その態度に美月は激しく憤り、泣き叫び、騒ぎ立て、挙げ句には命を盾に脅した。

しかし雲里子は一瞥もくれず、シャワを浴びたら、寝室のドアを閉ざして眠りについた。

この騒動で、時生もその気をすっかり失った。

彼女の隣に横たわると、全身から漂う冷たい気配を感じ、理由もなく胸がざわめいた。

時生は雲里子の髪をそっと撫でながら囁いた。「俺は子どもがいなくてもいい。雲里子、君こそがこの一生で一番大切な宝物なんだ」

雲里子は込み上げる嫌悪を抑え、「時生」と呼んだ。

時生はすぐに起き、彼女を抱き締めた。「どうしたんだ、雲里子?」

「今年は、少し早めに龍慈寺へ行って、朝音(あさね)のために祈りたいの」

朝音――それは、彼らが失った子の名だった。

あの時、時生は泣き崩れ、この季節には必ず寺で七日間の修行を行い、祈りを捧げると決めたのだ。

本来ならまだ二十日以上先のことだが、雲里子には待つ時間が残されていなかった。

彼女は言い訳を整えていた。「この先、台風が来るって聞いたの。遅れたら困るから」

「わかった。朝音のことを後回しにはできない」

時生はすぐにスケジュールを調整し、時間を作った。

毎年の修行は、ゴシップ紙に必ず取り上げられた。

――時生のように妻を愛する男は、必ず成功を掴む運命にある、と。

静けさを守るため、彼らは毎年、寺に多くのお線香代を納め、その期間は他の参拝客を受け入れないようにしていた。

だが二日目、龍慈寺には思いがけず依蘭の姿があった。

縦書き表示中:本文は右から左へスクロールします(← → キーでも移動できます)

第4話は公式アプリで

当サイトでの試し読みはここまでです。アプリをインストールし、下のアプリ用コードを入力すると、この作品の第4話からそのまま読み進められます。

R72331
  1. 下のボタンから公式アプリをインストールします(無料)。
  2. アプリを開き、「コードを入力」にこのコードを入れると、この作品が本棚に入ります。
iPhone・iPad
で入手
Android
で入手

アプリで第4話を読む

作品ページへ戻る 当サイトに掲載しているのは試し読みの章だけです。