捨てた私に、今さら家族面ですか?第2話
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玄関のドアは少し開いていた。
中から、楽しそうな笑い声が聞こえてきた。
「お姫様、お帰り!今日からまた、ここがお姉ちゃんのお城だよ!」
弟の声だった。
彩花が帰ってくる15日は、家の中はずっと祝い事でもあるかのように華やいでいた。
玄関まで来ただけで、ごちそうの匂いが漂ってくる。
私は養母が温め直した昨日の残り物すら、一口も食べていなかった。
ドアを開けた瞬間、凍りついたように笑い声が止まった。
最初に我に返った母が、気まずそうな笑みを浮かべた。
「彩乃、どうしたの?ごはんはまだ?今、お箸とお皿を持ってくるから」
母は紙皿と割り箸を、彩花の名前が入った茶碗の横に置いた。
弟はテーブルに並んでいた豚の角煮と手羽先を、こっそり冷蔵庫にしまった。
私はその場から動かなかった。
「お母さん、検査結果は見た?」
母は一瞬固まり、聞こえなかったふりをした。
「先にごはんを食べましょう」
諦めきれず、もう一度口を開いた。
「私、尿毒症なんだよ!」
すると、父が突然声を荒らげた。
「俺たちにどうしろっていうんだ?俺たちが負い目を感じてると思って、それを盾に脅すつもりか?」
思いもよらない言葉に、私は目を見開いた。
「そんなつもりじゃない。彩花とは適合してるから、腎臓を一つ提供してもらえたら……」
母は弾かれたように、甲高い声を上げた。
「もうやめて!」
すぐに取り乱したことに気づき、無理やり笑顔を作った。
「お母さんにできることは、何でもするから。ひとまずこの2万円を持っていって、養父母に病院へ連れていってもらって。お母さんは今、手が離せないの。あとで提供者も探してあげるから」
私は彩花を見た。
母が手を離せないのは、彩花のお祝いを続けるためだった。
手に押し込まれた2万円は、まるで施しのようだった。
彩花が気まずそうに口を開いた。
「彩乃、提供したくないわけじゃないの。でも、私の夢がダンサーだって知ってるでしょう?腎臓が一つになったら、もう踊れないかもしれない」
こぼれそうになる涙を必死でこらえ、私はすがるように言った。
「私たちは珍しい血液型だから、普通の人より提供者を見つけにくいの。お父さん、お母さん。私、本当に死ぬかもしれないんだよ!」
母は突然、泣き崩れた。
「だから何なの?彩花だって私の娘なのよ!あなたを助けるためなら、彩花の夢は諦めさせてもいいっていうの?お願い、彩花は私の命なの。私から彩花を奪わないで。どうしてもというなら、お母さんの命をあげるから!」
そう言うと、母は私の前にひざまずき、何度も必死に頭を下げた。
彩花は泣きながら駆け寄り、母を抱き起こした。
そして、憎しみに満ちた目で私をにらんだ。
「彩乃、もし病気になったのが私なら、あなたや家族をこんなふうに困らせたりしない」
父が激高し、私の頬を平手で打った。
「彩花を少しは見習え!そんな身勝手な性格、いったい誰に似たんだ。よその家の娘の治療まで引き受けると言ってるんだ。それだけでも十分だろう。これ以上つけ上がるな!」
呆然としたまま、打たれた頬に触れた。
実の親からも育ての親からも、私はよその家の娘だと言われた。
では、私の家はいったいどこにあるのだろう。
力なく家を出た。
階段を下りようとした瞬間、背中を強く押された。
顔を打って血がにじみ、全身にはいくつものあざができていた。痛みに息をのんで振り返ると、そこに弟が立っていた。
弟は声を張り上げた。
「このバカ!自分の家に帰れよ。もう二度と来るな!俺のお姉ちゃんは彩花だけだ!」
そう言い捨てると、勢いよくドアを閉めた。
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