和紙文捨てた私に、今さら家族面ですか? · 第3話設定≡

捨てた私に、今さら家族面ですか?第3話

この話は約1423字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。

痛む体を引きずるようにして、街を歩いた。

傷口に涙がしみるたび、全身が震えた。

けれど、私には帰れる家がなかった。

財布にもほとんどお金がなく、公園のベンチで一晩を明かすしかなかった。

午前3時、養母から電話がかかってきた。

「すぐに帰ってきなさい。あなたのことで話し合うから」

胸の奥に、かすかな期待が芽生えた。

もしかして、考え直してくれたのだろうか。

もしそうなら、本当の検査結果を伝えて、彩花に腎臓を提供してもいい。

そうすれば私も彩花のように、二つの家族から愛してもらえるのだろうか。

私は小走りで家へ戻った。

玄関を開けると家族全員がそろっており、立会人として呼ばれた弁護士もいた。

私が何か言うより先に、養母が一通の契約書を差し出した。

「弁護士に作ってもらったから、早く署名しなさい」

契約書には、いくつもの条件が並んでいた。

私は林彩花に臓器提供を求めない。

私は両家の財産を一切受け取らない。

私の治療費は、養父母が20%、実の両親が80%を負担する。

父は契約書を見ながら、不満そうに言った。

「どうしてうちが80%なんだ。半分ずつにするべきだろう」

養父がテーブルを叩き、怒鳴り返した。

「こいつはお前の娘だろうが!俺が20%出すだけでもありがたいと思え!」

父は苛立たしげに言った。

「俺はこいつを娘だと思ってない。俺の娘は彩花だけだ」

まるで不要品の処分費を決めるように、私の治療費を巡って値踏みが続いた。

いつまでも折り合いがつかず、最後にもう一つ、条件が加えられた。

治療費が200万円を超えた場合、私は自ら治療を断念する。

母は罪悪感に満ちた顔で私を見た。

「ごめんね、彩乃。余裕があるなら、何もかも売り払ってでも治してあげたいの。でも、彩花が海外でダンスを学ぶには、まだたくさんお金がかかるし、弟も高校生でしょう。

お母さんには、本当にこれ以上出せないの。どうしてもお金が足りないなら、お母さんが身を粉にして働いてでも治療費を作るから」

彩花は慌てて駆け寄って母を止め、責めるような目を私に向けた。

「彩乃、それはひどいよ。お父さんとお母さんを、これ以上困らせないで」

その言葉を聞くと、笑いがこみ上げてきた。

私はまっすぐ彩花を見つめ、一言ずつ問いかけた。

「彩花。もし病気になったのがあなただったら、この契約書に署名する?」

彩花は一瞬言葉に詰まったが、すぐに胸を張った。

「もちろん。みんなが大変なのは分かってるもの。私が病気になったら、すぐに飛び降りる。絶対に家族の負担にはならない」

その言葉に二人の母親は涙を浮かべ、我先にと彩花を抱き締めた。

養父は愛おしそうに彩花を見たあと、嫌悪をあらわにして私をにらんだ。

「さすが俺の娘だ。自分が助かりたいばかりに、ほかの人間まで巻き添えにしようとするお前とは大違いだ」

私は両家の親たちを見回した。

「じゃあ、聞き方を変える。病気なのが彩花だったら、私に腎臓を提供させる?」

ほとんど間を置かず、父が答えた。

「そんなことをするわけがない!何だかんだ言っても、お前たちはどちらも俺の娘だ。一人を犠牲にして、もう一人を助ける親がどこにいる!自分が根っから腐ってるからといって、世の中の人間が全員同じだと思うな。まともな人間なら、そんな恥知らずなことは口にできない!」

その答えを聞き、私はようやく吹っ切れた。

「分かった。その言葉、忘れないでね。署名してもいい。でも、私からも一つ条件を加える。これから先、あなたたちに何があっても、私を頼らないで」

縦書き表示中:本文は右から左へスクロールします(← → キーでも移動できます)

第4話は公式アプリで

当サイトでの試し読みはここまでです。アプリをインストールし、下のアプリ用コードを入力すると、この作品の第4話からそのまま読み進められます。

S25058
  1. 下のボタンから公式アプリをインストールします(無料)。
  2. アプリを開き、「コードを入力」にこのコードを入れると、この作品が本棚に入ります。
iPhone・iPad
で入手
Android
で入手

アプリで第4話を読む

作品ページへ戻る 当サイトに掲載しているのは試し読みの章だけです。