捨てた私に、今さら家族面ですか?第3話
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痛む体を引きずるようにして、街を歩いた。
傷口に涙がしみるたび、全身が震えた。
けれど、私には帰れる家がなかった。
財布にもほとんどお金がなく、公園のベンチで一晩を明かすしかなかった。
午前3時、養母から電話がかかってきた。
「すぐに帰ってきなさい。あなたのことで話し合うから」
胸の奥に、かすかな期待が芽生えた。
もしかして、考え直してくれたのだろうか。
もしそうなら、本当の検査結果を伝えて、彩花に腎臓を提供してもいい。
そうすれば私も彩花のように、二つの家族から愛してもらえるのだろうか。
私は小走りで家へ戻った。
玄関を開けると家族全員がそろっており、立会人として呼ばれた弁護士もいた。
私が何か言うより先に、養母が一通の契約書を差し出した。
「弁護士に作ってもらったから、早く署名しなさい」
契約書には、いくつもの条件が並んでいた。
私は林彩花に臓器提供を求めない。
私は両家の財産を一切受け取らない。
私の治療費は、養父母が20%、実の両親が80%を負担する。
父は契約書を見ながら、不満そうに言った。
「どうしてうちが80%なんだ。半分ずつにするべきだろう」
養父がテーブルを叩き、怒鳴り返した。
「こいつはお前の娘だろうが!俺が20%出すだけでもありがたいと思え!」
父は苛立たしげに言った。
「俺はこいつを娘だと思ってない。俺の娘は彩花だけだ」
まるで不要品の処分費を決めるように、私の治療費を巡って値踏みが続いた。
いつまでも折り合いがつかず、最後にもう一つ、条件が加えられた。
治療費が200万円を超えた場合、私は自ら治療を断念する。
母は罪悪感に満ちた顔で私を見た。
「ごめんね、彩乃。余裕があるなら、何もかも売り払ってでも治してあげたいの。でも、彩花が海外でダンスを学ぶには、まだたくさんお金がかかるし、弟も高校生でしょう。
お母さんには、本当にこれ以上出せないの。どうしてもお金が足りないなら、お母さんが身を粉にして働いてでも治療費を作るから」
彩花は慌てて駆け寄って母を止め、責めるような目を私に向けた。
「彩乃、それはひどいよ。お父さんとお母さんを、これ以上困らせないで」
その言葉を聞くと、笑いがこみ上げてきた。
私はまっすぐ彩花を見つめ、一言ずつ問いかけた。
「彩花。もし病気になったのがあなただったら、この契約書に署名する?」
彩花は一瞬言葉に詰まったが、すぐに胸を張った。
「もちろん。みんなが大変なのは分かってるもの。私が病気になったら、すぐに飛び降りる。絶対に家族の負担にはならない」
その言葉に二人の母親は涙を浮かべ、我先にと彩花を抱き締めた。
養父は愛おしそうに彩花を見たあと、嫌悪をあらわにして私をにらんだ。
「さすが俺の娘だ。自分が助かりたいばかりに、ほかの人間まで巻き添えにしようとするお前とは大違いだ」
私は両家の親たちを見回した。
「じゃあ、聞き方を変える。病気なのが彩花だったら、私に腎臓を提供させる?」
ほとんど間を置かず、父が答えた。
「そんなことをするわけがない!何だかんだ言っても、お前たちはどちらも俺の娘だ。一人を犠牲にして、もう一人を助ける親がどこにいる!自分が根っから腐ってるからといって、世の中の人間が全員同じだと思うな。まともな人間なら、そんな恥知らずなことは口にできない!」
その答えを聞き、私はようやく吹っ切れた。
「分かった。その言葉、忘れないでね。署名してもいい。でも、私からも一つ条件を加える。これから先、あなたたちに何があっても、私を頼らないで」
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