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手放した愛は、二度と還らない第2話

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澪は分かっていた。颯太はただ、今日の彼女の反応が気に入らず、あの手この手で刺激しようとしているだけなのだ。

昔のように彼女が崩れ落ち、泣き叫び、取り乱す姿を見て、彼女の感情を思い通りに操れるという全能感に浸りたいだけなのだ。

だが、彼女はもう二度とそうはならない。

家に戻り、私邸の大きなドアを開けると、バスタオルを巻いた瑠奈が、主寝室から出てくるところだった。濡れた髪が肩に張り付いている。

澪の姿を見るなり、彼女は隠そうともしない勝ち誇った笑みを浮かべた。

「あら、おかえりなさい。颯太さんはシャワーを浴びているから、座って待ってて」

彼女はソファを指差し、まるで自分がこの家の主であるかのように振る舞った。

澪は何も言わず、そのままソファに腰を下ろした。

ほどなくして、濡れた髪を拭きながら颯太が主寝室のバスルームから現れた。

彼は澪に視線すら向けず、まっすぐ瑠奈の方へ歩み寄ると、長い腕を伸ばして彼女の腰を抱き寄せた。

「なぜ髪を乾かさないんだ?」

彼の声は低く掠れていた。棚からドライヤーを手に取る。

「こっちへ来い。乾かしてやる」

瑠奈は甘えるように彼の手を払いのけた。「やだ、颯太さんは手つきが乱暴だから、いつも痛いんだもん」

颯太は苦笑混じりに舌打ちをし、彼女の腰を引き寄せた。「ベッドの上では痛がらないくせに、ん?」

その時になってようやく、彼はソファに座る澪に気づいたかのように動きを止め、口角を歪めて笑った。

彼は手にしたドライヤーを、無造作に澪の方へ投げた。「ちょうどいい。お前が乾かしてやれ。彼女を傷つけるなよ」

ドライヤーが澪の足元の絨毯に落ちた。

澪は静かに彼の視線を受け止め、何の波紋も立てずに「分かったわ」と応じた。

彼女はすぐに立ち上がることはせず、ポケットから女性用の煙草を取り出すと、火をつけた。

「この一本を吸い終わるまで待って」

一本の煙草を吸う時間は、彼女が感情を整理するのに十分だった。

言い捨てて、彼女はテラスへと向かった。

颯太がすぐに後を追ってきた。その顔には、嘲笑の色が浮かんでいる。「どうした?もう演じきれなくなったか?」

澪は答えず、手すりに寄りかかって深く煙草を吸い込んだ。

煙が彼女の顔を覆い、表情を曖昧にする。

その仕草、手慣れた様子は、普段の清楚なイメージとはかけ離れ、退廃的で人を惹きつける色気を纏っていた。

颯太は不快そうに眉を寄せた。彼は一歩踏み出し、彼女の指先から煙草を奪い取ると、指の腹で強引に押し潰した。

「いつから煙草なんて吸い始めた?」怒りを含んだ声が響く。「俺の知らないところで、何をしていた?」

澪は歪んだ煙草の残骸を見つめ、それから彼の赤くなった指先を見て、不意に可笑しさが込み上げた。

彼女は口角をわずかに上げた。「あなたの知らないことなんて、山ほどあるわよ。颯太」

颯太は言葉に詰まったが、すぐにまた不敵な態度を取り戻した。

彼は手を伸ばして彼女の頬に触れようとしたが、彼女は顔を背けてそれを避けた。

「嫉妬するな」颯太は声を和らげ、施しを与えるような口調で言った。「遊び飽きたら、ちゃんと家庭に戻ってやる。お前は永遠に俺の妻なんだからな」

澪はその底知れない瞳を見つめ、遠い昔、彼が耳元で「一生お前だけを愛する」と誓ったことを思い出した。

そんな言葉を信じるのは、一生に一度で十分だ。

返事がないのを妥協したと受け取ったのか、颯太は彼女の唇に顔を寄せ、馴染みのある欲望を滲ませた。「部屋に戻ろう。今夜は……」

澪は彼のキスを躱した。「そんな気分じゃないわ」

颯太の目が険しくなり、彼女の耳たぶを指でなぞった。低く掠れた声で囁く。「忘れたのか?今日はお前の排卵日だろ。毎月この時期になると、お前の方から激しく求めてくるじゃないか」

澪の体がわずかに強張った。

かつての睦み合いの中での情事の言葉が、今はこれ以上ないほど屈辱的に感じられた。

その時、リビングから瑠奈の甘ったるい声が響いた。

「颯太さん、なんだか頭がくらくらするの……」

澪は救いの手を掴むかのように、静かに彼を押し返した。「行ってあげたら?何かあったら大変よ」

だが颯太は意固地になったように、彼女を横抱きにすると、拒絶を許さず主寝室へと向かった。

「行かない。今夜はお前だけのものだ」

彼は彼女を主寝室の浴槽へ降ろし、投げやりに言った。「先に洗え。ベッドで待っている」

そう言い残し、彼は足早に部屋を出ていった。

澪がバスルームを出ると、颯太が主寝室から出し、隣にある瑠奈のゲストルームへと入っていくのが見えた。

彼女は数秒間、扉の方に向かって静かに見つめ、自分の部屋の鍵を閉めた。

その夜、彼が戻ってくることはなかった。

そして、彼女もまた、待つことはなかった。

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