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愛人親子のために実娘を殺しかけた夫第2話

この話は約1766字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

私はその場に立ち尽くした。彼女の何気ないひと言で、娘が一年も楽しみにしていた誕生日は、すっかり台無しになってしまった。

智哉は、青ざめた私の顔にちらりと視線を向けたものの、気まずそうにすぐ目をそらした。

「同じくらいの年の子なんだし、一緒に遊べばいいだろ」

娘は、智哉と朱音が固くつないだ手をじっと見つめていた。

小さな顔は、茫然としていた。

私は胸がきゅっと痛み、言おうとしていた言葉は喉の奥でつかえて出てこなかった。

藤崎心春(ふじさき こはる)はお姫さまのようなドレスを着て、髪をきれいに結い上げ、智哉と朱音に囲まれて立っていた。まるで、今日の主役はあの子だと言わんばかりだった。

それに比べて娘は質素な服を着て、私と二人きりでぽつんと立っていた。

もう我慢の限界だった。

私は娘を抱き上げ、足早に背を向けた。

「汐里さん、どういうつもり?もしかして、私と心春が気に障ったの?」

朱音が私の前に立ちふさがり、ひどく怯えたような顔をした。

けれどその指先は、私の腕に深く食い込んでいた。痛みにたまらず振り払うと、力は強くなかったのに、朱音はそのまま地面に倒れ込んだ。

彼女は涙をこぼしながら言った。

「汐里さん、どうして私を叩くの?仲よくしたいって思っただけなのに、いけなかった?」

つねられた腕は、まだずきずきと痛み、悔しさで歯が震えた。

言い返そうとした瞬間、智哉の平手が飛んできた。

「母親のくせに何をしてるんだ!娘の前で人を叩くなんて!」

その一撃はあまりにも重く、気づいたときには私はもう地面に倒れていた。

娘はとっさに駆け寄り、細い腕を広げて私の前に立ちはだかった。

泣きながら叫ぶ。

「ママを叩かないで!」

額からは血が流れ、頬を伝って落ちていった。

華奢な背中で私をかばう娘を見て、それから朱音たちを守るように立つ智哉を見た瞬間、頭の中で何かがぷつりと切れた。

智哉が私をどう思おうと構わない。愛してくれなくても、もういい。

けれど、どうしてあの人は、何度も何度も娘まで傷つけるのだろう。

私はふらつきながら佳奈を抱き寄せ、涙で濡れた目を手で覆った。

そのまま迷いなく踵を返す。

朱音たちの様子を確かめ終えた智哉がこちらを振り向き、目を見開いた。

慌てて駆け寄ってくると、なおも血の流れる私の傷口を押さえた。

「こんなにひどい傷だったのか。お前が朱音をいじめたりしなければ、俺だって……」

私は青白い顔のまま彼を見上げ、涙を流した。

どれだけ言い分を伝えても、この人の目には、いつだって私が朱音を苦しめているようにしか映らない。

朱音のせいで、私は猫を失い、夫も失った。そして、二人目の子どもまで失った。

あれは、彼の浮気を初めて知ったときのことだった。

私はお腹に子どもを宿したまま、彼の会社を訪ねた。

そこで目にしたのは、智哉と朱音が裸で抱き合う姿だった。

怒りに任せて駆け寄ろうとした私に、智哉は容赦なく平手を打った。

あの一撃が、私の子どもの命を奪ったのだ。

私の涙を見て、智哉は一瞬、息をのんだ。その目には、かすかな痛みがよぎった。

思わず手を伸ばし、私の涙を拭おうとしたそのとき、背後で朱音が嗚咽を漏らした。

「ごめんなさい。全部、私が悪いの。私があなたたちの関係を壊したりしなければよかった」

そう言うなり、彼女は身を翻して、ひっきりなしに車の行き交う道路へ駆け出した。

次の瞬間、あちこちでけたたましくクラクションが鳴り響いた。

智哉はすぐに私から手を離し、ためらいもなく朱音のもとへ走っていった。

娘と私は静かに顔を見合わせ、それから車に乗り込んでその場を離れた。二人のそばを通り過ぎたとき、朱音は智哉の肩にもたれ、静かにこちらを見ていた。

さっきまでの罪悪感など、その顔からはきれいに消えていた。

ああ、この人は自分が勝ったと私に知らせたいのだ。

けれど、もうどうでもよかった。

その夜、私は娘を連れて別の家へ移った。

けれど夜十一時になるころ、智哉は何の連絡もなくやって来た。

ドアを開けた私の無言の表情が気に入らなかったのか、彼は露骨に不機嫌そうな顔をした。

「俺たちは離婚しただけだろ。誰が引っ越せなんて言った?どうせ数日もすればまた籍を戻すんだから、こんなことをして何になる」

勝手にソファへ腰を下ろし、部屋の内装を眺めていた彼は、壁に飾られた家族写真に目を止めた途端、不意に動きを止めた。

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