愛は流星のように、銀河へと消えていく第2話
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電話の向こうで、翔真は驚いたようだった。
「昨日はあんなに拒んでたのに、今日はどうして急に同意したんだ?」
和沙は淡々と答えた。「考えが変わったの。
お父さん、私が海外で結婚する件、まだ……宗太さんには言わないで」
もし宗太が復讐のために近づいてきたのだとしたら、彼は簡単に手放してくれないだろう。だから、今はまだ、彼に自分が海外で政略結婚することを知られてはいけない。
翔真は少し怪訝に思ったが、すぐに納得した。和沙は宗太と幼い頃から親しく、長年一緒に生活してきた。ただの未練だろうか。
「わかった。少し時間が経ってから伝えるとしよう」
「そうだ、お父さん、この前言ってた探偵の知り合い、連絡先を教えてくれない?」
離れる前に、確かめておきたいことがある。
電話を切ってしばらくすると、和沙のスマホに連絡先が送られてきた。
彼女はふらつきながら立ち上がると、朝の風が吹き抜けて、思わず身震いした。
あと七日で出国だ。宗太の家にはまだ荷物が残っている。
まあ、せめて今のうちは、これまで通りのふりをしておこう。余計な波風を立てずに、静かに出ていけばいい。
重い身体を引きずって家へ戻ると、どうにかシャワーを浴びたが、目の前がぼやけて意識が飛びそうだった。
一晩中眠れなかったせいだ。浴室を出ると、彼女がベッドに倒れ込むようにして布団をかぶった。
耳の奥に、昨夜の宗太の言葉が何度も反響する。和沙は震えが止まらない。寒くてたまらなかった。
玄関の鍵が回る音がした。宗太が帰ってきた。
彼は和沙がベッドに横になっているのを見て、まだ眠っているのだと思ったのか、キッチンに向かった。
どれくらい経っただろうか。彼は朝食を乗せたトレーを持って寝室に入ってきた。
「和沙、ちょっとでも食べなよ」
返事がない彼女に近づき、そっとスプーンを差し出す。
「いらない」
和沙は顔を背け、かすれた声でそう言った。
その声の様子がおかしいと感じた宗太は、少し眉をひそめてやさしく尋ねた。
「どうした?どこか具合が悪いのか?」
彼は器を置いて、彼女の額に手を伸ばした。
「うん、調子悪いの」再び彼の手を避けながら、和沙は淡々と答える。
宗太は軽く眉をひそめた。昨夜帰宅しなかったことで機嫌を損ねたのだろうと思い込んでいた。
「昨夜戻らなかったから、怒ってるのか?」
低い声で宥めながら、ようやく彼の手のひらが彼女の額に触れた。すると、熱い体温に彼の表情が一変した。
「熱があるじゃないか!」
彼女の反応を待たず、宗太は強引に身体を抱き上げた。
「病院へ連れて行く」
病院まであと少しというところで、彼のスマホが鳴った。
「宗太、うちのワンちゃんが病気なの!早く動物病院に連れてって」
心美の慌てた声が電話の向こうから聞こえた。
「心美、落ち着いて。すぐ向かうよ」
急ブレーキをかけ、車は反対方向へUターンした。和沙の頭が前のシートにぶつかりそうになる。
彼女は身体を支え直し、唇をかみしめて言った。
「止めて。病院は自分で行けるから」
「わがまま言うな」宗太は運転を続ける。「こんな熱じゃ、一人で行かせるなんてできるわけないだろ」
ルームミラー越しに彼女の顔色を見て、彼はため息をつき、声のトーンを優しく落とした。
「また焼きもちか?まったく、子どもみたいだな。
いい子にしてな。芝居は最後までやり通さなきゃな。先に心美を動物病院に連れて行ってから、すぐに君を病院に連れていくから」
和沙は目を閉じ、口元にかすかな苦笑を浮かべた。
そう、芝居だ。
だけど、彼の芝居の相手役は、いつだって彼女だけだった。
間もなく、ペットキャリーを手にした心美が乗り込んできた。
ペットキャリーを和沙の隣の席に置き、彼女の顔を見ると、冷ややかな目つきでにやりと笑い、助手席に座る。
「和沙もいたの?久しぶり。顔色、ひどいわね」
心配するふりをしながらも、声には露骨な嘲りが滲んでいた。
和沙は目を閉じたまま、返事もする気になれなかった。
心美は気にも留めず、センターコンソールに置かれたチタン製の置物に目をやり、ふっと笑った。
「宗太、こんなもの、いつから車に置いてたの?」
それは一週間前、和沙が贈ったものだった。
特注で彫ってもらった、二つの人形が抱き合っている置物。意味は離れないように。
心美はそれを手に取った。
「結構重いわね。抱き合ってるの?これは……」
心美がちらりと後部座席の和沙を見た。
「もしかして、和沙がくれたの?」
和沙がわずかに眉をひそめる前に、宗太が先に口を開いた。
「違う。見かけて面白そうだったから買っただけ」
心美は笑いながら、その置物を和沙の足元に投げた。
「なんかダサいね。宗太っぽくない」
心美は振り返り、和沙に向け、わざとらしく言った。
「和沙、それ捨ててくれない?あまりに醜いから、私がもっといいやつ買ってあげるから」
宗太は何も言わなかった。つまり、彼女の提案を了承した。
和沙の指先が震え、胸の奥が締めつけられるように痛んだ。
「わかった」
彼の視線がルームミラー越しに彼女を見つめ、その目の奥には複雑な色が浮かんでいた。
車は間もなく、街で最も有名なペット病院に到着した。
心美はそわそわしながら、宗太に声をかける。
「宗太、一緒に中に入ってくれない?」
宗太は後部座席で目を閉じたままの和沙をちらりと見た。
「和沙、ここで待ってて。心美を中まで送ったらすぐ戻る」
そう言い残し、彼はペットキャリーを手に心美と一緒に病院の中へ消えた。
和沙はゆっくりと目を開けた。寒気が全身を包み、震えが止まらなかった。
熱はさらに上がっている。呼吸も苦しくなって、意識もぼんやりとしてきた。
彼女は車を降りようとして、ドアに手をかけた。
「カチッ」という音とともに、ロックがかかった。
無力感に包まれたまま、彼女は座席に身を戻すしかなかった。
電話をかけようと思ったが、宗太が彼女を抱えて出たとき、スマホは家に置きっぱなしだった。
時間だけが無情に過ぎていく。彼は戻ってこなかった。
高熱に加え、日差しで熱せられた車内の空気は、さらに彼女の身体を追い詰めていった。
胸の奥がどんどん締めつけられ、呼吸は限界に近づいていた。
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