愛の終わりは空虚だった第2話
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空港。
二時間も待って、ようやく翔悟が口にしていた「おば」、豊島和歌奈(とよしま わかな)の姿が見えた。
彼女は静野の想像以上に若々しく、赤いベルベットのロングドレスをまとい、しなやかな曲線を描く体つきに、ブラウンの大きなウェーブヘアを耳の後ろに流している。
その姿はひときわ華やかで、歳月を重ねたからこその魅力も漂わせていた。
翔悟の姿を見つけると、彼女は腕を振って呼びかける。
「翔悟くん!」
翔悟は我を忘れたように、静野の手を離して駆け寄った。
女性はスーツケースを手放し、そのまま彼の胸に飛び込む。
彼も彼女を抱きとめ、その場で何度もくるくると回った。
「翔悟くん、大きくなったわね。すごく格好よくなった。私なんてもう歳よ」
翔悟は抑えきれない喜びをにじませて言う。
「おばさんこそ、全然老けてない。昔と同じくらい綺麗だ」
「もう、褒め上手なんだから。彼女さんのほうがきっと私よりずっと綺麗なんでしょ?」
「彼女なんて......おばさんの髪の一本すら敵わないよ」
「この子ったら、ますます甘いこと言うようになったわね」
二人は名残惜しそうに抱き合ったまま離れない。
その様子を見つめながら、静野は翔悟の瞳に浮かぶ優しさと愛情を見て、ふと笑ってしまった。
翔悟に恋をしたのは、雨の夜だった。
泥酔して雨の中に倒れていた彼を、通りかかった静野が助け起こしたのがきっかけだ。
目を覚ました彼は彼女に連絡先を求め、食事をご馳走したいと言った。
そうして何度か会ううちに、二人は自然と親しくなっていった。
彼はただの一般人だと思っていた。
だが実際、彼は結城グループの御曹司――あの結城翔悟だった。
まだ25歳で、すでにグループの後継者となっている。
外では常に冷たい態度を崩さない彼が、静野に対してだけは優しく、気遣いに満ちていた。
やがて再び会ったとき、彼は彼女に告白し、彼女もそれを受け入れた。
こうして二人は正式に付き合い始め、3年が過ぎた。
この3年間、翔悟は彼女にとても優しかった。
みかんの皮を剥くときでさえ、白い筋を丁寧に取り除くほどに――彼女が気にしないと言っても。
体にいいからと、朝はいつも、蜂蜜を半さじ入れた温かいミルクを差し出してくれた。
車に乗る前には、彼女が座りやすいようにシートの角度まで調整してくれる。
先月には、結婚しようと突然プロポーズまでした。
あまりの嬉しさに、彼女は何日も眠れなかった。
ようやく自分の幸せが訪れたのだと思っていた。
――なのに今、自分は一体何なのだろう。
ただの笑いものじゃないか。
「この子が、翔悟くんの彼女?名前は......しずのさん、だったかしら?」
和歌奈は翔悟の腕から離れ、静野に歩み寄って自ら挨拶した。
「はじめまして、静野さん。私は翔悟くんの母の友人よ。彼と同じように『おばさん』って呼んでくれていいからね」
静野は彼女を見つめたまま、何も言わない。
その沈黙に、女性はわずかに気まずそうな表情を浮かべた。
翔悟が眉をひそめる。
「静野、おばさんが話しかけてるの、聞こえてるだろ?」
「うん。でも、そんなに若いのに『おばさん』なんて呼んだら、逆に年寄り扱いみたいじゃない。見た感じ、私たちと同じくらいにしか見えないし......知らない人が見たら、翔悟の彼女だと思うかもね」
「え?何か誤解してない?」
和歌奈は笑みを引きつらせながら、慌てて説明する。
「この子は昔からこういう呼び方が好きなのよ。前からよくハグもしてたし......あの頃は、私のほうから抱きしめてたくらいで――」
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