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愛と別れのその先へ第2話

この話は約1585字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

動画が終わった。

それでも、私はじっと画面を見つめたまま、動けなかった。

気づいたら、もう一度、最後の部分だけを再生していた。

何度も何度も、龍也の言葉を確かめるように。

……あの「わかった」を。

私は溺れている人みたいに、必死に、何かにすがろうとしていた。自分を騙すための一本の藁に縋り。

十三回目にその言葉を聞いた時、ぽたりと涙が画面に落ちた。

慌てて顔を拭って、いつの間にか、涙で頬が濡れていた。

かなしい?

ううん、そうでもない。

つらい?

少しだけ。

では、なぜ涙が溢れるのだろう?

バスルームに行って、水を両手で掬って、顔に当てる。顔を上げた瞬間、鏡の中の自分を見て、思わず息を呑んだ。

これは私?

髪はボサボサで、肌はどこか黄色っぽく、目の周りは真っ赤に腫れている。

今朝の私は、こんなじゃなかった。

本当に、誰かを好きになりすぎると、自分が変わってしまうんだね。

龍也のことを、好きで好きでたまらなかった。

五年も一緒にいて、ついに結婚するんだって、私は信じていた。

これで、全部うまくいくんだって。

でも、その「うまくいく未来」は、最初からもう臭く、腐っていた。

【結婚したいんだけど、新郎がいないんだよ。誰か応募してくれる人~?】と投稿する……

友達から、あっという間に返信が届き始めた。

みんな、私が龍也のことをどれだけ好きか知っている。だから、この投稿を真に受けるやつはいない。

コメントには、いっぱい「マジ?」や「本人?」、「冗談でしょ?」って言葉が並んでいた。

私はそれを見て、自嘲するように笑った。

でも、その時。スマホが震えた。

南秀康(みなみ ひでやす)だ。

その名前を見た瞬間、瞳が、わずかに縮んだ。

秀康は私の幼馴染。でも、別に仲が良いわけじゃない。

むしろ、小さい頃から喧嘩ばかりしていた。

小学生の頃から高校まで、彼はいつも私の肩を抱えるようにして、「お前は俺が守る」とか言って、周りには、「俺の兄弟だ」と吹聴していた。

大学に入ってからは、別々の町に行き、ほとんど連絡を取らなくなった。

正直言うと、私は龍也と付き合うために、自然と疎遠になったんだ。

なんで、今さら電話してきたんだろう。

迷ったけど、出た。

「よお、ブラザー。どうしてこんなに返事遅いんだよ、あにきからの電話に……」

相変わらずの、いつもの軽口。

その声を聞いた途端、胸の中にあった暗い雲が、少しだけ晴れた気がした。

「どうしたの?急に電話して」

彼は珍しく少し沈黙してから、口を開いた。その声は、少し深くなっていた。

「その、投稿、マジで言ってんの?」

私は彼の変化に気づかず、ふわっと返した。

「へぇ、来るの?」

「来るよ!

ダメ?」

今度は、私が黙る番だった。

考えてみたら、もし本当に結婚相手を変えるなら、秀康はちょうどいい相手かもしれない。

家柄もいいし、私たちの関係も長い。

「もちろん、いいよ。でも、理由を聞かせて」

「理由?当たり前だろ、お前のことが好きだから」

秀康の声が、いつもの大らかな調子に戻ってた。

「お前のことずっと好きだったんだぜ。夢の中でもお前を娶って家に連れて帰りたかった。だから、チャンスを逃すわけにはいかねぇだろ?」

「これ、結婚なんだよ!遊びじゃない」

「わかってるよ」

彼はにやりと笑った。

「へへっ、だからだよ。お前を嫁にもらうだけじゃなくて、小川龍也よりもっとお前を愛させてもらうぞ」

もっと彼を愛するのか?

それ、私にできるのかな。

でも、どうでもいいや。

「いいよ」

私はそう答えた。

「手元のことを済ませたら、また連絡するわ」

秀康は、それ以上何も聞かなかった。

いつもそうだ。

彼は賢い。聞くべきことと、聞かないほうがいいことを、ちゃんとわかっている。

電話を切ったあと、あの投稿を削除した。

それから、秀康の名前を友達リストのトップに置き、ニックネームも変更した——「夫」。

龍也が、他の女と子供を作るなら、私は、別の男を「夫」にするだけ。

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