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愛という名の嘘第2話

この話は約1965字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

その記事には、もう一枚写真が載っていた。

写真の中の耕平は、きっと嬉しそうに笑っているのだろうと思った。

私は二階の廊下の突き当たりにある部屋まで歩いた。そこは耕平のコレクションルームだった。

彼はよく、そこで一日中過ごしていた。

私が見えないこともあってか、彼は一度も私を気に留めたことがなかった。

ドアを押し開けて中に入ると、私はスマホで部屋の隅々まで写真を撮った。

撮った写真をネットに投稿し、写っているものが何なのかを見た人に尋ねた。

コメントはすぐについた。

【これ、画家の江坂香奈美の作品じゃない?投稿者さん、かなりのファンなんだね】

【正直、江坂香奈美の絵って受賞作の何点かを除けば、同じ人が描いたとは思えないものばかりで、コレクションする価値はないと思う】

【こんなにあるの?数えてみたら、全部で百二十枚もあった】

そこで私は、香奈美についてネットで調べてみた。

この二年、彼女は作品で国内外の賞をいくつも受賞していて、そのたびに耕平はわざわざ会場まで足を運び、直接祝っていた。

香奈美の知名度を上げるためなら、耕平は多額の資金を投じて、彼女の絵を高額で落札することさえ惜しまなかった。

香奈美の夫の会社が経営危機に陥ったときでさえ、宍戸グループの資金援助によって救われていた。

本当に、耕平は香奈美を深く愛しているのだ。

彼女に苦労をさせたくなくて、自分の恋敵にまで手を差し伸べるほどに。

香奈美に向ける彼の愛は、まっすぐで疑いようもないものだった。

その一途さに、胸が震えるほど心を揺さぶられてしまった。

翌朝、私は立て続けに三つの病院で目の診察を受けた。

どの病院でも答えは同じだった。角膜移植を受ければ、かなり高い確率で視力が戻るというのだ。

実はその三つの病院には、どこも以前、耕平に連れられて来たことがある。けれど当時の医師たちは、そろって「治療は不可能だ」と言っていた。

――これで確信した。

耕平は最初から、私の目が治ることを望んでいなかったのだ。

病院を出た途端、私はこらえきれず、その場にしゃがみ込んで泣いた。

悔しさも、戸惑いも、苦しさも――洪水のように胸へ押し寄せてきた。

この二年間の嘘には、もう耐えられなかった。

しばらくして気持ちが落ち着くと、私は弁護士事務所へ向かい、離婚協議書を二通受け取った。

それをバッグにしまい、路肩に立ってタクシーを待つ。

やがて一台の車が目の前で止まり、運転席の女が窓を下ろした。

「心未じゃない。どうして一人でこんなところにいるの?ちょうど耕平の会社に行くところなの。乗って、一緒に行きましょう」

香奈美の声だった。

断る間もなく、彼女は車を降りてきて私の腕をつかみ、そのまま車の中へ押し込んだ。

道中、彼女はずっと私を見下すような言葉ばかり並べ立てた。

「昔、先生がクラスのみんなの前で言ってたわよね。あなたはきっと大画家になるって。なのに皮肉よね、目が見えなくなった今、どうやって絵を描くの?

それに、私に感謝しなきゃだめよ。私が耕平を断らなかったら、あなたが彼と結婚できるはずなかったんだから。目も見えないあなたじゃ、一人で生きていくことだって難しいでしょう?」

膝の上に置いた手を、私は知らないうちに強く握りしめていた。

香奈美は私の目を奪い、人生まで壊しておきながら、よくもこんなことを平然と言えるものだ。

耕平と本当にお似合いだと思った。まさに似た者同士だった。

車を降りて会社に入ると、すぐに社員たちのひそひそ話が耳に入ってきた。

「あの人が社長の奥さんでしょ?江坂さんと並ぶとさすがにちょっとね。片方は白杖ついてるし、もう片方はあんなに仕事もできて華やかで」

「だから社長、パーティーにはいつも江坂さん連れてくるんだよ。目の見えない奥さん連れて歩きたい人なんて、普通いないでしょ」

「でも社長と奥さんって幼なじみなんでしょ?あえて外に連れ出さないのも、守ってるつもりなんじゃない?」

エレベーターに乗り込むと、香奈美がふいに笑い出した。

「心未って、本当にかわいそう。ちょっと同情しちゃいそう。

安心して。あなたの代わりに、この世界は私がちゃんと見ておいてあげるから」

長いあいだ胸の奥に積もっていた怒りが、その瞬間、弾けた。

私は白杖を放り出し、手を振り上げて彼女の頬を打とうとした。

けれど香奈美は、あっさりと身をかわした。

そのくせエレベーターの扉が開いた途端、耳をつんざくような悲鳴を上げた。

「心未、どうして私を叩くの?」

次の瞬間、誰かが駆け込んできて、私は勢いよく床に突き倒された。

その人はすぐに、床にしゃがみ込んだ香奈美を抱き起こした。

――耕平だ。

彼の声には、はっきりと怒りがにじんでいた。

「心未、お前、なんで香奈美に手なんか出すんだよ。

香奈美はたまたまお前を見かけて、親切にここまで送ってくれただけだろ。何してるんだよ」

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