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悦びは、旧い恋のためにあらず第1話

この話は約2036字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

二木和光(ふたき かずみつ)とおせち料理の食材を買いにスーパーへ向かう途中、久しぶりに同じ大学出身の竿代敦(さおしろ あつし)と出会った。

和光を見るなり、敦が口にした最初の言葉はこうだ。

「知ってる?小賀坂葵(おがさか あおい)が帰国したんだって」

私は思わず和光の顔を見た。すると、彼も微笑みながら私を見つめている。

「悦子、また変な想像してるか?葵とはもう、とっくの昔に終わったことだ」

彼は顔を上げ、改めて敦に私を紹介した。

「紹介しよう。俺の彼女、夕部悦子(ゆうべ えつこ)だ。彼女も俺たちと同じ大学の出身だけど、学部は別だ」

正直に言うと、私は変な想像はしていなかった。

というのも、和光と葵の別れ方はお世辞にも綺麗とは言えず、さらに葵は皆の目の前で和光をブロックし、縁を切ったのだ。

その後、長い間葵の話題が出るたびに、和光は苦々しい表情を浮かべていた。

二人が昔話に花を咲かせている間、私は隣の棚へ食材を選びに行った。

戻ってくると、ちょうど敦のこんな言葉が耳に入った。

「実はさ、昨日、小賀坂から君の連絡先を教えてほしいって頼まれ……」

* * *

二木和光(ふたき かずみつ)とおせち料理の食材を買いにスーパーへ向かう途中、久しぶりに同じ大学出身の竿代敦(さおしろ あつし)と出会った。

和光を見るなり、敦が口にした最初の言葉はこうだ。

「知ってる?小賀坂葵(おがさか あおい)が帰国したんだって」

私は思わず和光の顔を見た。すると、彼も微笑みながら私を見つめている。

「悦子、また変な想像してるか?葵とはもう、とっくの昔に終わったことだ」

彼は顔を上げ、改めて敦に私を紹介した。

「紹介しよう。俺の彼女、夕部悦子(ゆうべ えつこ)だ。彼女も俺たちと同じ大学の出身だけど、学部は別だ」

正直に言うと、私は変な想像はしていなかった。

というのも、和光と葵の別れ方はお世辞にも綺麗とは言えず、さらに葵は皆の目の前で和光をブロックし、縁を切ったのだ。

その後、長い間葵の話題が出るたびに、和光は苦々しい表情を浮かべていた。

二人が昔話に花を咲かせている間、私は隣の棚へ食材を選びに行った。

戻ってくると、ちょうど敦のこんな言葉が耳に入った。

「実はさ、昨日、小賀坂から君の連絡先を教えてほしいって頼まれて……」

帰り道、和光はスマホを握りしめたまま、ずっと心ここにあらずの様子だ。

三度続けて名前を呼んで、ようやく彼は我に返った。

スマホをしまい、優しく私の手を引いた。

「ごめん、悦子。今晩何を作ってあげようか考えてたら、ついぼーっとしちゃった」

私は答えず、身をかわして彼の手に触れられるのを避けた。そして、彼のスマホを指差した。

「小賀坂さんに友だち追加されたの、見えちゃった」

和光は一瞬たじろいだが、すぐに私の目の前で彼女をブロックした。

道すがら、彼はしつこく説明と謝罪を繰り返したが、私は一切取り合わなかった。

角を曲がった途端、耳元で続いていた喋り声がふっと消えた。

振り返ると、いつの間にか和光の姿が見えなくなっている。

込み上げてくる惨めさに、五年前に私が和光を好きになった時、周囲から言われた忠告が頭をよぎった。

「諦めて。二木が一生愛するのは、小賀坂ただ一人よ」

「あの二人は正真正銘の幼馴染なんだ。後から現れたあなたが、どうして取って代われるなんて思うわけ?」

「はっきり言うけど、たとえいつか二人が本当に別れたとしても、二木が小賀坂を忘れることはないよ」

考えれば考えるほど、悲しくなっていった。

今にも泣き出しそうになった時、近くのキッチンカーの店員に呼び止められた。

「今日は彼氏さんと一緒ではないのですか?」

見覚えのない店員に、私は戸惑いながら尋ねた。

「私のことをご存知ですか?」

店員は笑いながら言った。

「彼氏さんが写真を見せてくれたことがあります。

大学時代の彼は、毎日ここにコーヒーを買いに来ていました。彼女の大好物だと言っていました。冬の寒い日には、自分が火傷するのも構わず、ホットコーヒーを抱えて温めながら持ち帰っていたことを覚えています。

あんなに女の子に一途な男の子は、なかなかいないと思います」

私は立ち尽くし、どう返すべきか分からなくなった。

次の瞬間、嗅ぎ慣れた香りと共に上着が私を包み込んだ。

息を切らした和光の声が響いた。

「横断歩道で君を見失って……死ぬほど怖かった!」

顔を上げると、不安に満ちた彼の瞳と視線がぶつかった。

彼は私を家まで連れて帰り、お風呂を沸かしてくれた。

それから、私の好物であるさばの味噌煮を作ってくれた。

食事中、和光はやはり俯いてスマホを気にしていた。

口にするさばの味は砂を噛むようで、彼が葵に友だち追加されたことが頭の中でずっと離れない。

しかし次の瞬間、和光は興奮した様子でスマホを私の前に差し出した。

その瞳はキラキラと輝いている。

「悦子!君が見たいコンサートのチケットが当たった!先行抽選のためにシングルを何十枚も買った甲斐があった!

これで君が大好きなアイドルを間近で見られるんだ!」

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